読んだら忘れない、デリケートゾーンにまつわるケアの話
看護師の仕事って3Kじゃん?
3Kとは、キツい・汚い・危険をあらわす頭文字。
その昔、人のお世話をする仕事をこういう風に呼ぶ時代がありました。中でも一般の人が最も嫌悪感を示すのが、汚いではないでしょうか?
特に、不潔なのが排泄物。
尿、精液、便…たとえ自分のものであっても素手で触るのは嫌ですよね。
消化器病棟に6年いたわたしでも、いまだ慣れません。
なんとかして、人に知られないように、見えないように処理するもの。
だからこそ、悩みを抱えたまま長年経過してしまっている人もいます。
人には絶対話せない、話さない
これは日本人に限定した話ではありませんが、そういう悩みや問題に関しては人に言わない、相談しないという人が圧倒的に多いんです。
デリケートゾーンに関するコンテンツはWeb上に溢れています。ということは、トラブルを抱えている人や困っている人が一定数いる証。
なのに、リアルなコミュニケーションの場においては、よほどのことがない限りそういう話にはなりませんよね。臭いものには蓋をする文化、が根強いのかもしれません。
失禁する
粗相する
漏らす
我慢できない
汚してしまう
みっともない
排泄に関するトラブルや失敗は、プライドや人としての尊厳をものすごく下げます。
ましてや、人に知られるとプライドや自尊心がさらに傷つく可能性もあります。
まーた粗相して!
あ〜ぁ、またやっちゃったの?
汚すならちゃんと最後まで汚して!
パッドがもったいないじゃない…
ねぇ、誰がきれいにすると思ってるの?
これら、わたしが実際に聞いたことのある介護者のセリフです。
子育てと介護の大きな違いは、成長の有無。
子育ては、成長発達の楽しみがありますが
介護はいかに今の状況をキープするか、が鍵となります。
寝たきりのおじいさんが日々の介護でスタスタ歩けるように…なんていうのは、ちょっとファンタジーが過ぎるかも。
劇的に改善したり元気になったり、というのはなかなか厳しいのが現実です。
そういう毎日の中での、排泄周りの介護。
先が見えない不安
何度言っても繰り返すことへのイライラ。
同じ援助者として介護者の気持ちも痛いほどわかりますが、こういう言葉を毎日のように投げかけられたら
患者さん、自分の尊厳を守る元気なんてなくなっちゃいますよね。
だから、できる限り隠し続けます。
自分で、自分を、守るために。
排泄物と皮膚は犬猿の仲
失禁するというだけでもメンタルがやられるのに、付着してしまった排泄物でフィジカル、皮膚もやられてしまうことがあります。
なぜなら、素肌は弱酸性
排泄物は、中性〜アルカリ性
双方が接近すると、バトルが始まってしまうんです。
わかりにくい方は、あかちゃんのおむつかぶれを思い出してください。
デリケートゾーンってくちびると同じで、皮膚と粘膜の境界にあたります。口腔内ではよだれが味方であっても、それがくちびるの周りや頬につくと、なんだかむずむずと痒くなってきますよね、あんな感じ。
尿は、排泄したてはほぼ中性ですが、雑菌により分解が進むとアルカリ性に傾きやすくなります。便もゆるくなるほど、尿を超えるレベルのアルカリ性へ。
本来、大腸では水とナトリウムが再吸収され便が固形化するはずなんですが、なんらかのトラブルによってこれがうまく機能しなくなると、水とナトリウム過多のゆるい便、つまりアルカリ性の強い便が排出されるというわけ。
失禁がもたらすデメリット、結構つらいものがありますよね。
そして、中にはこんな人もいます。
ちょっと想像がつかないかもしれませんが、陸に打ち上げられたフグのごとく膀胱や膣、直腸が飛び出てしまっている人や、それが下着や皮膚にこすれて出血してしまってる人もいたりします。
この臓器が飛び出してしまった状態を脱(だつ)と言います。
脱腸(だっちょう)なら聞いたことあるって人もいるかもしれませんね。
これら、難しい言葉で言うとそれぞれ子宮脱や膀胱脱、直腸脱なんていうこともあります。
NHKの特集ではまとめて、骨盤臓器脱という言い方をしていました。
想像できない人が多いでしょうが、膀胱と子宮、どちらも飛び出してしまっている人もいました。
この患者さんは
すいません…すいません…
お見苦しいでしょう…
汚いものを見せてしまって
ほんとすみません…
処置のあいだずっと謝っていて、なんともいえない気持ちになったのを覚えています。
こういう状態になっていても
みなさん隠そうとするし
ましてや、医療機関を受診をしないんです。
「老いていく」ということ
ここで加齢に伴う変化に触れておきましょう。
若い人にデリケートゾーンのトラブルが少ないのは当たり前。
加齢は、程度こそあれ、みなに平等に降りかかる身体の変化です。
知っておいて損はないはず。
※あくまでも、生物学的な身体の話です。
〜女性編〜
更年期(いろんな定義がありますが、ここでは45〜55歳くらい)に入ると、卵巣の機能が低下し始め、そのうち消失し、閉経を迎えます。
閉経とは、月経がなくなる状態のこと。
排卵の機能が消失するので妊娠できない身体になる、ということです。
これで生理とおさらば〜!
