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思春期感情大爆発!ネクラ系青春ボカロ「石風呂」を聴いてくれ。

 思春期、特に中学時代というのは、最も多感な時期だと言われ、良くも悪くも「自分はどういう人間か」というアイデンティティを形成する時期でもあり、ここで万が一にもオタク趣味にハマってしまおうものならその後は「オタク道(ロード)」まっしぐら、死ぬまでその道を歩き続けることになります(諸説あり)。まぁ、分かり切っていることですが、中学時代の過ごし方や、ハマっていたものは5年後、10年後の自分と深く結びついているんですよね。
 さて、ここで一つ質問。「みなさんの中学時代は、楽しかったですか?」この質問をすると苦い思い出や恥ずかしい出来事や消したい過去をお持ちの一部の人からブン殴られそうになりますが、自分は上記3つのトピックに関して山のようにエピソードを持っているので平等です。一緒にキズを舐め合いましょう。という訳で少しだけそのキズを開きます。あの頃の自分は例に漏れず中二病(サブカル・セカイ系同時発症)でした。ひたすらにオタク隠しをしてアニメとかに全然興味ない振りしているけど、家ではテレビの音量小さくして「ノーゲーム・ノーライフ」観るみたいな。オタク趣味をひけらかしているクラスメートや授業中騒ぎまくるサッカー部の連中を内心で下に見ながら中学時代を過ごしていました。誰がどう見ても痛い人間です。
 そんな人間が過ごす中学時代は楽しい訳が無く、くだらない日常に刺激を求めてインターネットを漂流する日々。ちなみにパソコンはおろかスマホも持っていなかったので日々のインターネットタイムのタイミングや時間はもちろん制限されていました。そんな毎回30分の幸福の時間です。確実に今の自分に影響を与え、あの頃の毎日を少しだけ楽しくしてくれた音楽に出会ったのは。

石風呂/少年は教室がきらいだったのだ

 コメントでもたくさん同じことが言われていますが、本当にこの音楽に中2の時に出会えて良かったと思います。当時は死ぬほどニコ動でボカロ曲を漁っていたけど、後にも先にもこの曲をはじめて聴いた時の衝撃と爽快感を超える曲は現れてません。ちなみにこの曲を久々に聴くにあたってニコ動にアップロードされている方の動画も見ましたが、ニコ動版はコメントが(良い意味でも悪い意味でも)地獄でした。思春期の全てがあの動画に詰まっている。
 ボカロ好きの人なら石風呂という名前は聞いたことがなくても、氏の代表曲である「ゆるふわ樹海ガール」という曲は聴いたことがあるかもしれません。それと現在は本名の「朝日」名義で「ネクライトーキー」というバンドのギターも担当されています。このバンドも石風呂イズム全開で、めちゃくちゃ良いんスよね…。とまぁ、このくらいで石風呂についての紹介は終わりにして、曲について喋りましょう。
 もう、思春期特有のモヤモヤを歌詞と曲が見事に全部言ってくれたなと思います。イントロから「それぞれ思いは あれども 僕ら仲良くないね」の入りからしてもう最高。そして当時のボカロ曲らしからぬ超王道のロックサウンド。こんなの中二心が動かされないほうが難しいでしょ。
そしてこれは石風呂楽曲全てに共通することなんですが、歌詞に綺麗事が一切入ってないんですよね。どこまでも赤裸々で、青臭くて、正直で。この曲なんかはその極致で、どの部分を抜き出しても叫びたかったけれど言語化できなかったあの頃のグチャクチャの感情が見事に表現されています。絶対に心に刺さる言葉があるはず。
いやホントに、改めて見てもすごい歌詞だ…。もうほぼ石風呂氏の独白みたいな曲だと思いますが、それ故にめちゃくちゃ共感できますよね。

