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ABC理論

ABC理論とは「悩み誘発的な出来事Activating event」「出来事の受けとり方・ 考え方・見方,または固定観念,偏見(ビリーフ Belief)」「結果(悩み・アン ハッピィーな感情 Consequence)」の3つをいう。

この考え方をABC理論といいます。 アメリカの臨床心理学者であるアルバート・エリス(AlvertEllis)が1955年に提唱しました。

Aが出来事、【Activating events】
Bが認知・思考・考え方【Belief】
C が結論【Consequences】結果的に起こる感情・行動だとするとAの出来事がC の感情を引き起こすのではなくBの認知の仕方を修正することによりCの感情が変わるという理論である。 つまり、認知の仕方が合理的ではない考えや事実とは反する思い込みになっているものを修正することによって不愉快な感情を改善できる。

たとえば、
「数学のテストで20点を取ってしまった(A)」→「このままではどこの学校も受からないに違いない(B/イラショナル・ビリーフ/過度な一般化)」→「自分がダメな人間だと落ち込む(C)」となろうとしているところに、Bの後に、自分自身で「でも英語では80点だった」などのように具体的で論理的な反論を入れ込むのです。

ある日、太郎さんと花子さんは自分達のアイデアを何とか形にし、意気揚々として上司にプレゼンを行いました。その結果、上司からいくつかの指摘を受け、改めて提案をしてくるようにと言われました。

会議を終えた2人の感情は・・・・

太郎さん:また指摘された・・やっぱり新しいアイデアを形にするなんて自分には無理だったんだ・・。もうこの仕事を続けることはできない、もう辞めたい。。。

花子さん:自分達では考えもつかないような指摘をもらえた。このアイデアにも、自分達にも期待してもらえてるから、次はさらに良いものになるように、頑張ろう!!

太郎さんと花子さんは同じ出来事に対して、全く異なる感情を持ちました。太郎さんにとってそれはネガティブな出来事となり、花子さんにとってそれはポジティブな出来事となりました。なぜでしょう?

それは、「出来事」と「感情」の間には「思考」があるからと考えられています。

冒頭の例でいえば、上司から指摘されたことを、太郎さんは「自分がダメだからだ」と考え、花子さんは「自分は期待されている」と考えたことで、全く異なる結果(感情)となりました。

ABC理論で一番大事なのは、B:ビリーフです。全く同じ出来事を経験しても、ある人は激しくへこみ、ある人は喜ぶといった違いは個人の「ビリーフ」からきている、と考えられています。 ここで、「ビリーフ」を詳しく見ていきましょう。

ビリーフ

自分や人生を制限したり、自分を突き動かしたりする考えのこと
(性格特有の考えや思い込み)

私たちの生き方を形づくる初期設定といえるような「基本的なビリーフ」は、育つ環境などからも影響を受け、15歳くらいまでに完成するといわれています。
また、成長して社会に出てからも、周囲の人々の考えや社会的な常識とよばれる考えはどんどん私たちの中に入ってきます。
そして、周りの人に認めてもらえるように、社会に受け入れてもらえるように、その考えに従って無意識に行動するようになります。

例えば、「どんな時も頑張らなければならない」というビリーフがある場合、身体がどんなに辛くても、深夜まで残業してしまう、ということがあるかもしれません。

ビリーフを持つこと自体は、現実的な成功を手に入れることができたり、自分を鼓舞したりすることにもつながるので、悪いことではありません。しかし、その時は役にたつものだったのかもしれませんが、自身の成長や状況変化に伴って合わなくなることもあります。

ビリーフには、耐用年数があるのです。

ABC理論では、自分を苦しめる、耐用年数を過ぎたビリーフを適切なものに変える働きかけをしていくことで、出来事の結果(感情や行動)を変えていくことができるとしています。
自分を苦しめるビリーフには、以下のようなものがあります。

自分を苦しめる
ビリーフ

・一般化のしすぎ また、前と同じ 
 だ。いつも失敗してばかり。
・自分への関連づけ
 こんなことが起きたのは私の責任 
 だ。
・根拠のない推論
 あの人は私のことを困った人間だ 
 と思っている。
・全か無か思考
 何でも完璧にできないといけな 
 い。失敗したら全て台無し。
・すべき思考
 ・・・すべきだ。・・・すべきで 
 なかった。
・過大評価と過小評価
 あの人は何でもできる。それに比
 べて私は何もできない。

