総額10万円 塾通いなしで息子を東大推薦入試に合格させた驚きの方法とは
『お金・学歴海外経験 3ナイ主婦が息子を小6で英検1級に合格させた話』(朝日新聞出版)が話題を呼んだタエさん。一人息子のキリくんは、英検のみならず、研究分野におけるコンクールでの入賞、英語力などが求められる東大推薦入試にも堂々合格し、2019年4月に晴れて東大生となった。前回の記事では、帰国子女でもインターナショナルスクール出身でもないキリくんの幼少期の英語教育についてふれた。今回は英語以外にどんな種まきをしてきたのかをお伝えする。(取材・文:小林佳世/タエさん写真:撮影・掛祥葉子)
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キリくんが3歳になる直前に英語育児を始めたタエさん。「歯みがきしようね」などよく使うフレーズを英語で語りかけ、BGMを英語にしたり、英語圏のアニメを見せたりした。日常生活に英語を滑り込ませたのだ。その成果もあり、キリくんは現在、TOEFL iBT(R) 109点、TOEIC985点という高い英語力を誇る。しかし、タエさんは「英語は言語であり、ただのツール」なのだという。では一体、ほかにどんな勉強をさせてきたのだろうか?
もっとも力を注いだのが算数だった。「算数ができれば将来の勉強で困ることはない」と思い、英語育児に慣れてきた幼稚園の年長のころ、算数の先取り学習を始めた。学習マンガやネット上の無料のプリント、市販のドリルなどを活用。平均の概念を教えた際にはトランプをランダムに分けて、「トランプの山が平らになるようにするためには、何枚ずつにすればいいのかな」とヒントを与える。正解を教えるのではなく、あくまでも「考える力がつくように」サポートするのだ。間違えても責めたりせず、ほめるように心がけた。
小4で初めてジュニア算数オリンピックに挑戦するも予選敗退。小5で決勝進出、小6では算数オリンピックにレベルアップして決勝進出。中学生になってからはジュニア数学オリンピックに挑戦したが、中1と中2はあと1点というところで予選通過を逃した。中3でようやく決勝へ。だが、小5、小6、中3いずれも、決勝では上位入賞には届かなかった。
写真)国際物理オリンピックの解答用紙(コピー)と名札、物理チャレンジ過去問ファイル(タエさん提供)
「算数、数学をずっとやってきて、小5からは『青チャート』(『チャート式基礎からの数学』)を始め、中3で数IIIまで終わらせました。一般的には数学が得意なのかもしれませんが、息子に特別なセンスがあるとは感じられなかった。このまま続けたところで全国のトップはとれないと思ったんです」
算数を続けながら、タエさんはせっせと種まきをした。化学はどうかと思って、元素記号の本を見せたが、あまりに食いつきが悪くて断念した。鉱物などが載っている本を渡したときも、キリくんは一度も開かず、地学も断念した。
転機が訪れたのは、中3の秋。タエさんは、知人から国際化学オリンピックの日本代表メンバーが東大推薦入試に合格した話を聞いた。調べていくうちに物理でも国際大会があることを知り、即行動。WEBサイト上にある国内大会「物理チャレンジ」の過去問をすべて印刷し、ファイリングした。その数116枚。キリくんに手渡してみると、興味を示し、早速やり始めた。そして、物理に夢中になった。素粒子の世界にすっかり魅了され、大学で研究したいという。タエさんがやったことといえば、キリくんを書店に連れて行き、物理の本を選ばせたくらいだ。
その後の快進撃はすさまじかった。高1の夏、早くも「物理チャレンジ」の予選を通過。高2で再度挑戦した際には、厳しいレポート提出が数カ月間続く最終選考を経て、国際物理オリンピックの日本代表に。本番でも、見事銀メダルを獲得した。この功績が東大推薦入試合格へと結びついた。
ところで、東大合格まで費用はどれくらいかかったのだろうか? キリくんは、地元・大阪の公立小学校を卒業後、私立の初芝富田林中学校・高等学校に特待生で入学した。小6で合格した英検1級は受験には考慮されなかったが、地道に取り組んできた算数や、洋書でたくさん読んできた理科の成績が有利に働いた。中学受験でかかった費用といえば、関西での受験に必須とされる五ツ木模試の受験料2回分とその対策の問題集、実質1~2万円程度だ。
中学受験や大学受験で塾通いや通信教育は一切しなかった。中学時代は首席、高校時代もトップクラスの成績をキープして6年間の学費が免除された。大学受験にかかった費用は、センター試験対策の参考書、TOEICやTOEFLE iBTの受験料、大学受験料ぐらい。中学受験からのトータルで見ても、10万円はいかないだろう。驚きの数字だ。
タエさんは言う。「どんな子にでも、その子に秘められた特別な能力があるはず。親はそれを信じて種まきをして、サポートするだけ。お金がなくてもできる方法はあると伝えたい」