数人程度の友人と 小さく笑いあって
毎日を過ごすような それが一番良いのかな
愛と平和だって 目もくれないような
僕らでよかった・・・

 あれだけネガティブな感情を爆発させておいて、ラスサビは「それでも、生きてやる」という風なポジティブな方向に着地するのがニクい。これも石風呂楽曲でよくあるんですけど、一番最後に暖かい言葉とか救いになるようなメッセージを残してくれるんスよ。この「中学嫌い」シリーズには「きらいな人」とか「午前3時のヘッドフォン」とか、他にも色々な曲があるんですけど、やっぱり最後は前を向かせてくれるんです。それを聴くと「クソみたいな毎日だけど生きてやるか」っていう気持ちになっちゃうんですよね。もちろんこう思っている時は目に涙を浮かべています。多感な中学生だから仕方ない。
 それとやっぱりこういう曲はボーカロイドの声で歌うからこそ心にストレートに届くんだろうな、と今になって思います。作り手の顔が見えない事や、良い意味で感情がこもらないボカロ曲だからこそ、余計な情報をカットして言葉と音を運んでくれるんだなと。
この曲だけでまぁまぁ文字数使っちゃったので、後は自分の特に好きな石風呂楽曲に軽く触れておしまいにします。

石風呂/シーサイド・モーテル

 雰囲気は夏の終わりっぽい曲だけど、今みたいな寒い冬に聴くのもまた良し。一人寂しく夜の道を歩いている時に一番聴きたくなる。何となく自分は恋の歌だと解釈したのだけど、皆さんはどうでしょうか。思春期特有の擦れた恋心と「シーサイド・モーテル」という一般的に日本では男女で利用する宿泊施設との対比がめちゃくちゃに良い。そして何と言ってもメロディがね、本当に優しいんですよ…。ぽつりぽつりと独り言を並べていくような。後半はそのメロディで次第に決意が固まっていくような言葉を紡いでいくという展開で、グッときます。

生きたくない日々を「死にたい」だなんて言い換えて
まるで不幸少年、僕を笑ってくれ

 個人的にはこの一節が好きですね。このちょっとニヒルな歌詞は大体15.6歳の頃にくる「孤独なオレ」を自虐して悦に浸る…みたいなアレを感じますね。最高です。

石風呂/サイコなわたし

 前述した二曲を始めとした「思春期の感情爆発ソング」はわりと初期に作られた楽曲で、後期はこういうかわいい女の子をテーマにした楽曲がよく作られるようになりました。「てるみい」とか、「壊れぬハートが欲しいのだ」とかもそうですね。きっと”あの時”の感情は曲にすることで供養できたんだと思います。良かった…。
 曲についてですが、アレンジにキーボードが使われるようになってよりポップに、曲調も明るくなり今の「ネクライトーキー」っぽいサウンドに仕上がっています。ですが歌詞はちょっぴり内省的で自虐的で、石風呂らしさがまだまだ残っていて「石風呂」と「ネクライトーキー」どちらのエッセンスも感じられる良い曲です。コメントにもありましたが、このSF要素は初期のパスピエっぽくて好き。ラブソングも書けるようになった石風呂は、強い!


 ここまで読んでいただきありがとうございます。さて、これで石風呂の魅力は十二分に伝わったと思います。本当に大好きなアーティストなのでこの記事を機に聴き始めたり、昔聴いてた人は久しぶりに聴き直してくれると嬉しいです。中学で出会って今に至るまで、頻度は変われど聴き続けていますし、大学生になってはじめて魅力というか、おもしろさに気づいた曲もあります。「浮かれた大学生は死ね」とか。そしてどうやらTik Tokで「壊れぬハートが欲しいのだ」がけっこう使われているらしいので、中高生が石風呂楽曲に触れるチャンスは多いのでは…と一瞬思いましたが、仮に今自分が中2だとするとザ・陽キャ御用達アプリのTik Tokなんか死んでも見ないと思うので、やっぱりそれは難しいか…。
 

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