【エッセイ】チャスについて

 祖母は、牧柵のことを「チャス」と呼んでいた。
 なぜ家の中で祖母だけがその言葉を使うのか、当時は深く考えたこともなかったが、最近ふとそのことを思い出した。
 牧柵のことをアイヌ語で「チャシ」というらしい。それを何かで知って、ピンときた。「チャス」とは「チャシ」のことではないか。
 確かに、90年ほど前の祖母の実家の近くには多くのアイヌが暮らしていたと聞いたことがあった。アイヌ語と意識せずに、日々の生活のなかで使うようになった言葉なのだろう。
 今では「チャシ」と表記するが、実際の発音は「チャス」に近かったのかもしれない。
 アイヌ語が急に身近に迫ってきたような気がした。
 それと気づかずに生活の中で触れているアイヌ語が他にもないものかと、近頃は祖父母の古い話をしきりに思い出している。

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