と思いきや、そう簡単にはいきません。
閉経に伴い、いままで月経を司っていたホルモン類の分泌量が変わります。
まったくたとえになっていないかもしれないんですが、関東から関西に引っ越すくらいのインパクト。
え?うどんつゆってこんなに薄いの?
梅田駅、ありすぎじゃね?同時多発梅田…?
明石焼ってなに?そもそも明石ってどこ??
みたいな。
同じ暮らしのはずなのに、土地が変わるだけでその仕様は大きく変わります。
それでも、わたしたちは暮らしていかないといけない。
その慣れにかかる時間、揺れる心、かかるストレスのようなものと似てるかもしれません。
女性ホルモンに話を戻すと、今まで高かったものは低く、低かったものは高くなるため身体にさまざまな影響を及ぼします。
いわゆる、更年期障害というやつです。
ホットフラッシュに代表されるような自律神経失調症状、怒りっぽくなったり眠れなくなったりする精神神経症状、疲れやすいなどその他の症状、様々な方面から症状が出現します。
さらに、歳を重ねていくと使う頻度が少なくなった性器はどんどん萎縮し、エストロゲンと呼ばれるホルモンが低下した体内では骨粗鬆症が進行しやすくなります。
高齢になればなるほど骨折しやすくなるのは、おっちょこちょいだからとか、反射神経が鈍くなっているという理由の他に、女性の場合特にそうですが、骨側の要因もあるのです。
加齢とは話がずれるのですが、一点だけ補足を。
解剖学的に、女性のほうが尿路感染症を引き起こしやすいと言われています。それは、尿道口(おしっこの出口)・膣・肛門が近くほぼ一直線上にあるから。さらに、尿道口と膀胱のあいだは5cmほどしかありません。
もう、ダッシュしたら3分で乗れる新幹線みたいな感覚ですね。
一方、男性は尿道口と肛門が物理的に離れていますし、尿道口と膀胱の距離も20cm近くあります。
こっちは、大きな荷物は預けて手荷物検査をしないといけない飛行機のよう。道のりが長い。
そうそう、膀胱炎や腎盂腎炎の原因菌はほとんどが大腸菌、そう便の中にいる菌たち。
すごく疲れていたり、ストレスなどで粘膜付近に生息している常在菌のバランスが乱れていたり。生理中などで陰部が過度に湿っていたり、なにかの調子で拭き方がイマイチだったりすると
肛門付近に残っていた大腸菌が粘膜をつたって尿道口に辿り着き、より居心地のいい膀胱へ向かって逆行していってしまう、というわけ。
女性のデリケートゾーンは、解剖学的に感染ハイリスクなんです。
〜男性編〜
Googleで検索すると、いつまでSEXできるのか?みたいな記事ばっかりでてきてほんとやんなっちゃう…
尿道カテーテルを挿入するために、それに触っていると90代のおじいさんでもお元気になってしまう人もいれば、お若くても…こう…どこにあるのかわからなくて探さなきゃいけないような人もいます。
実際に臨床でいろんな患者さんのそれをみていますが、本当に本当に個人差があるものです。ね、わかった?
