#5 元どおりが正解とは限らない
朝日新書781『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』は、2020年夏に発行された本です。朝日新聞デジタル連載を書籍化したものになります。
どの識者からも、非常に意義深い投げかけが為されていて、読んで良かったと思える本だったので紹介したいです。そして私たちは今一度、この混乱の3年間を深く反省する必要があると思います。
だんだんとわかってきたのは、高齢者や基礎疾患のある人が重症化しやすいということ。対して比較的健康な人は、かかっても無症状が軽症で済むということ。
これはある意味、当たり前のことというか、COVID-19に限った話ではありません。
しかも、軽症者は結局、市販薬で治すしかないので、そういった意味では「コロナは風邪」というのもあながち全く的外れではないように私は感じます。
ただ一方で、感染力の強さは侮れないという意見もあるとは思うし、感染すれば一定期間の自宅待機が求められる以上は、やはり「コロナは風邪」とは言えないかと思いますが……。
それでも日本は「コロナ前」に戻るのにとても慎重です。政治の問題ももちろんあるでしょうが、国民ひとりひとりのレベルでも、必ずしも「コロナ前」をよしとしない何かがあるようにも思います。
それは、感染対策からは、もう異なる次元のもののように思われます。
たとえば、会社の飲み会や社員旅行がなくなったのは、むしろ歓迎する声も少なくないようです。
会社への出社日数も、減ってなお仕事ができるのであれば、ずっとテレワークの方がいいという声もあるでしょう。
人と会うことが暴力であった時代、会わなくても済む仕組みが生まれてきたことは、人と会うことが苦手だった人にとってはむしろ、好機になったとも言えそうです。
今ホットな話題、マスクについても、ただの感染対策以上のメリットを感じる人が多いからこそ、なかなか外す人が増えないのかな、と思います。
必ずしも全てを元通りにする方向が、正しいとは限らないようです。
私の職場でも、COVID-19が5類扱いになったらどうするかという議論の最中ですが、マスクに限らずどうも全てがまるっきりコロナ前と同じ、にはならなさそうです。
進むも戻るも、もはや進んでいるのか戻っているのかも、わからないくらい制度やルールは変わっていくなぁと感じます。
議論を尽くして合意を得る、というのは本当に骨が折れるけれど、それを避けるわけにもいかないですね。改めてそれだけ大きなインパクトのある出来事だったんだと、コロナ禍を振り返り思います。
(全5回の読書感想文となりました。ご拝読いただき、誠にありがとうございました)