時の重み

休職してから半年経ったころ、私はゲームをはじめた。ゲームというか小説のような感じで話を読み進めていくものだ。いわゆる乙女ゲームである。

実は、乙女ゲームにかなり感謝している。
私はうつ病と適応障害になっても仕事を続け(病院に行けば病名がつくことはなんとなく分かっていたが、人員不足で休めないと思っていた)、無理した挙げ句に顔に痺れが起きた。麻痺したら?もう笑えなくなったら…?自分の表情のなかで一番笑顔が好きなのに、それが奪われたら…?急に現実味が増して、脳神経科に行った。その一ヶ月後、休職開始。

はじめは本当に起き上がれなかった。頭痛、ふらつき、めまい、いろんなものがごちゃ混ぜに降ってきてトイレに行くのが精一杯。生きることが精一杯だった。ずっと布団にいた。スマホで暇潰しをしないととても1日が長くてやってられないが、スマホを見すぎると頭痛になる。具合が悪いまま時は過ぎていく。

途中、辛いことがあった。弱ってるところに岩石が飛んできたものだからたまったもんじゃない。メンタルに大ケガを負った。せっかく笑顔が戻ってきたのに、ドン底へ落ちた。

前置きが長くなった。ショックから時間が経って少し傷が癒えた頃、私はたまたま偶然気まぐれに乙女ゲームをDLした。これが運命の出会いだった。

主人公軸で進んでいく物語。感情移入がすんなりできた。誰かと親しくなる喜び、愛情、戦いの恐怖…いろんなものが描かれていた。気づけば夢中になっていた。BGMに感動してピアノでカバーもした。心が動いたのである。

温かい感情で心が満たされて、「そうだった、人を好きになるってこうだよね」と思い出したり、戦いの恐ろしさをストーリーと共に痛感したり。心に温度が戻って、温かくなったのを覚えている。乙女ゲームは私のメンタルの恩人なのだ。

最近は別のゲームにはまりそればかりやっていたが、乙女ゲームを再開しようと思う。また感情が薄れてきたからだ。今は虚しさから解放されたい。太ること、家事に波があること、やりたかったことをできていないこと。フラストレーションはいくつもある。考えたくないことを思い出しては辛くなる。そんな時間を有意義に変えてくれるかもしれない。少なくとも、YouTubeで同じ動画を何度も繰り返すよりはメンタルに良いはすだ。

休職してから丸2年以上経った。2年で何をしただろう?治療中なんだからなにもしなくて良いのだと思うが、心のどこかで何か身のあることをしないと勿体ない、浪費していると思ってしまう。2年間、資格の勉強もできなかった。活字を私のメンタルが拒否したのである。未だに本は読めない。休んで良いと周りから言われるけれど、時の重みに堪えきれず焦ってしまう。だって2年だよ?今2年数ヶ月だから、順調に行っても社会復帰まで3年はかかるじゃん。3年て。3年って…!怖いよもう。

最後に何の乙女ゲームかだけご紹介しよう。
CYBIRDのイケメンシリーズというラインナップだ。私が救われたのは、「イケメン戦国」「イケメンヴァンパイア」「イケメン源氏伝」の3つである。戦国はユーモアもあって面白い。元気がなくて2次元のイケメンが好きな方にはとてもおすすめである。

生活がうまく行かない あさひ野さゆみ

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