むき出しのインドで死ぬほど見つめられ続ける日々
旅行者皆無、観光要素皆無、完全ローカル仕様のインドの田舎へ。
大都会でもなく大自然でもない、むき出しのインド感。
踏切。
誰も守ってねー。
しかし、待てど暮らせど列車など来ないし踏切も開かないので、結局僕もくぐった。
車はどうするんだろうな。
人々は、生まれて初めて外国人を見るかのような目で僕を見る。
終始、無言無表情、ただジッーと僕を凝視する。
踏切待機中も、かれらは1秒たりとも僕から目を離してくれない。
この車が走行できているのは奇跡じゃないだろうか?
奇跡の車に唖然とする僕。
ただの外国人旅行者を凝視する人々。
不思議な見つめ合いの時間。
踏切開いた。
すれ違いざまに皆、僕の自転車を触ってくる。
自転車に乗った少年につきまとわれることも多い。
猛ダッシュで僕を抜かし、その後振り返って、勝ち誇った表情で僕を見続ける。
その後わざとスピードを落として僕に先に行かせて、再び猛ダッシュで抜かし、また振り返って勝ち誇った表情で僕を見続ける。
これは世界の貧しい国で共通して見られる現象。
バイクも同様、必ず止まって振り返ってこっちを見続ける。
うっとうしいなあ。
英語でもヒンディー語でもなんでもいいから、せめて何らかの会話があればいいのだが、ただただ無言で見つめられ続ける。
気が休まらん。
木陰のベンチで小休憩。
すかさず囲まれる。
終始無言。
※後ろに写っているのはトラックです。
バナナを買おうと自転車を停めただけで、囲まれる。
そんな怖い顔で睨みつけたら、ケンカを売ってるとみなされますよ。
買ったバナナをその場で食べてたら、群がってきた人も勝手に僕のバナナを食べだした。
数分でいいから、誰にも見られないところで少し休みたい。
と、座ってほんの数十秒で顔を上げると、やっぱりいる。
微動だにしない。
増える。
なんて目つきの悪いやつらだ。
増える。
街に着き、宿の前に自転車を停める。
レセプションに行って宿泊可能かどうかの確認だけして、すぐに戻る。
このわずかな時間にすでに7~8人が僕の自転車をとり囲み、触りまくっている。
インド人の行動はいつも同じ。
ブレーキをニギニギして、ギアをガチャガチャと変え、ベルをチリンチリン鳴らし、タイヤをつかんで空気圧をたしかめる。
「触んじゃねー!!!」
イライラが募っていたあまり、怒鳴ってしまった。
かれらは逆ギレすることもなく、かといって申し訳なさそうな表情をするわけでもない。
なぜ僕が怒っているのかぐらいは理解していると思うが、特に罪悪感などもなさそうだ。
そういえば、どこかで駐輪したわずかなスキに、若いカップルがやってきて、女が僕の自転車にまたがってポーズを決め、男がその写真を撮っていた、なんてこともあった。
その時も怒鳴ってしまった気がする。
こういうことで怒る僕は間違っているだろうか。
別にギアを変えられたって直せばいいだけだし、ベルを鳴らされたって減るもんじゃないし、またがったところで実害はない。
何も壊していないし、盗んでもいないし、汚してもいない。
自分の国の常識には反することだけど、かれらは「悪いこと」をしたか?
と、プンプン怒りながらももうひとりの自分が問いかけてくる。
いったん落ち着こう。
道端で休憩してた時。
この子たちは僕のことが怖くて先に進めなかったようで、遠くから何やら叫んで威嚇してきた。
たぶん、「あっち行けー!」と僕を追い払いたかったのだと思う。
手なづけてやろうと思って、笑顔で手を降りながら立ち上がった瞬間、蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。
少し様子をうかがってみたが、あきらかに怯えている。
僕はここでは宇宙人のようだ。
ビヨーン!
インド人はウシもブタも食べない。
ウシは神聖なる存在ゆえに食べず、ブタは汚れた存在ゆえに食べない。
アフリカを彷彿させるような原始農村。
未開の地へ迷い込んだかのよう。
ネパールとの国境の街。
国境目前にして大渋滞。
自転車も進めない。
BGMは、言うまでもなくクラクションの嵐。
クラクションが鳴らない静寂なんて1秒たりともありはしない。
あまりケンカをしないインド人だが、この時はあちこちでケンカが起きていた。
接触もあり、リクシャーが車に押されてホイールがひん曲がって動けなくなったりしていた。
最後の最後で、「インド」が凝縮されたようなエッセンスを味わった。
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