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『Steelrising』レビュー

Steelrising (スチールライジング)』は、19世紀のフランス王国を舞台とした、三人称視点(TPS)の3DアクションRPGだ。

史実におけるフランス革命期をベースとしているが、あくまで架空のストーリーが展開する。登場人物たちも歴史上よく知られた面々だが、その役割も架空の筋書きをなぞったものだ。

主人公は自由意志を持つ女性型の自動人形<オートマタ>アイギス。王妃マリー・アントワネットの護衛の任に就いていた彼女は、王太子の不審死を究明する指示を受けて出立するが、やがて暴君と化したルイ16世を止めるべく行動していくことになる。

開発:Spiders
販売:Nacon
配信日:2022年12月15日 / 日本語サポート有
Steamにも同レビューを公開中:Link

ゲームシステム

本作はいわゆるソウルライクと呼ばれるゲームデザインだ。

プレイヤースキル重視の高難易度な戦闘バランス、複数の箱庭型エリアを巡っての探索、武器・ステータス強化や貨幣代わりの「アニマエッセンス」、休息することで復活する敵や補充される回復薬など基本が押さえられている。

アイギスの機動性そのものが高いこともあり、戦闘アクションはフロム・ソフトウェアの『Bloodborne』に近い印象がある。

ソウルライクはゲーム側の調整が難しいジャンルで、雑な作品も多いのだが、本作は比較的バランスよく設計されていてプレイフィールは良い方だろう。とりわけ難易度的な部分においては、主観では本家よりも易しいと思える程度だ。

しかしそれでも苦手なプレイヤー向けに『アシストモード』というオプションもあり、被ダメージ軽減やスタミナ回復速度などを任意で調整可能。雰囲気だけは楽しみたいライト層も手軽に手を出せるのは、素直に本作のメリットとなっている。

クラスとビルド

最初に4つのクラスから選択する。『護衛』が防御タイプ、『兵士』が筋力タイプ、『踊り子』はスタミナ・スタン(クリティカル)・カウンタータイプ、『錬金術師』がデバフ付与タイプといったところだ。

それぞれ初期ステータスボーナスと初期武器が異なり、そのまま特化したステータスを伸ばしていくのが正規ルート。耐久はどのビルドでも有用だが、それ以外の不要なステータスは一切振らなくても良いので選択は慎重に。

なお、武器や防具は「後から入手するものほど強い」のではなく「ビルドに合ったものを使う」のだが、同じ武器種でも備わっている特殊技が「カウンター(パリィ)」や「刃嵐(スタン)」、「盾」などの違いがある。

武器は強化可能だが、強化素材の入手の関係で無理なく最大強化(Lv5)できるのは3~4つ程度まで。ただしLv3までならば容易に強化できるので、扱いやすいものを見極めるといいだろう。

キャラクターカスタマイズの注意点

ゲーム開始時に主人公の見た目を、一部カスタマイズすることができる。

ネタバレとなるため詳細は伏せるが、このうち「顔の皮膚色」がゲーム内のキーキャラクター "アテナイス" の肌色にそのまま影響する。

彼女の両親はフランス系白人で、もちろん実子だ。開発元はおそらく「ゲームの演出のひとつ」としてこの仕組みを取り入れたのだろうが、当時の上流階級に異人種はまず存在しない。

プレイヤーの主観によるところだが、史実ベースの本作において中途半端な描写が気になるということであれば、アイギスのカスタマイズは白人にしておいた方が良いだろう。

取り返しのつかない要素

正確には「取り返しがつくのは終盤」なのだが、最初のステージで中ボスを倒した後、真っ直ぐ突き当りまで進んだ場所に頭防具『ミュスカダンの二角帽子』、滑り降りる坂の手前に武器『報復の鉤爪』、坂を下った後に武器『フォルシオンとサーベル』を入手することができる。

武器はそれぞれ「敏捷+カウンター特化ビルド」や「敏捷+スタン/クリティカル特化ビルド」において最終装備候補となり、頭防具はどのビルドでも使える最終装備候補だ。

これらを取り逃すと再び戻れるのは終盤で、その頃には武器は最終段階まで強化できているのが普通。戻るのが難しいのはこのエリアぐらいなので、特にここだけは十分に注意して探索しよう。

日本語サポート

音声は英語(フルボイス)・UI/テキストが日本語に対応。

登場人物同士の会話シーンも多いが、テキストは自然で読みやすく品質は良い印象だ。まれに違和感のある表現もあるものの許容範囲だろう。

頻繁に「慣用句」や「常套句」について英語ボイスにフランス語を混ぜる演出をしてくる。テキストもそれに合わせてフランス語の文句に括弧書きで訳文を載せているのだが、当時でもそんな喋り方はしないので、特に英語やフランス語を母語する人にとっては違和感を感じるはずだ。いっそ全てフランス語ボイスでも良かったのではないだろうか。

モジュールの名称と効果の日本語訳に一部問題がある。 例えば "拘束モジュール(Stun Module) "の訳文は「スタンを2倍に増加」とあるが、本来の効果は「スタンの持続時間を2倍に増加」だ。また "スタンモジュール(Immobilisation Module)" は「スタンを増加させる」ではなく「スタン値を増加させる」なので注意しよう。

筆者はスタンビルドなので上記のモジュールしか確認していないが、おそらく他にもあるだろう。おやっと思ったら英語に切り替えて説明を読んでみることをおすすめする。

気になるポイント

パリ市内など入り組んでいて迷いやすく、ショートカットも少なくはないが、場所によっては慎重に観察しないと先に進む道が見つからない場合がある。マップはあるが大判サイズで細部は確認できない。

序盤で入手できる『コンパス』を使えば簡易的に目的地を示してくれるが、ナビしてくれるわけではないので、結局のところルートは自力で開拓する必要があるのだ。

ポジティブに考えれば探索しがいはあるのだが、ライトプレイヤーを意識するのであれば、詳細マップを実装しても良かったのではないだろうか。

総評

老舗の中堅スタジオらしく、手堅い完成度のソウルライクだ。

ライトプレイヤーを意識したオプションも用意されており、ソウルライクならぬソウルライトと言うべき、ひとつの選択肢を示したように思える。

ベースとなった史実を知らないと、ややストーリー展開を理解しにくい部分はあるものの、門戸を広げたという意味で多くのプレイヤーにとって楽しめる作品ではないだろうか。

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