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寝る寝る詐欺



40代前半の女性患者さん

なんとなく波長があって
よく話をしました。
病気のこと、彼氏のこと、アロマのこと、美容のこと
少しでも楽しめるうちに、楽しい時間を
笑顔になれる間は、笑顔の時間を
いつもそう思っています。

それでも病気は進行します。
初めの頃は変わりなかった容姿がどんどん変化してきたころ
「そろそろ私、長くないなと思うようになってきた」
と話始める。

体がしんどくなってきた
痛む頻度が増えてきた
ご飯を受け付けなくなってきた
夜眠れなくなってきた
と、患者さん

もう麻薬の量もかなり多い
レスキュー(痛い時に飲む即効性の麻薬)も効きが悪い
眠る時間を作っていかないといけない時期がきてるなと、思いました。

「これからどうやって過ごしたらいいの?痛いの楽にならないと怖い」


鎮痛薬でのコントロールには限界があります。
効果がなくなってくれば、
眠って過ごす=鎮静
を考えていかないといけない

若くて体力もある
病気の場所もよくない
きっと鎮静が必要になると、思いました。


「眠る薬を使って意識を落として、痛みを感じにくくする方法をとる方もいます。そうすると、今みたいに話せなくなる」

しばらく手を握って私と天井をみつめていた患者さん
天井を見上げて涙が目尻から流れてきている


「そうなんだね。話せなくなるのつらいけど、あなたがいたら寝てる私に話しかけてくれるね」


その翌日
もう限界の痛みの中、鎮静が始まった。



2日間、起きなくなるまでにかかりました。

浅い睡眠でぼんやりするように
そのレベルで始まった鎮静ではやり過ごせず
覚醒すれば、痛い、寝かせてと繰り返していたそうです。

休み明けで他のスタッフから「呼んでるよ」と言われて訪室しました。
声をかけたらうっすら目を覚まして

「へへ、寝れないみたいで、寝る寝る詐欺してるの」
と力なく笑う

「そのおかげでまた会えた。まだ寝たくないんだね私」としぼりだして話す患者さん

辛いの耐えてきたから、側にいるから、寝ていいですよと伝えると

「あなたに出会えてよかったの。これから私のようにがんで絶望してる患者さんの光になってほしい。伝えたかったの」

と、言って、弱々しく手を握ってくださいました。

必ず守ると約束をしました。


その翌日、眠るように亡くなられました。
綺麗な顔をしていました。

お母さんから
「あなたと美容の話をしていたから、自分で手入れできなくなったらお母さんしてねと言われました。きっとそのおかげで、こんなに綺麗な顔をしてるのね」



約束を守れているかな
私の人生で、忘れられない素敵な言葉をもらえた出会いでした。

#看取り
#本当の話
#ナース

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