日記136 文学研究はどう役に立つのか

 はじめに断っておくけれども、僕は学部卒で、ぜんぜん専門性の畑に足を踏み入れられなかった側の人間である。だから、どうやっても素人の所感以上にならないことは承知している。それでも、言ってみたいからこうしてnote記事として表現するのである。
 J. カラー『文学理論』(岩波書店)では、文学研究には主にふたつの分野があると述べられている。ひとつは詩学、どのようにしてその作品がその効用を生みだしているかを記述するものだ。いかにして驚異や絶望、感動を呼び起こし、その表現に成功しているかを捉えることが重要な目的となる。そしてもうひとつが解釈学で、その作品はいかに解釈されうるかを考える分野である。最近のトレンドはこちらである。批評理論は主にこっちなのではなかろうか。
 それでこれらがどう役に立っているのかだが、僕は解釈の方法の開発だと思っている。他の人文系の学問も同じことだが、現実にある現象やテクストをどのように解釈し、現実に生活するわれらが受け取るようになれるのかの可能性がを拡大することが、文学研究のもつ効用だ。
 哲学の話になるが(しかもゆる哲学ラジオの内容の孫引き)、「主観と客観」は西洋哲学の歴史的伝統だという。それがグローバルに膾炙して、思考の様式として世界システムに君臨している。これはもはや意識されないが、ひとたび成功するれば誰も気づかないレベルで浸透するのである。
 このような、世界をどう捉え、分析するかの可能性を、文学研究は行っているのではないか。間接的ではあるが、これがいちばん重要だと思う。

(2024.3.2)

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