機能や大きさ、維持できる時間や質には個人差があるものなので、気になる方はスッポン系サプリとか飲む前に泌尿器科を受診なさったらよいと思います。
さて、加齢に伴う変化ですが、案外女性と変わりありません。
使っていない機能は低下していきますし、いわゆる男性っぽさを司るホルモン、テストステロンも分泌量が低下していきます。
具体的には、毛髪が薄くなったり、性欲が減退したり、筋肉量が落ちたり、などといった変化がおこると言われています。
ここでは、前立腺肥大症にふれておきましょう。
女性の皆さんには馴染みがないかもしれませんが、前立腺とは男性にのみある付属生殖器のひとつ。
場所は膀胱の下、大きさやかたちは栗そのもので、重さは大さじ1杯強ってところ。精液の一部である前立腺液を分泌するはたらきがあります。
前立腺の中を尿道が貫通しているので、膀胱は無事なのに前立腺にトラブルが起こると排尿のあれこれにも大きく影響してきます。
そのメジャーなものが前立腺肥大症
文字通り、前立腺が肥大してしまう病気です。
たとえ診断を受けていなくても細胞レベルでみると、定年を迎えるあたりで約半数、80歳台では約90%の人が肥大していると言われています。
そう、これは加齢によって引き起こされる病気。
前立腺が肥大することにより、中を貫通している尿道や上にある膀胱が刺激・圧迫されるため、頻尿や尿意切迫感が出現します。
進行すると、残尿感や排尿困難、膀胱内に尿がめちゃめちゃ溜まっているのに排泄できないという尿閉状態になってしまう場合もあります。
・出したいのに出ない
・出したくないのに出ちゃう
・もっと出るはずなのに出ない
・なんとなくすっきりしない
・ちょろちょろ出る
・間に合わない
主観で言葉にするとこんな感じ。
高齢男性の患者さんであれば、ほぼみんな一度は口にしたことのあるセリフのはずです。
基本的に内服での治療がスタンダードですが、重症例には手術が適応となります。
出産の凄み
今度は、女性特有のイベントである出産の影響にもふれておきましょう。
子宮は、糸のような組織に引っ張られ、靭帯や筋肉によってハンモック状に支えられてやや前のめりになりながら毎日を過ごしています。
場所は、膀胱と直腸のちょうどあいだ。
臨月を迎えた妊婦さんが頻尿になったり便秘になったりするのも納得ですよね。膨れに膨れた子宮と胎児のせいで膀胱も直腸も圧迫されまくり。もちろん、肺や胃など他の臓器もいつもの場所から追いやられます。
この子宮、妊娠していないときは鶏卵くらいの大きさですが、臨月には直径約50cmほどにまで膨れあがります。
あっぱれ、子宮の伸縮性
当然、いつも引っ張ってくれていた組織、靭帯、筋肉にも多大なる影響を及ぼします。
要は、思いっきり引っ張られてしまうんですね。
分娩が終わると元に戻るはずなんですが、ゴムを思い出してください。
思いっきり引っ張られたゴム、完全に元のように戻るでしょうか?
ちょっとたわむ感じや伸びる感じが残る人もいるでしょう。
そんな中、第二子、第三子を出産すると…
いろいろゆるむ、そのワケは?
ここまできたら、歳を取るにつれ失禁してしまう人が増える理由、おわかりいただけたはず。
加齢に伴うホルモンバランスや身体機能の低下、女性の場合は出産による影響、男性の場合はその長い尿道や前立腺というものが障壁となってしまうこともあります。
これらが、失禁を誘発する正体。
加えて、ここに認知力の低下もいれさせてください。
認知症が、排泄とどう関係するの?
と、思われるかもしれませんが、トイレにいって排泄するという一連の行為には、実にさまざまな認知機能が必要とされるんです。
尿意・便意を感じる
↓
トイレや便器が認識できる
↓
トイレまで移動する
↓
下着を下ろす
↓
便座にじょうずに座る
↓
排泄する
↓
後始末をする
↓
衣服を着ける
↓
手を洗う
↓
部屋に戻る
排泄ケアガイドブック p.31図1より引用
トイレをするというプロセスを分解すると、こうなります。
普段は当たり前のようにできることであっても、病気や障害、そして加齢に伴うさまざまなやりづらさが加わると、トイレという行為が本当に億劫な、難しいアクティビティに変わってしまうんです。
そして、このうちひとつでも認知ができなくなれば、ひとりで汚さずに排泄する行為そのものが厳しくなります。
たとえ、排泄のプロセスに問題がなくても、もといた部屋がわからないというだけで、そのまま家を出て徘徊してしまう人だっています。
加えて、極端な例になるかもしれませんが、排泄物を手で掴んで壁に投げたり、口元にもってきたり、おむつのポリマーを爪でむしって食べようとするような患者さんも臨床や在宅、みなさんの視界に入らない世界には、います。
ちなみに、ポリマーは水分を吸収するはたらきがあるため、口の中にいれるとどんどん膨れて、最悪の場合には窒息してしまうんですね。
認知機能が低下する、その怖さはこういうところに表れるのです。
じゃあ、どうしたらいいの?
