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小説家としての半生と反省①人生楽しもうぜ!編

こんにちは、はじめまして。
朝倉宏景あさくらひろかげと申します。
講談社の小説現代からデビューさせてもらって、約10年経ちました。
刊行したのも10冊くらいで、だいたい1年1冊ペースでしょうか。
小説の書き方についてだったり、日々感じたことなどを気の向くままに書いていきます。自分自身でも、過去の道程をたどり直してみたい時期にさしかかったのかもしれません。

やはり最初の投稿なので、なぜ小説を書きはじめたか、どんな新人賞に応募してきたか、どうやってデビューしたか、あのときああしていればもっとよかったかな、なんていう後悔などを何回かに分けて書いていこうと思います。これからエンタメ作家を目指している方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

さて、小説現代長編新人賞の奨励賞をいただいたのは、高校野球をテーマにした作品でした。

私も高校時代、硬式野球部に所属しており、そのときの体験がこの作品をかたちづくる部分の、だいたい50%くらいを占めていると思います。
作中では、クリスというアメリカ人の黒人の父と日本人の母をもつ高校生が登場します。

私が高校生の頃、ある日、突然やってきたのは、ドイツ人の父と日本人の母をもつ転校生でした。
ドイツから引っ越してきたのです。そして、彼はすぐに野球部に入部しました。

ドイツと野球。あまりイメージが結びつかないのですが、本人曰く、「ドイツのプロでやっていた」らしい。
え、高校生なのに……? しかし、私はとりあえず信じてみました。そして、みんなでわきたちました。
「おいおい、ヤベェぞ、俺たち、いけるかもしれないぞ!」

人数ギリギリの、万年1回戦負けの弱小高です。
けれど、たった一人、とてつもない戦力が入れば強豪校とも渡りあえる。それが野球の面白いところです。
いやが上にも期待が高まります。

さぁ、いよいよ練習試合です。
バッターボックスに、金髪の、青い目の、メジャーリーグのスラッガーみたいな構えの男が入ります。
当然、相手チームはざわつきます。
ザワザワ、ザワザワ。
「おいおい、ヤベェぞ。外野バック!」

彼の構えはテレビでしか見ないような、プロ野球の助っ人外国人なみの豪快さ。
そして、スイングも豪快。
しかし、ほとんど当たらない。
結局のところ、彼は弱小高でもそんなに浮かないレベルの戦力でした。

もちろん、いいんですよ。楽しく、真面目に野球に取り組めれば。
でも、「プロ」という言葉には終始「?」がつきまといました。

緊張していたんでしょう、きっと。
異国の地の、はっきり言って超特殊な文化である日本の野球部になじめるかどうか。
日本人の転校生なら「いやいや僕なんてそんな……」と謙遜するところを、ビッグマウスで挑む気概、私はけっこう好きでした。

結局、彼は一年くらいで、また転校してしまいました。ドイツに帰ったのかは、ちょっと記憶がさだかではありません。すいません。

ところで、彼は一つの言葉を我々野球部に残していきました。ドイツ語で。
「シュピール」「ベイスボール」「ニヒト」「アルバイテン」
断片的にしか覚えていないのですが、野球はゲームであり楽しむもので、仕事じゃないんだというメッセージが、今も私の頭のなかに残っています。

野球もサッカーもバスケもすべてのスポーツはゲームです、楽しむものです。それがいつしか真剣に取り組むうちに、高校生の部活レベルでも苦しく、つらいものに変わってしまいます。

小説もそうです。
「小説」とは「大説」に対して、ちっぽけな、とるにたらない「説」という意味合いだそうです。
たかが「小説」なんですよ。
書くのも、読むのも、楽しんで、みんなでワイワイするものです。私は、デビュー後、プロになってから一時期そのことをすっかり忘れ、本当に苦しい思いをしました。
ストレスで円形脱毛症になったり、帯状疱疹になったりしました。
このときの体験も、後々、書けたら書いてみます。

あのね、書いている自分が楽しくなけりゃ、読んでる人も楽しくならないんですよ。私はエンタメ作家ですから。
その原点を思い出したら、すごく楽になりました。今では、小説や、こういった記事を書くことが、本当に楽しいです。
なので、このnoteでも書こうと思ったのかもしれません。

だから、せいぜい楽しみましょう! 書くことを、人生を!


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