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孤高の大陸オーストラリアの大自然:西部編
グシャッ・・・
聞いたことない音。
体が垂直に落ちる。
この日は朝から調子がおかしかった。
なんだか自転車がグニャグニャする。
奇妙な感触、何だろう?
そして、グシャッ・・・
なんだなんだ、何が起きた!?
グシャッってなんだよ?
自転車を見てみると、、、
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なんと、フレーム崩壊。
ぶつけたおぼえはない。
金属疲労か。
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原因は、
・過積載
・アルミフレームだった
・登り坂で立ちこぎしてた
自転車トラブルは日常茶飯事、パーツを交換すればたいていのことは解決できるが、フレームが崩壊してしまっては、もうどうにもならない。
特にフレームの中心部とも言えるボトムブラケット周辺となると、溶接じゃ効かない。
このTREKアルミフレームMTB、50kgの荷物と70kgの僕を乗せて3万4669kmでお陀仏。
終了。
お疲れさまでした。
これ以来、フレーム素材はアルミはやめてクロモリ一択。
そして、立ちこぎは一切やめた。
ただでさえ、大荷物を積んで悪路を走るだけでも自転車にダメージを与えているというのに、立ちこぎなんかしたら、フレームも他のパーツも寿命を縮めるだけだ。
さて、ここは西オーストラリア州の砂漠のど真ん中。
日本の7倍の面積に人口260万人、人口密度は1人/k㎡。
人口の90%以上が州都パースに集中しており、その他の大部分は無人の砂漠。
ロードハウスと呼ばれるサービスエリアの間隔は、この界隈では150~300km。
フレームが崩壊してしまうと、走行どころか押して歩くこともできない。
気温は40℃超。
歩いたとしても、あっという間に水と食料が尽きて死ぬ。
やむをえず、さすがにこの時ばかりはヒッチした。
通行する車は1時間に数台だが、一発で止まってくれた。
助けてくれたのは、キャンピングカーで旅行中の夫婦。
日本では考えにくいことだが、アウトドア大好きな欧米文化圏では、退職金で巨大キャンピングカーを購入し、夫婦でキャンプしながらロードトリップするのが老後のすごし方のひとつの定番となっている。
自転車と荷物を乗せて、街まで送ってもらった。
とても親切にしてもらい、夕食もごちそうになった。
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ちなみに、「キャンピングカー」は和製英語なので通じない。
英語ではCamper、オーストラリアならCaravan、北米ならRVと呼ぶのが一般的。
「キャンプ場」は、オーストラリアならCaravan Park、北米ならRV Park。
これも日本では考えにくいことだが、欧米文化圏では大半の街中、時に大都市でもちゃんとキャンプ場がある。
物価の高い欧米圏では、随所にキャンプ場があり、ホステルの敷地内にもテントスペースがあったりもするから助かる。
ブルームという街の自転車屋で、安いマウンテンバイクを購入。
今まで使用していたホイールやその他まだ継続させたいパーツを移行して、新たな相棒として旅続行。
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ブルームは、日本人ゆかりの地。
かつて真珠採集に携わった日本人が多く住み、日本人街もあった。
日本語でそのまま「Shinu Matsuri」が毎年開催されている。
今も日本人がとても多く、マクドナルドに入ったら日本人の店員から「いらっしゃいませ」と言われた。
第二次大戦中は、米軍が駐留していたため日本軍に空襲され、犠牲者を出した。
ブルームのケーブルビーチ。
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ちょうどこの時、真珠祭りの開催直前で、ケーブルビーチで「月の階段」という現象が見られる時期で、さらに月食も見られる、ということで街も宿も大量の日本人でごった返していた。
ただでさえ日本人が多いオーストラリア、特にこの時の僕は、集団化した若い日本人たちとの間に大きな壁を感じて居心地悪く、ほぼ誰とも話さず、自転車の調整だけに専念して、祭りも何も見ずにここを去った。
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シャークベイ。
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世界最古の生物の痕跡、ストロマトライト。
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37億年前からシアノバクテリアが海水中の砂塵を固めたり死骸が堆積してできた構造物。
当時の大気は二酸化炭素が多かったが、シアノバクテリアが光合成を行ったことによって酸素が増え、好気性の生物が進化する契機となった。
言ってみれば、我々人類も含め、酸素を吸う生物が誕生したのはこのストロマトライトのおかげか。
世界のストロマトライトはほぼ消滅したが、ここはこの湾の特殊な環境によって現存している。
現在も成長中で、大気に酸素を放出し続けている。
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満潮時のストロマトライト。
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シェルビーチ。
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これ全部貝殻。
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シェルビーチは全長100km、深いところだと貝殻が10m堆積しているという。
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シャークベイは、世界有数の海草群生地。
この海草が海流を制限している影響で、シャークベイの塩分濃度は通常の倍にもなっている。
この塩分濃度に適応したストロマトライトや特定の貝が、天敵のいない環境で爆発的に増殖してきた。
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ジュゴン。
