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ある年の節分【エッセイ】

※お食事中の方は閲覧なさらないで下さい。また、鼻に関しての話が出てきますので、不快になられそうな方は閲覧をお控えくださいますようお願い致します。

何年生だったか忘れたが、私が小学生の時だった。
いつもの節分のように、庭に「鬼は外」家の中に「福は内」と豆をまいたあと、歳の数だけ豆を食べていたときのことだった。
ふと、鼻の穴に豆を入れてみたくなった。思いつくやいなや、私は豆を鼻に詰めていた。
私の思惑では、その豆は鼻息でまるでロケットのように飛んでいくはずだった。しかし勢いが足りないのか、なかなか鼻から出てこない。
出てこないことに、私は少し焦り始めた。早く取りたい。早く取らないと怒られるし、なんだか大変なことになりそうな気がした。そう思っても豆はなかなか出て来ず、私は本当に焦り始めた。
早く取り出したい一心で、私は指を鼻に突っ込んだ。すると指によって豆はずずっと奥へと押し込まれた。やばい、これはまずいことになった。焦れば焦るほど、指を入れれば入れるほど、豆は奥へ行く。やがて豆は指の届かないほど奥へと入り込んでしまった。
どうしよう。と思った。けれどそれでも親に言うのは気が引けて、自分でなんとかしようとしていたが、やがて、もうだめだ、と思った。
私は鼻の穴に豆を詰めたことを母に打ち明けた。
母は掃除機を持ってきて、それで吸い出そうとした。けれど取れない。次にうがいしてみるようにと言われ、やってみたけれど取れない。
「まあ、そのうち取れるやろ」そんなことを言われたような言われなかったような‥‥。母は全く慌てていなかった。
今から思うと、その次の日耳鼻科へ行くべきだったと思うが、母もそんな案はなかったらしく、行かなかった。
そして、恐るべきことに、私は鼻の中に豆を宿したまま、日々を過ごしていった‥‥。

時は過ぎ、鼻に豆を詰めてから、おそらく一年ほどが経った頃だった。
学校で、無性に鼻がムズムズしてきた。そこで私は鼻をかんでみた。すると、何やら見慣れないものがある。鼻くそではない。楕円形で少しひしゃげたようなものである。
私は忘れていた。一年前の節分の出来事を。まあ、こんなものが出てくることも、たまにはあるだろう。私は鼻をかんだティッシュをそのまま捨て、その物体のことは特に誰にも話さなかった。
しかしそれから15年ほどの時が過ぎ、私は突然鼻に豆を詰めた節分のことを思い出したのである。それと同時に、あの物体は豆だったのではないか、という思いが湧いてきた。
あまりにもあまりな面白い出来事だったので、その当時開設していたホームページに掲載した。
あの事件以来、鼻に詰めたのはポッキーだけで、丸いものは詰めないようにしている。

※鼻の中で豆が腐ることがあるので、もし鼻に詰めてしまったら、速やかに耳鼻科へいきましょう。

※鼻は詰めるところではないので、何であっても詰めないようにしましょう(ポッキーも中で折れたら大変なので、詰めないようにしましょう)。

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