お正月の神様【ファンタジー ショートショート】

年末、来年もお正月の神様が来てくれるように、玄関ドアにしめ飾りをし、鏡餅にちっちゃなみかんを乗せて、ウラジロと懐紙を敷いて飾った。
いつも見慣れている玄関が、ピリッとして見えた。
12月30日お墓の掃除へ行き、大晦日には家の大掃除をした。
これで、お正月の神様、来てくれるかな。

大晦日の夜、年またぎでテレビを見ていた。
すると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
慌てて出ると、やっぱり、お正月の神様だった。
「ようこそいらっしゃいました。毎年ありがとうございます」
神様にご挨拶をすると、うむと言って家の中に入られた。
我が家は洋間しかないので、居間のソファへお通しする。
神様はどっこらしょ、と腰をおろされる。
私はやかんでお湯を沸かし、正月用に買っておいたちょっと高いお茶を淹れて神様にお出しする。
「お酒はお飲みになりますか?」
「おせち料理と一緒でよい」
神様に、一昨年たまたま差し上げたらお好きだったといういちご大福とお茶をお出しする。
神様は近所の松花堂のいちご大福がお好きだ。
1時を過ぎた頃、眠気が来た。大晦日だけ急に夜更ししようったって、体はいつもの習慣を覚えている。
神様は大福を食べ終わり、髭の手入れをしている。
「神様、申し訳ありませんが、私は休ませて頂きます」
「うむ」
神様は長い口髭を引っ張りながら厳かにおっしゃった。

午前7時。起きてくると神様はソファに座ったままだった。元旦の明け方はずっと色んな番組をやってるので、チャンネルを変えながら時間を潰されたらしい。
「おはようございます。おせち料理をご用意いたします」
「うむ」
まず、熱燗をつける。以前、三三九度をやるようなセットを準備していたのだが、神様は「温かい酒がよい」と言われたので、それからは熱燗にすると美味しいお酒を聞いて、近所の酒屋で買ってきている。
冷蔵庫から買っておいたお節の重箱を取り出し、取皿と箸をセットする。同時進行で雑煮も作る。
準備が整い、神様にダイニングテーブルへ来て頂くようお願いする。
神様は、テレビをおせちを食べながら見られる向きに変えてから席についた。
「今年の酒はキレがあって良い」
神様のお褒めにあずかった。
「ありがとうございます」

特に出かける用もなかったので、元旦と2日は神様とのんびりお正月番組を見て過ごした。
3日は親戚が集まり墓参りをすることになっていたので、朝ご飯を済ますと実家へ帰る旨を神様に告げて出発した。
昼前に着いて仏壇に参り、お茶を飲んでいると親戚がやってきた。
近所の中華料理屋へいきみんなで昼食をとった。全部で二十人ほどの大所帯だったので、二階の小宴会ができる部屋へ通された。
その後みんなで墓参りをした。一昨日降った雪が積もり、元旦に両親が立ててくれた花は生き生きとしていた。雪を払って墓石を雑巾で磨き、線香とろうそくを灯す。親戚は、代わる代わるお参りをし、めいめいに帰っていった。
俺は、両親が夕飯を食べていけと言うので、その後帰ることにした。
お袋は、おせち料理の残りと刺し身、それから俺の好きな唐揚げを出してくれた。
食べたら少し眠くなった。帰りの運転もあるので、少し寝てから帰ることにした。
お袋が、今日は寒いからと敷いてくれたので、布団で寝ることにした。

チュンチュンチュンチュン。鳥の声だ。‥‥ここは、どこだ?周りを見渡してみる。目が覚めてきて、ぼんやりと昨日の記憶が蘇る。そうだ、実家で夕飯を食べて‥‥。
しまった!昨日の晩帰るつもりだったのに‥‥!
母が、朝ご飯は?とすすめてくれるので、急いで食べると家へ帰った。
家に着き、神様は!?と居間へ入っていくと、ソファに座っていらっしゃった。
「すみませんでした!昨日の晩帰るつもりだったのに‥‥眠ってしまって‥‥」
と謝ると、神様は、いい、いいと手だけで合図をし、許してくださった。
そう、神様は4日の0時に帰られる予定だったので、俺は昨日の晩には帰らなくてはと思っていたのだった。
神様は、お土産のいちご大福と日本酒一本を持ち、いらっしゃった時と同じように、とことこと玄関から出て行かれた。
外までお送りし、ありがとうございました、と頭を下げると、また来年、と言ってくださった。俺はそれを聞いてさらに深く頭を下げ、もう一度お礼を言った。
顔を上げるともう神様の姿はなく、ちらちらと雪が降り始めていた。


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お正月を過ぎてから思いついたので、こんな時期の投稿でゴメンナサイ(笑)


今年から、小説は毎週火曜日投稿にしてます(なんとなく)。

(先週は節分ウィークだったので、火曜日がエッセイになりました💦)


その間にエッセイを1つ挟むか、挟まないか‥‥くらいののんびりペースで今年は投稿するつもりです☺


今週は、おばあちゃんのことを思い出してエッセイを書いたので、もしかしたら投稿するかもしれません。


二月に一本くらい、賞に応募できたらいいなあと思ってます✨


今年の末には本を出せるといいなあと思ってます(自費出版)。



来週のお話には魔法使いが登場!?(予定)

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