失禁は加齢やホルモンバランスに伴う変化と言いましたが、安心してください。
戦う手段は、あります。
まずは、内服が基本。
尿失禁も便失禁もそう。
わたしは診断する立場ではないため具体的な薬剤名への言及は避けますが、患者さんへの侵襲が少なく、程度こそあれ一定の効果が見込めるという点ではどの医療機関においてもこれが第一選択だと思います。
ちなみに、尿失禁はおおきく4つに分類されます。
・腹圧性尿失禁
・切迫性尿失禁
・溢流性尿失禁
・反射性尿失禁
他にも、過活動膀胱や神経因性膀胱など排尿に関する診断はさまざま。
それぞれ原因も違えば対策も異なりますので、困っている方がいたら恥ずかしい気持ちもわかりますが、まずは受診を。
次に、手術。
内服やその他の治療でも効果が乏しければ手術という選択肢が出てきます。
手術の内容は、さきに述べた膀胱や子宮を支える組織、筋肉をサポートするようなテープを挿入するというもの。イメージが難しい場合には、ヘルニアの手術のときにメッシュをいれるような感覚といえば伝わるでしょうか。
やさしく、支えてくれるんです。
身体に人工物を入れるのって、どうなの…?
という人もいるかもしれませんが
・大動脈解離の手術のときに使う人工血管
・股関節置換術に使う人工股関節
・高カロリー輸液や抗がん剤を投与するときに使用するCVポート
これら、すべて人工物です。
ほぼ永久的に使用することが多いもの。
そこまでナーバスにならなくてもいいのでは?というのが、わたしの意見です。
最後に、骨盤底筋訓練の話をさせてください。
おそらく、みなさんにとってこれが1番取っ付きやすいケア。内服と同じように診断初期から勧められる方法でもあるので、知っておいて損はないはずです。
骨盤底筋訓練とは、骨盤底筋を訓練、要は筋トレです。
膀胱・子宮・直腸あたりをハンモック上に支えている筋肉たちを鍛えて、失禁や骨盤臓器脱の改善を狙うもの。
難しい用語を出すと読む気が失せると思うので最低限に留めますが、肛門直腸閉鎖の要となる恥骨直腸筋、尿道の閉鎖と解放の役割を担う恥骨尾骨筋、このあたりを鍛えると強くなれそうな気がしますよね…!キュッ
正しくは他にもいろんな筋肉を総称して骨盤底筋群と呼ぶので、上記の2つの筋肉だけではありません。そこだけご注意を。
そうそう、フランスでは産褥期の女性に対してこの訓練を行うそうです。
しかも保険適応内で。
・早く子宮を元に戻すため
・産後の尿失禁や便失禁を防ぐ、または改善するため
文化的にも早く女性としての女性性を取り戻したい人も一定数いそうなので、そういう意味でも普及しているのでしょうね。
ただ、みんなに劇的に効果のあるものとは言えません。その効果を20%~80%と示している文献もあります。
内服と骨盤底筋訓練の併用が、患者さんにとっては最も負担が少ないのかもしれません。
推奨されるデリケートゾーンのケアとは?
ところでみなさん、あのあたりの正しい洗い方ってご存知でしょうか。
ちゃんと習ったことあるって人、手を挙げてみてくださ~い!
