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【エッセイ】墓場案件

 人には多かれ少なかれ墓場まで持っていくたぐいの隠し事があるはずだ。
 私には2つある。

 ひとつめは、私だけが知っている。
 自分にはそれほど関わりがないことなので秘密にしなくてもいい気がするが、暴くと面倒ごとになりそうなので黙っている。
 そのうち忘れてしまいそうだ。忘れてしまったほうがいいのだ。きっと時間が解決してくれるだろう。

 ふたつめは少々厄介だ。
 自分以外にも、秘密を共有する者がいる。
 はじめは、いつか笑い話になって消えていくような出来事だと思っていた。しかしある時、その人はこの秘密を墓場まで持っていく気なのだと知った。
 それは個人的な決心であって、隠し事の共有を求められたわけではなかったが、こちらが暴いては裏切りになろう。
 自分の秘密が自分たちの秘密になった。その分軽くなった気もするし、余計に膨れ上がった気もする。

 さて、人びとが墓場に持ち込んだ秘密はその後どうなるのか。
 持ち主がいなくなったあとも、墓場の隅のほうにちりあくたのごとく溜まっているのだろうか。それとも、墓場に捨て置くこともできずみんなあの世まで背負っていくのか。人間が口をつぐんだところで、閻魔さまにはお見通しだろう。

 ときどき思うことがある。隠しているつもりなのは自分だけで、案外その秘密は閻魔さまどころかもうみんなが知っていたりして。

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