お風呂嫌い向けの機械?【ショートショート】
ほぉー、ゴールデンウイークでもやるんだねえ。
ゴールデンウイーク初日の夜、何もすることがなくぼんやりとテレビを眺めていたら、深夜にテレビショッピングが始まった。
アナウンサーが「このバスフレッシュナーすごいんです!お風呂に入らなくてもこの機械に入ってボタンひとつでピッカピカになるんです」と言っている。「香りも風景もボタンひとつでお好み次第。フローラルの薫りから、森林浴の香りまで!露天風呂の景色にも変えられます!」
モニターとして水着美女が出てきた。
髪の毛サラサラ、今すぐお風呂に入る理由なんて全く必要なさそうな人だ。
「さあ、今からこのおきれいなお姉さんに入っていただきます。どうなりますでしょうか」
5分後、蓋が開き出てきた。
先ひどの美女は特段変わった様子はない。
手品で無事生還しましたー。みたいなポーズで笑顔で立っている。
アナウンサーが聞く。
「どうでしたか?バスフレッシュナー」
「はい!もう、さいっこうでしたぁ」
かわいい。バスフレッシュナーについての、こんなとこやあんなとこが良かったという説明はないのだけど、お姉さんがかわいいからそれで良かった。
アナウンサーが続ける。
「それでですねー、今回実はまだモニター機しかできていないので、実はこちらをお売りすることになるんです。それでですねー、本来三十万円のところを使用済みということで、15万8000円でご提供いたします」
え、安い。しかもあのお姉さんが入ったあとのあの機械を?
「立川さんのお宅ですか?宅配でーす」
一階のインターフォンが鳴ったのでドアを開ける。部屋まで運んでくれた。
俺の家はワンルームマンションだ。
バスフレッシュナーは結構場所を取った。
「どこ置きましょうか?」
「えーと、とりあえずそこでお願いします」
部屋の隅を指した。
さっそく起動してみる。開けるとあのお姉さんの芳しい匂いがするような気がする。
せっかくだし入ってみるか。
香りと風景。あと音も出るのか。
香りは…なんとあのお姉さんの香りもある。風景は…あのお姉さんの添い寝がある。音は…お義姉さんの甘い囁きが。
セットして入ってみると、なんと癒やされることか。これでこの値段なら安い!毎日美女と添い寝できるのだ。
時間は調整できるようで、ひとまず15分くらいで出た。出た感じ…別に入浴後のさっぱり感は特にない。けれど、満足感はたっぷりあったので、よしとしよう。
数日後、また深夜のテレビショッピングを見ていると、同じ商品を売っていた。今度は違うお姉さんが入っていた。やはり値段は15万8000円。俺は急いで電話をかけ、これも買った。このお姉さんもいい。前のお姉さんの甘い囁きもいいけれど、ちょっと叱られるような強気な感じもいい。
そうこうするうちに、俺の部屋には4台のバスフレッシュナーが並んだ。毎日違うお姉さんのかいなに抱かれ、囁かれ、満足している。
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