う〜ん…
実は、親の洗い方を覗き見してなんとなく洗っている人がほとんど。
それが間違っているとは言えませんが、看護師が実践している洗い方もぜひごらんください。
女性版
男性版
ここでそれぞれポイントを付け加えていきます。
〜女性編〜
しっかり露出させる
年を重ねるにつれ、肌にはシワが入り、皮膚も垂れてきますよね。これはデリケートゾーンも同じこと
ただでさえ複雑なシワや窪みが生じやすいつくりになっていることに加えて、加齢によってさらにシワが深くなり皮膚が垂れてきます。
シャワーでシャーって簡単に洗い流すのではなく、利き手とは反対の指でしっかり広げて、しわやくぼみの奥の奥までしっかりすすぐことを心がけましょう。
おりものを取り除こう
膣から分泌されるおりもの。これが尿道口の周りやその周りのぴろぴろした部分にくっついているとよろしくありません。シャワーの水圧でも落ちない場合は、指の腹などを使ってやさしく取り除いていきましょう。
泡で洗う
陰部はくちびると一緒で皮膚と粘膜の境界となる部分。スポンジでゴシゴシ洗ってしまうと粘膜が傷つき、場合によっては出血してしまいます。スポンジやビニル袋で泡立てた泡でなぞるように洗ってあげてください。泡の弾力と指の動きによって、十分に汚れは落ちます。
シャワーの水圧をうまく使う
ほとんどのおうちにシャワーがあると思ってお話しますが、このシャワーの水圧を使っておりものの汚れやその他の汚れを流しましょう。水圧が強いとうっ…!ってなることもあるので、そこら辺の加減は各々で。
流れるようにすすぐ
皮膚トラブルがある場合、シャワーを直接あてると痛いことがあります。そういう時は、おなかや太もも側からシャワーをあて、その部分に水を這わすようにあてて流しましょう。あの、ちょっといいレストランやホテルにある壁を水が流れるオブジェみたいなあれ。
実際、褥瘡など深度の高い創を洗うときは、患部への刺激を最小限にするためにこういう方法で洗うことが多いです。
よく乾かす
これ、結構忘れられがちなんですが、とても大切です。お皿も洗濯物も髪の毛もしっかり乾かすのが普通なのに、なぜあそこに関してはいかに早く隠すかみたいな価値観になってるの、本当に謎です。タオルで拭いてよく乾かしましょう。
〜男性編〜
基本的に女性と一緒なんですが、性差があるものなのでそこだけ補足を。
ちゃんと剥いて
さきっぽだけ洗えばよくね?みたいな人がいたら、わたしがやさしく洗ってあげるから早く横になりなさいって気持ちになっちゃいますね…
女性と同様、皮膚のシワやくぼみに汚れがたまるので、しっかり露出させて洗ってほしいものです。
包茎などで無理にやると痛いという人は、シャワーの水圧を使ってでも洗って欲しい。
なぜなら、男性は圧倒的に包皮の内側に汚れが溜まるから。
その昔、尿路感染症で入院してきたおじいさんのそれを露出させたとき、包皮周りにヘドロみたいなのがたくさんくっついていて、さすがのわたしも心の中で言葉を失ったことがあります(顔は笑顔)
挿入しようとしてた尿道カテーテルを置き、大量の泡で洗ってすっきりキレイにしてからカテーテルを留置、すぐに解熱していったことを覚えています。
それくらい、湿った皮膚のたるみというのは、細菌やウィルスからしたらパラダイスになってしまうということ。
このあたり、性差に関係なくうまくケアしていける人が増えていって欲しいです、本当に。
デリケートゾーンのQOL、めちゃ大事だから
人間的な尊厳の話は別として、栄養を補うのって実は簡単です。
点滴、中心静脈栄養、栄養補助食品、きざみ食やミキサー食などの介護食、胃瘻からの栄養剤投与など、ある程度パターン化していますし、看護や介護が必要な人にとって、栄養を摂取するというのは介護者主体の行為。
こちらがやめない限り、一定の質を保ってケアを提供し続けることができます。
けれども、排泄は違います。
介護者は、どんなに頑張っても排泄物を代わりに出すことも、ひっぱってきてあげることもできません。
セルフコントロールができなくなっても、なんとか頑張って排泄物を生成し、身体の外に出してもらうしかないんです。
だったら
できるだけ自分が心地よいと思う方法でケアしたいし、されたいですよね。
本来、排泄は人間の三大欲求のひとつ、気持ちがいいもののはずなんですから。