それでは、自分を苦しめるビリーフを適切なものに変える(視点を変える/新しい考えを持つ)アプローチを見ていきましょう。

【1.感情に注目する】

まず、自分自身の感情に気づきましょう。
社会にでると、感情的になるのはマイナスと考えられ、理性的であることが求められることが多く、いつのまにか自分の感情を押さえつけて、感情を味わいづらくなっているかもしれません。

不安、悲しい、憂鬱、腹立たしい、情けない、などで表現されるものが感情です。 難しく考えず、直感的なもので構いません。上手く言葉にできなくても、不快に感じる、モヤモヤする、イライラするなどの感覚がヒントになります。 冒頭の例でいえば、太郎さんは、「辛い・苦しい・情けない」という感情かもしれません。

【2.出来事を書き出す】

次に、その感情を引き起こした出来事を、できるだけ具体的に書き出してみましょう。 映画のワンシーンのように、特定の時間の出来事を切り取るイメージです。前後の物語の繋がりは必要ありません。感情は入れずに、客観的事実・出来事だけを書き出します。

冒頭の例でいえば、「〇月△日11時~11時半@X会議室 自分(太郎さん)と花子さんで、Y課長に●●についてのプレゼンを実施。プレゼンの途中で2回、Y課長から質問があった、1回目は花子さんが回答、2回目は自分が回答した。プレゼンの終了後、質問点について再度検討し、来週再提案するように言われた」となります。

【3.頭に自然と思い浮かんだ考え(ビリーフ)を書き出す 】

それでは、いよいよビリーフを見ていきましょう。
A(出来事)とC(感情)の間にある、「頭に自然と思い浮かんだ考え」を書き出していきます。その出来事が起こった時に、頭に浮かんだイメージで構いません。

疑問形は言い切りの形に変えてみてください。例えば、「どうして自分ばかり仕事をおしつけられるのか?」であれば、「自分ばかりが仕事をおしつけられる」のような形です。

冒頭の例でいえば、太郎さんには「プレゼンはいつも失敗する、自分はダメだ」「質問が出ないような完璧なプレゼンをしなければならない」というような自分を苦しめるビリーフがあるかもしれません。

【4.視点を変える/新しい考えを持つ】

書き出したビリーフを改めて見返してみましょう。「頭に自然と浮かんだ考え」に、”「●●でなければならない」が多い”など、共通の特徴はありますか?  また、別の受け取り方ができないか、例えば以下のように自分に問いかけてみましょう。

自分への問いかけ

第3者の視点から
・ほかの人が同じ立場にいたら、どんなアドバイスをしますか?
・信頼する人に話したら、どうアドバイスしてくれるでしょうか?
経験を踏まえて
・これまでに同じ経験をした時にどう考えたら楽になりましたか?
・以前の経験から学んだことで役に立ちそうなことは?
もう一度冷静に
・見逃していることはないでしょうか?
・自分の力だけではどうしようもない事について、自分を責めていませんか?

冒頭の例でいえば、太郎さんは「エルダーに相談したら”質問にすぐその場で応えられなくても次にプレゼンするときにそれを踏まえた提案にすればいい”とアドバイスしてくれるかもしれない」「自分がプレゼンを受ける立場の時は、興味がある内容でなければ質問はしない」などの考えに気づくかもしれません。

こう考えると、「課長はプレゼンに興味を持ったからこそ質問してくれた。来週のプレゼンではもっと興味を持ってもらえる内容にブラッシュアップしよう」と、ワクワクする感情とともに次回のプレゼンに向けて頑張ることができそうです。このようなステップで、自分を苦しめる「ビリーフ」を適切なものに変えることで、新しい結論(感情)を生み出し、問題や悩みの解決をすることができるようになります。




【参考サイト】
厚生労働省ホームページ「こころの健康」

【参考文献】
「アドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート」/上谷実礼 著 メディカ出版

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