画材に想う
わたしの一番初めの画材は「クーピー」でした。両親からの誕生日プレゼントで、その明るく可愛い60色に大喜びでした。
それから18のころ、友人から「家で誰も使わないんだ」とフェリシモ「ミニ色鉛筆」を新品で貰いました。なんと500色もあってびっくり!
描きたさにあふれるエネルギーを発散させるように、クーピーと色鉛筆を重ね塗りして、余白なく描いていました。
就職後。
驚くほどパッタリと描けなくなりました。
結婚後。
生活環境の変化と出産育児などもあり、なかなか描けないことは変わらずでしたが、画材屋さんへ行くようになりました。
新しく「色鉛筆」をいくつかジャケ買いしてみたり、主人が面白そうだと言って「水彩色鉛筆」を買ってくれたり。また、よく分からずに買ってみた「緑の箱の絵具」や「英語の絵具」など。
画材をたくさん集めても、描く気力がなかなか湧きません。いま思えば、描けない焦りを埋めるために買っていたような気もします。
しかし月日を重ねるうちに、様々な方々との出会いによって、ありがたいことに描く機会(展示や依頼など)が増えました。
Tシャツに描くことが多かったときは「トールペイントの絵具」「布えのぐ」も買い集めました。
大義名分や理由がないと描けない日々でしたが、たまには「とにかく描かなきゃ」という気分になって、画材を引っ張りだしました。
普段は色鉛筆とトールペイントばかり使うので、買いっぱなしの「緑の箱の絵具」を使ってみることにしました。
恥ずかしながら、絵具の特性も把握せず、思いつきと当てずっぽうで描いてみて、それなりに良さげにできたものをSNSにアップしていました。
この「緑の箱の絵具」=クサカベ透明水彩絵具です。箱の文字を読んでSNSでは「#透明水彩」とつけたけど、それの意味するところはあんまり考えていませんでした。
小学校で使う絵具の大人版?って感じでした。
この絵具は色が伸びてきれいだけど、ラクガキ以上を描こうとするとなんか難しくて、でも何が難しいのかもわからなくて。
数回描いたけれど、深入りしませんでした。
「英語の絵具」=アクリル絵具やアクリルガッシュを使うこともありました。
こっち系はなんか、美術の授業で使ったのも家にあったし、トールペイントとも似て重ね塗りができるなあと感じました。
ネットで使い方を調べながら、背景まで含めた絵を描いたこともありました(色々ダメダメですけど)。
そうやってたまに絵具を使ってみたり、美術館などできれいな水彩画を観てはどうやって描いてるんだろうなんて憧れも抱いたりしたけど、わたしが使うのはやはり色鉛筆たちでした。
少しずつ「描こうかな」と思える日も増えてきて、公募に挑戦したり、パソコンで描いて無料素材サイトへの投稿もするようになりました。
そんなある時、主人が大量の画材をもらってきました。もう使われることがなくなった画材だけれど、捨てるのは忍びないので奥さんが絵を描くなら差し上げますと。
わたしには本当にもったいない、段ボールいっぱいの画材。絵具が数箱と、パステルも数箱、日本画の絵具などなど。どれも大切に使われていた雰囲気があります。
そのお下がりの画材たちは静かな迫力があってつい緊張するのですが、挨拶がわりにどれか使わせてもらおうと思いました。
ぱっと惹きつけられた「赤い箱の絵具」。フタを開けると、キレイに並んだ60色に圧倒されました。
2018年戌年の元旦に、年越しをしながら、その絵具で描いてみました。
この絵具が今、単色イラストで使っている「ホルベイン透明水彩絵具」です。
やっぱり当てずっぽうで使ってて、アクリル絵具みたいに塗っているんですけどね。
「パステル」も使ってみました。
その後も、理由がなければ描けない日々でしたが、ちょっとした転機がありました。
プレゼントでもらった「水彩筆ペン」。あかしや水彩毛筆【彩】30色入り。これが気軽で使いやすくて、頭で思った瞬間に色を広げていけるのが快感でした。
スキマ時間に、ささっと描けるのです。
この画材によって、純粋なお絵描き心が満たされ、絵を描く楽しさが再燃し始めました。
だんだん強く「描く時間が欲しい」そして「絵の基礎を学びたい」と思うようになり、2019年に美術教室に通い始め、2020年にグループ展の準備が始まりました。
グループ展の作品を何で描くかを決める時に、あのお下がりの段ボールから、色数の多い透明水彩絵具とアクリル絵具を持っていき、色を試して、透明水彩絵具に決めたのでした。
そこから初めてちゃんと透明水彩絵具と向き合いました。特性を学び、紙や筆のことも学び、なんとか作品と呼べる絵を描くことができました。
こちらは、透明水彩を学び始めたときの、大切な出会いを綴った記事です。
作品展後は気が抜けてしまって大作などは描けていませんが、就寝前になにかしら描く時間を設けるようになりました。毎日ではないけれど、昔に比べたら格段に描くことが増えました。
これまでを振り返ると、たくさんの画材をいただいてきたことに思い至ります。他にも筆や和紙や色鉛筆などをいただいてきて、改めて感謝の気持ちでいっぱいになります。
いただいた画材たちに、うちに来てよかったと思ってもらえるように、これから時間をかけて大切に使っていきたい。
幼馴染のようなクーピーや色鉛筆、自分で買ったクサカベ透明水彩絵具やアクリル絵具たちも。
今はまず、ホルベイン透明水彩絵具から。
作品づくりの過程で見えた、深い水彩の世界にすっかり魅了されていますが、深すぎて溺れそうになるし、遠くも見えません。
だから今はまず一色一色と向き合って、わたしなりに仲良くなっていきたい。
そう思っています。
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