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またたき・ひつじ

またたき

おふろにしずんだのなら なあんにもみえない
くぐもった音と やわらかい水に ひたされている
すきまから 溶け出て 滲んで もういちど うけいれる

目をつむっているあいだ
ほかのすべては 存在しているのか わからない

うまれたて みたいなわたし


まどは額縁のようにしんとして
むこうがわにちらばった好奇心は
期待にみちた顔で こちらをのぞいている

胸がずきずきして
あさくなる 朝

ねむったら まっさらになった
おなじだけの おなじ 朝

少年の纏う ひかりの染み込んだ橙 と
そこからはみだした水色 みたいな空


すべて うそで ほんとうなら
あした もういちどうまれる わたし


「うまれたて みたいなあなた」

ほんとうのうまれたてのとき
わたしたち そうおもっただろうか


ひつじ

いい夢 みてね。
いつかいい夢みたときに いい夢とまったくそろって わたしのこと おもいだしてほしい。祈りというか 誓いというか 呪い なのかもしれなかった わたしのことばのような すみに落ちているがらくた 察しのいいきみは 気がつかないでね。


わたしのすべては きみの数学のはなし
因数分解でとびだした ぐらぐらひかるきみ
アルファベットにかくれたほんとうのきみ

きみも ねむったらわすれてしまいますか


ぐらぐらひかるきみは 星とおなじだけ ひかりだった
かんがえてつたわる距離だったのなら かんがえるよりも先に とびこみたかった
わたし コンクリートにぶつかって ひかっているよ
あたまのなか きみのコピーペーストの星で いっぱいにひかっている

その星のあいだ 滲んだわたし
自由に捨てられたならよかった
清潔なきみだけ ひからせていたのなら
いつかすくってくれたのですか


夢なんか見ないでねむりたい というきみに
夢で会おうよ なんて

いい夢 みてね。

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