見出し画像

身内の医療相談にはこんなふうに答えてるよ、の一事例

なんだか論文のタイトルみたいになってしまった。

ま、いっか。

看護師という仕事をしていると、身内や友人からいろんな相談をされます。

できる範囲で答えているんですが、今回、めちゃくちゃいいケースがあったので紹介させてください。


というのも、私の祖母が乳がんになったんです。
これに関しての心配はご無用。

彼女はこれまでにも、脳梗塞、高血圧、認知症、酔っ払って転倒からの大腿骨頸部骨折、糖尿病、心不全

と、病気の経験値高めな人生を送っているので、わたしたち家族もまたかという認識。

10年前からいつ死んでも悔いがないように毎年会いに行ってるんですが、いっこうにお呼びがかからなくてね。

きっと、天国の税関も激混みなんでしょう。

今回は、その前(!)の話。
以前、わたし外科病棟にいたんです。
しかも乳腺外科もみる病棟に。
だから、乳がんのケアは十八番なんですね。

そんな私に、乳がんと聞いてあわてふためく叔父(母の兄)から怒涛のLINEがきました。

こういっては失礼もかもしれませんが、がんと聞かされた家族の典型的な言動パターンをとってくれたんですね。

そこで、個人情報は伏せつつ、どんな風にわたしが対応とケアをしたのかをシェアしてみます。

あくまでも、わたしの家族の一事例です。
お忘れなきよう。


===

叔父さんへ。

お母さんから、おばあちゃんが乳がんだと聞きました。
LINEでシェアされた質問内容に看護師の立場で解答しています。

残念ながら、叔父さんの欲しい言葉だけではありません。
一部、厳しい言葉があるかもしれないけれど、許してください。


相談その1:がんが進んだ場合、痛みってどの程度のものなの?

A:がんに対する痛みには、段階があるのでそれに応じて薬のグレードを上げていきます。最終段階では、医療用麻薬を使うことが多いです。


麻薬と聞くとびっくりするかもしれないけれど、がん患者さんに使用する場合は、いわゆるテレビや新聞の報道にあるような頭がおかしくなるような症状は出現しにくく、むしろがんの疼痛緩和に有効だと言われています。

それほどまでに、がんによる痛みは苦痛が強く、緩和が難しいものであることの裏返しでもあります。

もちろん、いきなり医療用麻薬を使うことは珍しく、通常の痛み止めを内服しつつ徐々に導入・増量していくことが多いです。

ただ、がんの痛みの感じ方や薬の効き方には個人差があります。

薬を使うことでまったく痛くない人もいれば、痛みで眠れない人もいます。
こういう人には、睡眠導入剤や精神安定剤を併用することもあります。

症状が進行し、内服が難しくなった場合には貼り薬や座薬もあるし、点滴で投与することも可能です。


相談その2:84歳でも手術はした方がいいの

A:今は100歳でも手術する時代だからアリだと思うよ!

なので、担当の先生が手術しましょう!と言ってくれたのなら、手術も選択肢のひとつという認識で良いと思います。

ただ、手術によるリスクもあります。

手術に際しては医療用麻薬を使うし、人工呼吸器で呼吸を管理するので肺炎のリスクがあったり、手術のあいだ寝たきりになるので血栓ができる可能性もあります。

術後は、体力が落ちて寝たきりに近い状態になったり、昼夜逆転して認知症症状が進んだりすることだってあります。

これは、もう手術をしてみないとわからないことなので、あくまで可能性だと思ってもらえるといいかな。


相談その3:実際、どれくらい手術が行われているの?

A:かなりの人が手術しているという感覚かな。

基本的に診察って、診療ガイドラインという手引書みたいなものがあって、それに準じてやってます。

手術適応の人は、手術したほうがいいというのが医療従事者の認識。
私も手術できるなら、したほうがいいんじゃないかな~と思います。

手術の痛みは一瞬だけど、手術しないでがんを温存した場合、痛みがどんどん増悪していくことだってあります。

痛みのなにがつらいって、本人が痛いのはもちろん、苦しんでいる姿を見る周りの人たちがつらい。

おじさんはメンタルが強いタイプじゃないと思うので、傍でおばあちゃんが苦しんでいる姿なんて見てられないかもしれないから、そういう意味でも手術という選択肢はアリだと思うよ。


相談その4:寿命との兼ね合いで積極的な治療を見合わせたりするの?

A:見合わせることもあります。

けれど、外科医の視点でいえば全身麻酔に耐えられなさそうな場合のみかな。

原則は、抗がん剤や放射線療法含め、積極的な治療を進めるのがスタンダード。
手術をする時って、心臓と肺の機能、そして腎臓の数値あたりを見るのだけれど、明らかにこれらが悪い人には手術は勧めない。

だから、よっぽどじゃない限り手術することが多いかな。
あとは、抗がん剤は放射線療法もあるので、ケースバイケースって感じです。


いずれにせよ、先生から話を聞いて

おばあちゃんが自分で決めて
納得できる選択がベター
だと思います。

おばあちゃんの身体はおばあちゃんのものだし、おばあちゃんの人生なので。

私たちは家族だけど
おばあちゃん本人じゃないしね。


===

ここまで。

どこかの誰かの参考になったら。

貴重な時間を使い、最後まで記事を読んでくださりどうもありがとうございます。頂いたサポートは書籍の購入や食材など勉強代として使わせていただきます。もっとnoteを楽しんでいきます!!