虹【ファンタジー ショートショート】
今日は変なお天気だった。
車を運転していたら、おひさまが出ているのに、土砂降りの雨が降っていたのだ。天気雨なんてかわいいもんじゃない。
角を東に向かって曲がった。
すると、目の前に大きな虹があった。歩いてでも着けそうだ。
幸いこの辺りは雨はやんでいる。
公園を見つけて、そこの駐車場に車を停めて、虹まで歩いて行くことにした。
子供の頃聞いた話だと、虹はラムネでできているらしい。ぽりぽり食べると色ごとにいちごやぶどうの味がするらしい。そしてその周りにはお花畑が広がっているらしい。
そんなことを思い出しながら歩いていくと、うわあ、ほんとだ、パステルカラーのお花畑が見えてきた。
ベビーピンクや黄色の、三日月やお星様の形の花がいっぱい咲いていた。茎も葉っぱもミントグリーンやうすむらさき。夢の中にいるみたいだった。
お花畑の中をベビーピンクのうさぎがはねていく。首にはみずいろのリボンをつけている。
「うさぎさん、待って」
私はその後を追いかける。すると、遠くにあると思っていた虹の柱がすぐ目の前にあった。
「わっ」
ぶつかりそうになって、小さく叫び声を上げた。
あ、甘い匂いがする。虹からだ。
ラムネだと聞いたことを思い出して、恐る恐るベビーピンクの部分をかじってみる。パキリ。簡単に割れた。甘い。いちご味だ。
こんなに美味しいラムネは食べたことがなかった。私は夢中で食べ始めた。次は反対側から。うすむらさきは、ぶどう味だわ。
虹は太くて、食べがいがあった。端っこからしか食べられない。ぶどう味の部分をやっと食べ終わった。次は何味かな…ソーダ味だわ。
美味しい、これ、全部食べちゃうかも。
「きゃー、やめて!虹がなくなっちゃう!」
突然耳元で声がした。振り向くと、透き通った羽で翔んでいる、10cmくらいの女の子が叫んでいた。
「誰?あなた。おいしいのに、食べちゃいけないの?」
「だめにきまってるじゃない!」
女の子はめちゃくちゃ怒っている。すごい勢いでぐるぐる回って翔んでいる。
「虹を食べたら真っ暗になっちゃうんだから」
「え!それほんと?」
女の子はこっくりうなづく。
「ほんとよ。世界中の光という光がなくなっちゃうのよ」
私はびっくりして、目を丸くして女の子を見つめていた。
女の子は私の様子を見て笑った。
「私、カナリアよ。いつも虹が食べられないように見張ってるの。この子が教えてくれたのよ」
見ると足元に、さっきのベビーピンクのうさぎがいる。
「この子の名前はコットンキャンディよ」
小さな手でうさぎをなでている。うさぎもなついていた。
「私、どうしよう…虹、食べちゃって…」
急に不安になってきた。光がなくなってしまうなんて。
「大丈夫よ。これくらいならすぐに治るわ」
カナリアは小さなステッキを取り出し、呪文を唱えた。
「レインボウ、レインボウ、ヒール、ユー、ジェントリィ」
すると欠けていた部分が元に戻り、美しい虹の姿を取り戻した。
「わぁ、戻った!カナリア、ありがとう!」
カナリアは得意げだ。コットンキャンディも、鼻をひくひくさせて、心なしか喜んでいるようだった。
「ねえ、虹を滑ってみない?」
カナリアが言うと、虹のてっぺんまで、ガラスの階段がかかった。
私は恐る恐る、ガラスの階段を登ってみる。カツンと冷たい音がする。
「大丈夫よ、割れないから。さ、行きましょう」
カナリアが、小さな手で人差し指を掴んで引いてくれる。
カツンカツンカツンカツン…。怖いので下は見ないようにした。
そうっと一歩ずつ登っていたら、気づいたらてっぺんまで来ていた。
改めて見下ろすとすごい高さだ。さっきまでいたパステルカラーの花園が、おもちゃのようだ。
「あら、あなたも来たの」
コットンキャンディも、付いてきていた。
「さあ、滑るわよ。腰を下ろして。よーい、ドン!」
カナリアのかけ声に合わせて、私達は滑り始めた。
きゃー、速い。こんなに高いところからだもの。まだ地面が遠い。
「まだー?」
「もうすぐよ」
カナリアが答えると、急に地面が近くなって…すた。私は立っていた。
見るとそこは、車を停めた公園の駐車場だった。私のクリーム色の車もちゃんとあった。
「着いたんだ、ありがとう」
「ううん、私も楽しかった。じゃあ、帰るから。虹のところへ」
「うん、気をつけて」
カナリアはコットンテールを蜘蛛の糸のバスケットに入れて、飛んでいった。
行っちゃった。ちょっと寂しくなったけど、大丈夫。虹が出たらまた会えるから。
私は今滑ってきた虹を見上げた。
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一昨日の帰り道、土砂降りの天気雨だと思ったら、大きな虹を見つけました🌈
最近、薬を変えたので、よく眠れず少し疲れています。
投稿のペースが落ちるかもしれません。
いつも読んでくださってるのに、すみませんm(_ _)m
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