日記137 讃えよ重音テトを

 ファンメイドの文化として、初音ミクをはじめとするボーカロイドたちがあげられるケースは少なくない。姿、年齢、身長体重と歌声のみを与えられた歌声合成ソフトウェアが、さまざまにイメージを投影され、それがファンアート、3D及び手描きアニメーション、その他2次創作の連鎖で人格を付与され今にいたるというのはなかなか類を見ない(事実思いつかない)。
 しかし、初音ミクこそがそうした文化を全面的に背負うかといわれると、必ずしもそうではないと思う。むしろ、それを象徴するのは重音テトだ、と僕は思うのである。
 知っての通り、重音テトは2008年3月30日に立てられた、「架空のボーカロイド作ってニコ厨つろうぜww」の一連のスレッドで作られたキャラクターである。ここで設定が作られたのみならず、のちに声優を用意し、UTAUを利用して音源も作られた。その後1週間で歌動画公開にまでこぎつけていて、この手の込みようは国際信州学院大学を彷彿とさせるが、まあそれはそれとして、これをVIPPERたちが、ファンとは言いがたいにしても、アマチュアサイドで作り上げたのは驚異といってもいいのではないだろうか? しかも、商業的な目論見もなく、むしろそれへのカウンターとして重音テトは製作されたのである。いまでは逆に取り込まれてしまったものの、当初はビジネスとは正反対のところから生まれ、成長したのだ。
 ファンメイドの文化の代表例であるボーカロイドの界隈において、彼女のような純粋にアマチュアの側から作られ、そのシーン内で存在感をもつにいたったキャラクターが登場したことは、実は相当に目を瞠るべきことなのではないたろうか?

(2024.3.10)

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