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習いごとの送迎にて

週に数回、娘の習いごとの送迎があります。
夕方と夜、車で15分ほど。

漫画、ゲーム、音楽、絵…
趣味が通じ合う小6娘との、楽しい15分間です。

到着までずっと寝てるときもあるし、
好きな音楽を聴きまくるときもあるし、
しりとりやマジカルバナナをしたり、
「おはなし」をしたりします。

なかでも「おはなし」は1番楽しい。

「おはなしする?」と切り出す娘。
「いいよ、話すと聞く、どっち?」と私。
「聞くがいいな」ほぼ、そう答える娘。

「いいよー題名は?」
「んー… “不思議な山”!」

そして、私が即興で「不思議な山」のお話を語るのです。
聞き手(娘)のリアクションがいいので、こちらもどんどん興に乗ります。
よくこんな話が頭にあったな?と思うほど、芋づる式にスルスルと変な話が続きます。
オチを上手くつけられたら成功!
まぁ、上手くいかないときもあります。

道中の半分ほどで語り終わると、次は私がお題をいいます。
今度は娘の頭から、芋づる式にお話が伸びて出てきます。


✳︎


そんな送迎タイム。
6月からは、新しい楽しみが増えました。
私が語る『みる猫』です。

「お母さんのさ、この絵からお話書きたいって言ってくれた人がいてね(照)」
「えっすご!!」 
「で、始まったんだけど…」
「どんなお話なん?」
「んーと、まず始まりがさ…」

こんな感じで始まりました。

大体話すのは、帰り道。
(行きは主人、帰りは私が多いのです)
駐車場で待っていると、習いごとの建物から駆けてくる娘。
ひととおり今日のできごとを話してくれたあとに、気持ちを切り替えるようにして
「あのお話の続きして」
と言ってきます。

「いいよ、どこからだっけ」
「〇〇が〇〇したところ」
「そうだったね!そうそう。それで、どうなるのーって思ったじゃん。そしたらさ…」

10分くらい話すと、自宅に着きます。
どんなにいいところでも、エンジンを切ったら

「はい、おしまい。続きはまた今度。」
「えー!」

お話も終わります。


✳︎


そんな日が数日つづき、とうとう昨日が最終回の日でした。

ちょうど、あんこぼーろさんが「あとがき」を公開された日。


どしゃ降りの夜でした。

迎えにいく1人の車内、大好きなスピッツの『コメット』をスーパーリピートして聴きながら、運転しました(偶然にもなかなか符合するワードがあるんですよ)。

駐車場で待っていると、雨の中走ってくる娘。
ひととおり今日の出来事を話してから、
「お話ききたいな」
と言います。

昨日は、結・後篇の、真ん中少し前くらいから。

大雨に負けないように、セリフを熱演します。
演じててつい泣きそうになります。

そして娘も、いろいろ感じ取りながら聴いているのが伝わってきました。

残り1/5くらいのところで、
自宅に到着。

「…はい、じゃあ続きはまた今度ね。」
「…」

「お母さんはこのままお兄ちゃんの迎え行くし、先お風呂入っててね」
「!!私も行く!お話聞く」

だよね。終われないよね。ここで。
そう思って、娘を乗せたまま、再出発しました。

お兄ちゃんが出てくるのを待つ間、そこの駐車場で、お話の続きを語ります。



いよいよ
言葉で伝えられないシーンがやってきました。

ちょっと考えて、スマホを小説の画面にして、渡しました。
きょとんとしながら、「あ、」と気づいて、スマホを指で触れる娘。

雨の音。

ゆっくり、指を動かす娘。


しばらくして、文字がない、真っ白な画面になりました。

指で画面を滑らせても、次の文字が現れないことで、物語が終わったことが分かったようでした。




涙目になっている娘。
感情があふれているのが伝わりました。

「すごかった」

「…本にしたらいいのに。」

「自分でも読みたい。」

そして、ぽつぽつと感想を言ってくれます。
記事中の音楽を流すと、雨音と一緒になって、感動を増幅させてくれました。

そこへ、お兄ちゃんが車に乗ってきました。
構わずに感想をつぶやく私たち。

「えっなに、この音楽?え、なんの話ししてるの?ん?誰か知ってる人の話?えっ、なに?」
すっかり置いてきぼりなお兄ちゃん(笑)

「お兄ちゃんも読めばいいんだよ!」
と上から目線の娘でした(笑)。


帰宅して、一息ついて。
娘が言いました。

「良いお話を聞いたから、明日は学校頑張れそうな気がする!」

…なかなか最近は朝、行きたくなくて気持ちが追いつかないんだけど。
優れた物語には、ひとを前向きにさせるパワーがあるんだなって感動しました。


ところが今朝起きた娘は、
「やっぱ行きたくないよ〜」
とごねました(笑)

でも、いいんです。
気持ちは毎日揺れる。
揺れたところに、ふわっと一押ししてくれる物語が胸にあることが、生きる力になったりします。


✳︎

さて、送迎中の『みる猫』も終わったし、
今度からまた「おはなし」に戻ります。

想像力はpowerだから。

また楽しいひとときを続けていきたいです。




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