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モンキーマイアでは、野生のイルカの餌付けがおこなわれている。
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Thorny Devil。
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和名はモロクトカゲ。
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戦闘タイプと思いきや、おとなしくてかわいいやつ。
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巨大ナナフシ。
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モモイロインコ。
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アフリカやマダガスカルで見たバオバブ、西オーストラリアにも生えている。
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太古の昔はアフリカと陸続きであったことを思わせる。
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ここではBoabと呼ばれる。
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ワイルドフラワーが咲き乱れる美しい季節。
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植物もいちいちユニーク。
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ウェーブロック。
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州都パース。
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16世紀、オランダ人がヨーロッパ人として最初にオーストラリアに到達。
その後、スペイン人による命名でラテン語で「南方の地」という意味でオーストラリアと呼ばれるようになった。
ちなみに、オーストリアはドイツ語で「東方の国」という意味。
18世紀にスコットランド人のジェームズ・クックが来てイギリス領として植民地化し、しばらくは流刑地として使われた。
1901年、オーストラリア連邦として独立。
人口の少なさ、労働力の少なさ、孤立した立地で弱小化していくことを懸念して、世界中から移民を取り入れて多民族国家となっていった。
イギリス人が先住民を駆逐して新たな国家を立ち上げ、労働力として移民を寄せ集めた多民族国家。
そういう意味ではアメリカやカナダと同じだ。
現在、オーストラリアの1人あたりGDPは世界9位。
非常に高い生活水準、物価も高く、文句なしの先進国。
それでもオーストラリアがアメリカほど強大な国になれなかったのは、厳しい気候で大半の土地が居住にも農業にも適さないからか。
カナダにも同じことが言える。
辺境の大都市パースも、実に多種多様な人種民族が混在している。
オーストラリアでは、国民の2割が外国出身で、3割が両親のいずれかが外国出身だという。
短パンにサングラスのポリス、自由でいいな。
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都市部には多種多様なレストランがあるが、全体としてはイギリスの食文化がベースになっている。
何にしても物価が高すぎるので、長期旅行者はスーパーで安い食材を見つけて自炊するのが基本。
オージーならではの食もあり、ミートパイなんかはおいしいけど、やはり安くはない。
有名なのが、ベジマイト。
パンに塗るペースト状の発酵食品で、生ゴミのような強烈な腐臭を放つ。
慣れない外国人にはキツすぎるのをオージーたちも知っていて、ふざけて僕にベジマイトを近づけてきたりする。
でもこれが一家に必ず常備されているぐらいポピュラーだというのだから、不思議。
あとは、ジンジャークッキーとかいう、純粋にショウガの味しかしない謎のクッキーとか。
走行中に食べるのはマズイ食パンぐらいしかなく、なんとも乏しい食生活。
祖国の味がたまらなく恋しい。
物価は高いけど、アジアンマーケットで衝動買いしてしまった。
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パースの港にイルカ現る。
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パースは、世界で最も孤立した都市。
オーストラリアを東西にまっぷたつに割った時、西側で大都市と呼べるのはパースしかない。
一番近い都市アデレードまでが2700km、シドニーなら4000km。
パースから他のどこかへ行くなら、とりあえず飛行機に乗らなきゃ始まらない、それぐらい隔絶されている。
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オージーイングリッシュも、相当にクセがある。
慣れてないと、ごく基本的な単語でもわからない。
特徴的なのは、「エイ」の発音が「アイ」になること。
「name」は「ナイム」、「today」は「トゥダイ」、「8」は「アイト」。
走行中、ドライバーに呼び止められて談話していたら、「カイク食べるか?」と聞かれた。
はて、どんな食べ物かと待っていたら、ケーキを差し出された。
「cake」=「ケイク」を「カイク」と発音するのだ。
他の欧米諸国と同じく、オーストラリアも幹線道路が高速道路になってしまうので、自転車は複雑なローカルロードを見つけなければならず、都市圏では道に迷うことが多い。
その辺の人に道を尋ねたら、「ハワイ」という単語が出てきた。
道を聞いているのになぜハワイが出てくるのか、とんとわからなかったが、どうやら「highway」を「ハイワイ」と発音しているようで、早口で言われると「ハワイ」に聞こえてしまうのだ。
それから、「mosquito」を「mossie」と呼ぶなど、短縮語も多い。
オーストラリアはイギリスベースの文化だが、辺境の地で食も言語も独自の変化を遂げているようだ。
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