大学入学共通テストの受験会場の地域別比較
2021年度、つまり初めての大学入学共通テストの志願者数が確定しました。志願者は、2020年度の大学入試センター試験より2万人余り減少し、53万5245人となりました。
「第2日程」受験会場はどこ?
今回の共通テストで、本試験の実施日程が2つに分かれることになったのは、このnoteを読んでいる人ならばご存知かと思います。
いわゆる「第1日程」:2021年1月16日(土)・17日(日)
いわゆる「第2日程」:2021年1月30日(土)・31日(日)
現役生かつ「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う学業の遅れを在学する学校長に認められた者」に限り、第1日程を回避して第2日程での受験が許可されています。志願者数の内訳をみると、第1日程を希望する受験生が53万4527人(99.9%)と圧倒的に多く、第2日程を希望する受験生は718人(0.1%)に留まりました。
現在、大学入試センターの公式サイトに「試験場一覧」が公開されていて、第1日程・第2日程の両方が載っています。第2日程は志願者がいる都道府県すべてに1つ以上は試験場(受験会場)が用意されてますが、志願者1名の試験場もあります。
「志願者1名のために、2日間学校貸し切るの!?」と憤りたくなる人もいるかもしれません。ですが、第2日程は第1日程の追試験も兼ねているのです。従来のセンター試験でも、病気やけがで本試験が受けられなかった人のために、本試験の1週間後に追試験(会場は全国2か所)が行われてきました。今回も、第1日程を病気やけがで受けられなくなる人が出てくることでしょう(おそらく例年以上に)。なので、第2日程の実際の受験者はもう少し多くなるはずです。また、結果的にセンター試験の時よりは追試験会場に行きやすくなることは、受験生にとって決してマイナスではありません。
ちなみに、第2日程の試験場の多くは、それぞれの地元の国公立大学に設定されています。おそらく、大学入試センターも頼みやすいのでしょう。逆に、国公立大学ではなく私立大学が担っている所(福岡県・佐賀県・宮崎県)は、何か事情があったのですかね?
なお、大学入試センターの「試験場一覧」では、第2日程受験希望者がいない県の試験場が記載されていません。具体的には、青森県・岩手県・秋田県・栃木県・石川県・鳥取県・島根県・山口県・徳島県・高知県。このまま第2日程の受験者がいなければ、当然試験は行われないでしょう。
ただ、「受験上の注意」のpdfの16ページに、「追試験の会場は,全都道府県に設定します」とあるので、仮に現時点で試験場が記載されていない県の受験者が、不幸にも第1日程が受けられなくなり、追試験としての第2日程を受けることになっても、県内に新たな試験場が設定されるべきです(設定されると思いたいですが、そうでなかったときの責任は取れません、すみません)。
「第1日程」受験会場の悲喜こもごも
共通テストの第1日程の試験場(受験会場)は、センター試験でもそうだったように、日本全国津々浦々に設置されています。大学入試センターが公開している『令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項』によれば、原則として、現役生は在籍校と同じ都道府県内、浪人生は住所と同じ都道府県内の試験場が指定されます。
前提として、共通テストは大学入学のための試験ですから、共通テストの成績を活用する大学がそれぞれ、試験場や試験監督者を提供することになっています。裏を返せば、共通テストを利用しない大学(慶應義塾大学など)は、共通テストの会場になりません。
多くの場合、各大学は自大学を試験場として提供するのですが、高校や予備校の校舎を借りて提供する大学もあります。中には、自大学のキャンパスに加えて、遠隔地の高校を試験場と設定する大学もあります。具体例を挙げてみましょう。
岩手大学(盛岡市):釜石高校(釜石市)を試験場に設定
秋田県立大学(秋田市):横手高校(横手市)を試験場に設定
新潟大学(新潟市):佐渡高校(佐渡市)を試験場に設定
岐阜大学(岐阜市):斐太高校(高山市)を試験場に設定
島根大学(松江市・出雲市):隠岐高校(隠岐の島町)を試験場に設定
長崎大学(長崎市):五島高校(五島市)、壱岐高校(壱岐市)を試験場に設定
鹿児島大学(鹿児島市):大島高校(奄美市)を試験場に設定
琉球大学(西原町):宮古高校(宮古島市)、八重山高校(石垣市)を試験場に設定
いずれも、その試験場がなければ前日入りが必至になる地域ばかりですね。しかも、それぞれの試験場の受験者は、ほぼそこの高校出身の生徒で占められる(∵地域に進学校or普通科高校がそこしかない)から、校内実力テストのような安心感が味わえます。
一方、こうした試験場に恵まれない地域もあります。
北海道:室蘭、帯広、稚内をおさえているあたり(それぞれ大学がある)、かなり頑張っている感ありますが、根室には無し。一番近い釧路まで電車で2時間半かかるので、前日入りはマストでしょうね。
東京都:島しょ部には試験場はありません。小笠原諸島の話は有名ですね。
「センター試験を受けるために24泊25日」問題は、若干改善されているようです。それでも、9泊10日ですが……。
三重県&和歌山県:三重県は南北に長い県ですが、最南端の試験場が伊勢市なので、東紀州(尾鷲市や熊野市)あたりが空白地帯になっています。また、和歌山県の試験場が、和歌山市と紀の川市にしかなく、紀南地方が置いてきぼりです。東紀州と紀南地方の間を取って、近畿大学附属新宮高校あたりを試験場にしてはいかがでしょうか?
愛媛県:試験場が松山市にしかありません。今治市あたりからならともかく、新居浜市や宇和島市あたりから受けに行くのキツくないですか?
高知県:試験場が高知市近郊に集中しています。東部からは、香美市にある高知工科大学試験場にどうにかという感じですが、西部からは、宿泊受験確定です。もっとも、意識の高い西部生まれは、中学or高校進学時点で高知市まで越してきてしまうのがトレンドですが……。
熊本県:試験場が熊本市にしかありません。南部には大学がないのでまだしも、北部の玉名市には、センター試験を利用する大学があるはずなのですが……。県民は容易に熊本市まで来られるという意思表明でしょうか。であれば、なぜ高校の学区は撤廃されないのでしょうかね?
会場に着くまでも試験です
受験会場の配置について思うところはありますが、色々な大人が頑張った結果が現状なので、あまりうるさいことは言わないでおきます。
それはさておき。大学受験というのは「学力だけが問われる」なんて思われがちですが、個人的には、全然そんなことないと思っています。具体的には、朝から晩まで試験を受け続ける体力とか、初めての試験会場に動じずにたどり着ける余裕を持った精神力とかも試されているはずです。だからこそ、その結果として得られる学歴が、単なる学力の証明に留まらない何かとして世間に受け止められているのだと思います。
大学受験において、当日に実力が100%発揮できるとは思わない方がよいです。平均して80%くらい発揮できたら御の字で、そこから±20%くらいは学力以外の要素で変動する。そういうつもりで、受験までの残された時間を過ごすのがよいのではないでしょうか。
受験生の皆さん、頑張って!
最後まで読んでいただきありがとうございます。もしサポートいただければ、記事執筆に伴う文献調査や現地取材のためにありがたく使わせていただきます。 もちろん、スキ♡やシェア、コメントも大歓迎です!