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PC禁止の喫茶店

麻布十番にあるサロンに通っている。
その日は六本木まで歩いて、展覧会を訪れて、喫茶店に入るのがお気に入りの過ごし方だ。

この喫茶店はGWに陽射しが辛くなってたまたま入ったのがきっかけだった。

壁にたくさんい飾られた絵には数十万〜数百万の値札がつけられて、撮影禁止の文字。

少し雑に並べられたカップもきっと高価なものに違いない。

半分物置になっているピアノ、ギターもあっだ気がする。

ごちゃごちゃしてるように見えてもなぜか落ち着く、マスターの趣味が溢れるお店だった。

十数人ほど入る店内は満席で、オーダーはマスターが取りに来てくれるのを待つ。
一段落して私の注文を聞きにきたマスターは「混んでるからちょっと待たせちゃう」と一言添えてカウンターに戻った。

素敵だなと改めて店内を見渡すと「パソコン禁止」の張り紙。

どこか異世界に来たような心持ちは飾られた絵やインテリアだけでなく「タイピング音のない空間」も作用していたのかもしれない。

仕事で1日のほとんどがPC作業の私にとって、異世界に感じた。

耳を澄ますと会話がよく聞こえる。

夫人たちは息子のこと、サラリーマンの2人は珈琲豆について、マスターもたまに交えながら盛り上がっている。

窓際からは僅かな英単語が聞き取れた。

しばらくたってから私の元にも珈琲とシフォンケーキが運ばれてきた。

淹れたての味、冷めてからの味、初めて訪れた私にもゆっくりと丁寧に説明してくれた。

あまり珈琲に詳しくない私は、マスターの言葉を頭の中で確認するように少しずつ味わった。

ここ最近手をつけてなかった日記を書き、やっと購入した本を読んであっという間に時間が過ぎてった。

陽が翳るまでと思って入った喫茶店は気づいた頃には暗がりになっていて、冷め切った珈琲を飲み干してお店を出た。

素敵な空間に出会った時、帰りの足取りもとても軽くなる。

帰りは六本木から浜松町まで歩いた。

喫茶店は用事ついでに立ち寄るのが当たり前になっていたが、ここに来るためだけに出かけたい。と思える場所になった。

(自家焙煎珈琲 カフェ・タピロス@東京都港区)

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