いまトラブルがない人も、トラブルの真っ只中にある人も、なにかあったら医療機関への受診を、そして相談をしてみてください。
身内だと関係性が近すぎて、嫌な思いをする人もいるからです。それが同性の家族やパートナーであっても。
トラブルの場所や状態にもよりますが、産婦人科、泌尿器科、皮膚科…
まずはプロに相談してみて欲しいです。
あとは、ご存知ない人が多いかもしれませんが、WOC認定看護師、そしてWOC外来というのもあります。
WOCでウォックと読みます。
褥瘡をはじめ、ストマ管理や失禁、それに付随する皮膚トラブルへのプロです。認定看護師と呼ばれるもののひとつ。
わたしも消化器病棟につとめていた頃、大変お世話になりました。
便失禁を繰り返すおばあちゃん、皮膚がデロデロだったのに根気よくケアを続けたら完治したことがありました。
もう治らないと思ってた
ずっと垂れ流しで生きていくんだと…
ありがとう…本当にありがとう…
と言ってくれたときの嬉しさったら、もう。
WOCさん、知識も技術もさることながら、バイタリティと人間性が本当にすごい。
大きな声では言えないのですが、認定看護師の皆さんって資格を取ったからといって劇的にお給料が跳ね上がるワケではないそう。
それでも
わたしが勉強して資格を取ったら
患者さんにもっといいケアが提供できる
その思いで時間とお金をかけて資格を取り、患者さんをはじめ一緒に働いてるスタッフへ、知識と技術を還元してるんです。
消化器の医師たちも、デリケートゾーンでの皮膚トラブルや排泄物に関しての問題が発生し、治療に難航すると
もうWOCさんに相談するしかないね
俺たちだけじゃむりだ…
と、コンサルを依頼していました。
このWOCさん、大学病院や災害拠点病院には必ずひとりはいるはずです。
直に外来予約を取ることは難しいと思うので、かかりつけ医で紹介状を書いてもらい、消化器や泌尿器科、皮膚科の医師の診察を受けつつフォローしてもらうことができます。
詳しくは、最寄りの医療機関にお尋ねください。
もう一度、念を押しておきます。
もし、トラブルの最中にいるならば医療機関を受診してください。
恥ずかしいとか
みっともないとか
思うところはいろいろあると思いますが
良くも悪くもこちらは仕事です。
あなたのデリケートゾーンを診察して、性的な評価をする人は絶対にいません。
万が一そういう医療従事者がいたとしたら、プロとしていかがなものかと思います。
他にも、なんか合わないな
大事にしたい価値観が違うかも?
と、思ったら他をあたってください。
医療従事者も人間、必ず相性があります。
いろんなプロがいることを知り、自分で自分をケアすることの尊さと喜びを実感してもらえたら、なによりです。
あんまり知られていないであろう、プロダクトの話
最後に、わたしが実際にWOCさんから教えてもらったアイテムや病棟で使っているアイテムを紹介していきます。
ですが、くれぐれも、第一選択は医療機関への受診であることを忘れないでください。
これから紹介するアイテムは、どちらかといえば診断や方向性、ケアの方法が決まっている人向けです。
どうにもうまくいかないからとにかく手当たり次第使ってみよう!というマインドでは、最悪の場合、症状や患部が悪化する可能性もあります。
購入や使用は、自己責任のもとでお願いします。
抗真菌成分の入った石鹸です。デリケートゾーンも問題なく洗えます。
詳しい内容は、こちらも参考にしてみてください。
軟便を吸収できるパッドです。
本当に吸収してくれます。
もちろん、尿もある程度はOK!
たまに、家にあった生理用ナプキンで尿や便をしのいでいる人がいるんですが、おすすめはできません。生理は血液=タンパク質を吸収するもの、尿取りパッドや軟便パッドは水分を吸収してくれるものです。
できたら用途にあったものを使ってほしいな、と思います。
上記は、おむつかぶれ用の保湿剤です。
かなり上級者向けになるので、使用の際には必ず医療従事者にご相談ください。
では、心身&デリケートゾーンともに健やかな毎日を送っていきましょうね。
引用・参考文献
貴重な時間を使い、最後まで記事を読んでくださりどうもありがとうございます。頂いたサポートは書籍の購入や食材など勉強代として使わせていただきます。もっとnoteを楽しんでいきます!!