見出し画像

モンゴル、我々と似た顔をした知られざるご近所

モンゴル入国。

13世紀。
陸地をいかに速く遠くへ移動できるかが強さと直結したランドパワーの時代。
馬という乗り物が近代兵器となり、馬を自在に乗りこなす遊牧民が覇者となった。
数々の遊牧民の中でも最強のボスとして君臨したのがモンゴル帝国。
徹底的な殺戮と略奪、破壊の限りを尽くし、陸続きとしては史上最大の帝国を築いた。
日本もロックオンされたがスーパーラッキーが重なってその蹂躙を免れた。

今も人々は馬とともに生きている。

まだ10代半ばぐらいだろうか、こんな少年が馬を自在に操る姿、カッコイイもんだな。

遊牧民は穏やかでフレンドリーだ。
僕を見つけるとニコニコしながら近寄ってくる。

世界一人口密度が低い国、モンゴル。
日本の4倍の国土に、人口たった320万人。

かれらの行動範囲、テリトリー、他者との距離感ってどんなもんなんだろう?
日本は定住農村社会から過密都市への歴史を歩み、今も閉鎖的なムラ社会の意識で生きる我々には想像しがたい。

移動式住居ゲルの中におじゃま。

中央アジアのユルトとほぼ同じつくり。
電気はソーラーで、パラボナアンテナでテレビも見れる。
水は井戸から汲んできたり街から運んできたりするそうだ。

モンゴル第2の都市ダルハン。

広大な大地から突如現れる街にしてはビッグタウンだが、一国のナンバー2にしてはションボリしてる。

土地はいくらでもあるだろうに、こういう集合住宅は旧共産圏の特徴。

文字はキリル文字。

肉食民族、モンゴル。

モンゴル人は耕さざる民。
農耕はおこなわない遊牧生活を営んできた。
現在は多少の農地はあるが、都市部のレストランで出てくる野菜や穀物は大半が輸入品と思われる。

肉は、ほぼヒツジ。

僕が最も多く発したモンゴル語は、шарсан мах (シャルサン・マハ)。
「シャルサン」は「炒める」。
「マハ」は「肉」。
写真なしメニューのレストランでも、この言葉だけおぼえておけば怖くない。

箸ではなく、フォークで食べる。

顔つきはまぎれもなくアジア人だが、文化はアジアよりはロシア寄り。
我々と似た顔をした近所の国、意外に知らないことが多い。

13世紀にチンギス・ハーンによって築き上げられたモンゴル帝国は、その後見る影もなく衰退し、19世紀には清の一部となっていた。
20世紀に清への反発から独立の気運が高まり、ロシアにサポートを求めるようになる。
中国が清から中華民国へ、ロシアがロシア帝国からソビエト連邦へと歴史が動く中、1924年にモンゴル人民共和国が成立。

この独立をサポートしたのがソ連であったため、モンゴルはソ連型社会主義を導入。
現在のモンゴルの文化にロシアが色濃く見られるのは、この時代の影響。
ソ連崩壊後の1992年、社会主義を撤廃して民主化し、モンゴル国と改称した。

ちなみに、中華民国はモンゴルの独立を承認しなかった。
大戦後に中華民国の蒋介石が毛沢東に敗れて台湾に逃げ込んで以来、台湾すなわち中華民国は、今もなおモンゴルを含む中国が自国領だと主張している。
ふだんは超親日の台湾人が、尖閣諸島問題になるとピリつきだすのは、尖閣諸島も中華民国の領土ということになっているからだ。

プリウス大国、モンゴル。
石投げりゃプリウスに当たるってぐらいのプリウス率。

かつては、モンゴル文字が使用されていた。

ウイグル文字から派生したもので、もっぱら縦書き。

社会主義時代に親ソ派政権によってキリル文字に統一されて、モンゴル文字は廃れた。
復興の動きもあるようだが、実用性に欠けるのだろう。
縦書き専用では、文字入力もできやしない。
現代では、書道やアートなど伝統文化の象徴として残されている。

宗教は、チベット仏教。
社会主義時代は宗教弾圧があったため、現在見られる寺院や仏像は民主化以降につくられたものだろうか。

長いことひとりで旅をしていると、自分がどんな人間だったか忘れる。
日本にいる時は、同じ日本人、同じ世代、同じ男性、という類似性の中で他者との差異が浮かび上がる。
その差異が自分の個性なのかな、そういったキャラを演じながら生きる。
旅をしている時は、「現地人という他者⇄日本人としての自分」という対比しかしなくなる。
人々は僕個人を「突如現れた自転車に乗った日本人」として見るため、僕の個性は「突如現れた自転車に乗った日本人」でしかない。

さらに途方に暮れるような無人地帯を走り続けている時なんかは、何もかもが削ぎ落とされ、人間であることすら忘れ、自分はただひたすらペダルをこぎ続ける何かの生命体、ぐらいにしか思えなくなる。
それぐらい、ぶっ壊してくれていい。

小さな田舎街で、食事を終えて自転車に戻ると、誰かが水とキャンディを差し入れてくれていた!

標高1350m、首都ウランバートル。

モンゴルの人口の43%が首都に集中している。

遊牧地から首都に移動してきた人々がゲルを設置して住みつく。
ゲルの中で石炭を燃やして暖をとる。
これが深刻な大気汚染の原因となっており、現在のウランバートルのPM2.5はWHO基準の80倍、深刻な健康被害をもたらしている。
他に類を見ないプリウス率も、大気汚染緩和のため。

ウランバートルはクラクション社会。
プリウスでオラついてる。
せっかくエンジン音のしない静かな車なのに、クラクションを鳴らしてしまったらすべてが崩壊する。

ドライブマナーもラフで、自分優先。
譲り合い精神はない。
局地的な人口集中のためいつも渋滞しているが、車間を詰めれば詰めるほど渋滞は悪化する。

街は英語の看板であふれ、若者は洒落込み、モンゴルのイメージとはかけ離れている。

社会主義時代と民主化以降とでモンゴルは別の国のように変わった、聞いた。

韓国の影響力が圧倒的。
いたるところに韓国系の店がある。
若者のファッションも韓国の影響を受けてるのかもしれない。
アジアでは「コンニチハ」と声をかけられることが多いが、ここでは「アンニョンハセヨ」と言われることの方が多い。

市街中心を歩いていた時。
「ジャポン!!!」と言って近づいてくる人が。

あー!!!

そう、ロシアでの道中にランチをごちそうしてくれたトラックドライバーだ!

たしかにかれらはモンゴルへ行くと言っていたし、僕もそうだったのだが。
まさかの偶然バッタリ、感動の再会。
僕らは暖かくハグして、力強く握手を交わした。

「ハラショー! またね!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?