[詩]金魚柄のコップが割れたそんな日に

金魚柄のコップ
そこに金魚はいない
いないのに
砕けた瞬間、命を感じてしまうのはなぜだろう
痛みを覚えるのはなぜだろう
これまでとて遠くへなんていけはしなかった。むしろ割れたらばこそ世界は広がったはずなのに
遮るガラスを意識するのはなぜだろう
ただ泳いていたかった
たくさんでなくてもいい
ただ泳ぎたかった
色も形も叫ぶ声も
どんなでも構わない
ただそれぞれの思いを心を底に沈んだ人の色を
それぞれに愛し
同じ強さで己の色を愛し
思い思いの速さで泳げれば
ただそれだけで良かったのに
壊れたコップに遮られ、世界はビー玉よりもなお狭く
行く先を閉じる
愛も光も優しさもここにはあるのに
砕けたコップに閉じ込められどこにも行けぬ
ちぎれた尾びれをばたつかせ流れ流れてその先にあなたは待っていてくれるだろうか
光はそこにあってくれるだろうか

金魚柄のコップが割れたそんな日に
かけらの海であなたを想う

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?