【エッセイ】寝床
馬のエサ。
切り草(一番牧草を細かく切ったもの)。その上に、燕麦、穀物の入った飼料、カルシウムと塩、ニンニクチップ。
その上に、ねこ。
なぜか、馬のエサの上にねこが寝るようになった。ひんやりして気持ちいいのかもしれないが、エサはねこの体重で凹む、ねこの毛は汚くなる、良いことはあまりない。
午後にエサを用意してから、夕方に馬がそれを食べるまで、ある馬房の飼葉桶で丸くなってひと眠りする。
「また、ひとの食べ物の上に寝て」
撫でると、迷惑そうに薄目を開け、またすぐに寝てしまう。
ふだんは馬小屋の入り口の左側にいる。時どき右側にいる。姿が見えないときも、人の話し声がするとどこかから出てくる。たいていは車庫や馬小屋の二階から。
抱き上げると、ほんの少し静かにしているが、間もなく腕の中で抵抗をはじめ、ぴょんと地面に飛び降りてしまう。姉いわく、我慢の時間はおやつの量と比例するらしい。その現金さも憎めない。
近所の事情通のお姉さんによると、ねこは近ごろ自宅にほとんど帰っていないらしい。だから、エサ入れも片付けられてしまったのだとか。どうりで毎日うちにいるわけだ。
つまり、うちがメインの居場所になったってことか。
いまだにうちでは「ねこ」と呼んでいるが、自宅では「ミーちゃん」と呼ばれていたらしい。
「ミーちゃんと言えばミーちゃんだわな」
草むしりをしながら、傍らに座るねこを見て、母が言った。ねこは興味なさそうにごろんとその場に横になった。どこででも横になるので、毛が薄汚れている。
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