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UIデザインの授業で学生たちに何を教えるべきかについて

前回も専門学校での私の授業の仕方について書きましたが、数年前からiPhoneアプリをデザインするということを通じてUIデザインとは何かを知る授業を行っています。

UIデザインを数ヶ月で学んで社会に出るということはかなり時間が足りない為、昨年からは通年でiOS, マテリアルデザインの触りを学ぶということを始めました。

4,5年前に比べてネイティブアプリの案件が減っていると感じる中、この授業を続けていいのだろうか?就職のことも考えると、レスポンシブWebや、Webのレイアウトを学んだ方が学生たちには有意義なのではないか?といつも悩んでいました。

学生たちの特性は2年周期程度で変化する

40歳の時から商業高校や専門学校で講師の仕事をするようになりましたので、今年でちょうど講師業歴10年になります。

講師を始めた頃の生徒たちは、とにかくパソコンのキーボード入力が得意でブラインドタッチはほぼ全員出来ますし、長文を入力するような場面では教室中に「シャーッッッ」と40人くらいが一斉にすごいスピードでキーボードを叩いている事がわかる音が鳴り響きます。

それが2年ほど経った頃から次第に「シャ、シャ、シャ」に変わってゆきました。遅くなったのです。

ちょうどスマートフォンが普及し始めて、半数の生徒はスマートフォンを使うようになっていたからです。

それ以前、何が生徒たちのキーボード入力をそんなに上達させていたのかというと、Skypeです。
友達との日々のコミュニケーションに、自宅のパソコンを使って文字を入力し、チャットをたくさん利用していたのです。

スマートフォンが普及してLINEを使うようになり、突然パソコンを使わなくなったのです。本当に突然です。
クラスのほぼ全員がスマートフォンを使うようになった年から、パソコンの使い方を教えないと授業にならないという状況に一変したほどです。

その後、3,4 年ほど前までは可愛らしいキャラクターのゲームアプリを作りたがる傾向がとても強かったのですが、ここ2,3年は、競合アプリを調べたりして、GPSやARなどテクノロジーを活用したようなサービスのアイデアを形にしてゆく傾向が強まって来ました。

キーボード入力の代わりに学生たちが体得していたもの

「それはフリック入力です。」というような単純な話ではありません。

それまでの、グラフィックスの出来栄えに対する相談や質問が中心だった授業から、課題を解決するための考え方や方法についての相談や質問がぐっと増えた授業に変わってきました。

また、「東京に出てきて大きな駅で迷子になって困ったから、ARで案内してくれる3D地図案内アプリを作りたい」や、
「家族が突然病気で倒れ、とても困ったのでこのアプリさえあればどう対処すればいいかがわかるという物を作ってみんなに役立ててもらいたい」
「旅行の足跡を自動的に記録してくれるアプリが欲しい。自分で入力するのめんどくさい」(※かつてGoogle Tripsのようなもの)
といったような、具体的な経験に基づく動機とそれをなんとかしようと考える学生たちが年々増えてきたという実感もあります。

これは、友達とコミュニケーションしたいからその時だけ親のパソコンを借りて文字を入力するという状態から、
常にスマートフォンを持ち歩いて様々な場面で利用している、という背景による変化ですよね。

この変化はすごく大きいと思っています。

未来にも活かしていける考え方を学ぶ機会が必要

進化や移り変わりのスピードがとても速い業界で、長く役立つ力ってなんだろう?と考えたときに、注目度の高いデザインツールの高度な使い方だとか、2年くらいで刷新してゆく授業内容だとか色々考えたのですが、答えがなかなか出ませんでした。

逆に、変わらなかったものってなんだろう?と考えてみたら、すっと決まりました。
概念や成り立ち、人間への理解だなと思いまして、結局これまでやってきたUIデザインの講座の一部をその時の学生たちの苦手なことや得意なことに合わせて少しずつ変化させるとしても、大筋は変えないことに決めました。

ツールはこれからも新しいものが登場したり、ニーズに合わせて変わって行ったりしますから、ツールの職人を目指しても長く活かせる可能性は低いですし、トレンドを追いかけても社会に出る頃には変わってしまっているかもしれませんものね。

考え方、思考、をしっかり身につけていれば、デザインするものが移り変わって行ってもそれほど戸惑うことはないだろうと思いまして。

求人内容も変わってきているのかどうか

さて、彼らの卒業後の進路についてですが、学校に来る求人内容も変わってきているのかを見てみると、確かに少し変化はあるようです。
数年前まではなかった「UIデザイナー」の求人が年々増えているようです。

ところで、一般向けのデザイナー求人の情報ってどうなっているのだろう?と検索してみました。

何でもかんでも「UI/UXデザイナー」と書かれていてこんなにUI/UXデザイナーが足りないのか!!と思ってしまうのですが、
ひとつひとつ詳しく見ていくと、商品のWebやバナーのデザインだったり、反対にリサーチからデザイン、イラスト、プログラミングの知識が必要で、インタラクションや動的演出のデザイン、パンフレットから動画まで何でも作れないといけないのかと思えるような物まで、かなりの幅がありました。

おそらく、情報や言葉が溢れかえりすぎていて、カオスな状態が現在なのでしょうね。それだけデザイナーの仕事内容や求められる範囲が多岐に渡っているということだと思いますので、「UI/UXデザイナー」と一括りにするのではなくて的確に表せる効率の良い方法が見つかるといいなと思いました。

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