孑孑日記⑲ いつか書く陽水論のための覚書

『ダンスはうまく踊れない』の歌詞に、こんなのがある。

今夜ひとりでダンスをうまく踊りたい
丸いテーブルの周りを

(歌詞は曲から直接聞きとった)

 また、『Just Fit』のなかの一節。

メイン道路のはずれで
女がトップモードの
ドレスでタップダンス踊ってた

(同じく曲から直接聞きとった)

 ここで気になっているのが、いずれの曲でも踊り手がひとりであること。もっとも、『ダンスはうまく踊れない』では「ひとりきりではダンスはうまく踊れない」というフレーズがあるが、誰かと踊ることを希求していても、ひとりなのは一緒である。
 覚書なのでこれ以上どうこうはしないつもりだが、印象だけでいえば、『ダンスのチャンス』もやはり誰かと一緒に踊ることを自明視していないように思われる。一般的には、音楽で「踊る」とか「ダンス」とか歌えば、「みんなで」や「一緒に」がつきものだという偏見をもっているから、陽水のひとりきり(あるいはふたりぼっちで)踊る歌は、何だか特異なものに僕の耳には聞こえる。しかし反例がいくつも出てきそうだから、まだ結論は出さないし出せない。いちどデータベース化して、コーパスみたいにしてみるのがいいかもしれない。

(2023.8.11)

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