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生きていくということ【ショートショート】

小説を書こうとメモ帳を開く。
ブラウザを閉じる。
外界と遮断される。
途端に一人になった気がして、心細くなる。

あたしの友達は、ネットの中にいる。
あたしの恋人もネットの中にいる。
あたしは友達と、SNSでやりとりする。ほんとの名前は知らないし住所も知らない。
あたしは恋人とメールで愛を語らう。彼の顔も見たこともなければ、声も聞いたこともない。
それでも友達だ。恋人だ。
けど、スマホが使えなくなったら、ネットが繋がらなくなったら…あたしは一人になってしまう。

あたしは少しずつではあるが、老後の備えを貯金している。
多分一人で生きていくからには、必要になってくるからだ。
病気をして働けなくなっても一人。
動けなくなっても一人。
動けなくなったら、お金を払って人を頼むしかない。

その日まで、あたしはそんなふうに生きてきた。

ある雨の日、あたしは傘を忘れてしまった。
駅から家まではそんなに遠くない。走ればそんなに濡れずに着ける。そう思ったが、思いの外雨はひどく、あたしは信号待ちでずぶ濡れになってしまった。
そんなとき、ある女性が声をかけてくれた。
「あのう、よかったら、使ってください」
あたしは戸惑った。
あたしの世界には、知らない人との助け合いなんてものがなかったからだ。
けれど、きづいたら、あたしの右手はそれを受け取り「ありがとうございます」と言っていた。
女性は微笑んで去っていった。

またある時、あたしは入院することになった。
蓄えは少しはあったが、手術費用までは賄えなかった。
あたしはやむを得ず退院することにした。
しかし、看護師さんに退院を望むことを医師に伝えてほしいと言うと、意外な返事が返ってきた。
お友達が来て、費用のお支払いされていきましたよ。
その「友達」は、到底友達と言えるほど親しくはなかった。ブログで、私が手術費用に困っていることを知った、中学の同級生だった。それにしてもブログなのになぜあたしだと分かったんだろう。
あたしはそのおかげで、手術できた。
後日その友達に会えて借りたぶんを返す旨を告げたら、いらないと言われた。
あたしが入院して困ってるのを知って、友人達で出し合ってくれたんだそうな。

あたしはずっと一人て生きてきたつもりだった。
でも、実際には、コンビニに行ったって、売ってくれる人がいるから買い物ができるわけだし、食べ物屋さんだってお金払ったって作ってくれる人がいなかったら、何も出てきはしない。
あたしは一人で生きているなんて、ほんとに傲慢だったなあと思った。

人間は、一人では生きられない。
だから、困ったらお互い様でいいと思うんだ。
怠けてるわけじゃない。
人間はほんとに弱くて、一人でできることの限界は、実はとても低いとこにある。
だから、一生懸命やって、それでも足りなかったら、出せる人に出してもらって、逆の場合は出してあげたらいい。

そうやって助け合っていくのだ。
人間はちっぽけで、自分ひとりでできることはほんとに小さい。
けど、たくさんの人と協力しあえばいきていくことができるのだ。

あの2つの出来事は、あたしをそんなふうに変えてくれた。

そして今、あたしは着の身着のまま、日本一周旅行をしている。
今は、奈良県のとあるお寺で寝泊まりさせてもらって、一宿一飯のお礼にと、手伝いをさせてもらっている。
ここは居心地がいい。ここで住職たちとずっと暮らすのもいいかなあなんて思っている。


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本当は、別の作品を書きすすめていたのですが、筆が進まず(^_^;)、先にこっちを投稿しましたー。
(江戸時代?の蕎麦屋さんを舞台にしたので、色々と進まなくて…)


文中の2つの体験談は、少し変えて引用させていただきました。
※傘の話
acさんの記事「傘」からインスピレーションを受け、記述させて頂きました。
https://note.com/acacac/n/na97bb15cbf7f
※病院の話
母から伝え聞いたもので、ソースが曖昧です。もし、このお話しにまつわる方がいらっしゃれば、お申し出くださいm(_ _)m


このストーリーは、昨日何気なく思いついて書き始めたのですが、最初は帰着点は考えてませんでしたが、もっと暗いところへゴールするような気がしていたので、自分でも驚きです🙀
心の中ではこういう世の中を望んでいるからかもしれませんね☺


前回書いた副腎の検査、陽性でした😱
けど、今のところは手術の話はないです。
ドクターいわく、副腎の手術や治療をすると、腎血流量が減り、一気に腎不全になる可能性があるとのことで。
腎臓のデータはあらかじめ出してあったのに、何を今更ー!検査しても意味なかったやん!と思ってしまいました(●`ε´●)
来週、腎臓の方のドクターに診てもらうので、ちょっと相談してみようと思います(;´д`)トホホ…

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