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「なぜかイライラする…」その原因、現代人を“スーツを着た原始人”と捉えればわかります【自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術】

 理由はハッキリとわからないが、なぜかイライラしている。配偶者や子どもの言動がいちいち、気に障る。上司の何気ない一言に、瞬間的にムカッとくる……。「イライラ」を感じたときに真っ先にするべきことがある、と語るのは元自衛隊メンタル教官の下園壮太さん『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(朝日新書、2022年4月刊)でも紹介している、正しいイライラ対処法を、下園さんに教わった。
(タイトル画像:Flash vector / iStock / Getty Images Plus)

下園壮太著『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(朝日新書)

■現代人を「スーツを着た原始人」と考えてみると

 最近、何だか理由はわからないけど、イライラするなあ、と思うことはないでしょうか。毎日、何かしらイライラとして、心穏やかに過ごせない。そんな自分自身や生活に嫌気が差した経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

「イライラ」とは小さな怒りです。怒りは、自分の土地・食料・所有物、愛、自由、立場、居場所、価値観などが侵されないように警戒する感情です。こうした領域に不法侵入の気配があるとき、「イライラ」が発動します。

 私は人間を理解しようとするとき、現代人を「スーツを着た原始人」と捉えて考えます。人類の歴史は、400万年とも言われていますが、人類の歴史を1月1日から始まる1年に例えると、人類最古の土器が使われた1万6500年前が、12月31日の夜の9時過ぎごろの話になります。四大文明が生まれた5000年前は夜11時、電気が発明され夜も活発に活動できるようになったのは、夜11時30分。インターネットが発明されたのは、年が変わる20秒前のことです。

 つまり、私たちの無意識には、このように長い原始時代を生き延びるためのプログラムがしっかり刻み込まれており、それは、ほんの短い現代社会という環境ではまだ修正されていないのです。

 原始人的には、エネルギーのレベルが下がった状態は、襲撃されたら戦えない、逃げ遅れるかもしれないことを意味します。そのため、他者との交流を考えただけで“殺されるかもしれない”というレベルの被害妄想的な反応になってしまうのです。現実に自分に痛みや苦しみ、これ以上の労働を強いる兆候がある場合には、怒りの発動はさらに早くなります。

 現代に生きる私たちにも、その警戒心は働きます。疲れが溜まっているときは、他人のちょっとした言動が気になります。例えば、同じチームに、何かと人の足を引っ張り、ポカミスも多いメンバーがいるとしましょう。疲れが溜まってくると、彼が仲間と談笑しているのを見かけただけで、イライラしてしまうようになります。

「仕事は適当なのに、遊びのことだけは熱心だ」などと考えてしまいます。のんきなそのメンバーがするかもしれないミスを、自分がフォローしなければならないし、自分の評価にも悪影響が及ぶと感じるからです。

■イライラの原因は「相手」ではなく「自分」にある

 この場合、「このメンバーこそが私のイライラの原因だ」と考えてしまう人も多いと思います。「ミスをしてもヘラヘラした態度だから、私はムカついてしまうんだ」と考え、上司に相談したり、彼を呼び出して直接指導したりするなど、なんとか対処しようとするかもしれません。

 しかし、実際の原因は自分自身の「疲労」であることのほうが多いのです。「イライラ」は、疲れのバロメーターと考えたほうがいいのです。疲れて弱っている自分を守るために、イライラという怒りを発動させて、これ以上、自分に余計な負担がかからないように警戒している状態です。ヤマアラシが体の毛を逆立てて、周りの人に対して威嚇しているようなイメージでしょうか。

蓄積疲労は3段階で進行する。イライラしがちな人は「疲労の2段階」にいると自覚してほしい(本書『イライラ・怒りをとる技術』より)

 イライラを感じたら原因をあれこれ探すよりも、とりあえず、しっかり休養することで解決することはよくあることです。

 イライラ事象があった日は、「疲れている」と自分に言い聞かせてください。嫌なことを忘れようと、楽しいストレス解消法をやる手もあるのですが、もしあなたに疲れが溜まっている場合は、そのストレス解消法をやること自体で、疲労を深めることになってしまう場合があります。

 気分は変えられても、疲労が深まっていますから、夜寝るときには、また今日の怒りがふつふつと思い出されてしまいます。

 では、どうすればいいのか。

■アルコールは怒りを誘発するので要注意

 それは、とにかく休むことです。逆に言うと、エネルギーを使う作業を避けること。具体的には、こまめに小休憩をとる、昼寝をする、仕事を先延ばしにする、家事をサボる、人と会うのをキャンセルする、いつもより早く眠る、いつもより1時間長く寝るようにする、などの対処をしてください。

 人と会って酒を交えながら、愚痴を言いたいのは自然な流れですが、楽しいストレス解消法と同様、人と会うこと、お酒を飲むことは、実は案外エネルギーを使う作業です。

 また、アルコールは、反応速度を鈍くし、瞬発力のあるイライラの発動を我慢の力で押さえられなくなってしまいがちです。お酒が入ると怒る人は本当に多いのです。そしてお酒が入った席でのトラブルや失敗も多いものです。また、そうでなくても、お酒で睡眠の質が阻害され、疲労の回復が遅れます。友人と愚痴を言い合うのは、イライラ事象のすぐ後ではなく、一晩寝てからにすると良いでしょう。

 そうすることで翌日にはエネルギーが戻り、案外、「それほどこだわることではないか。ま、いっか」と相手や自分を許せてしまうことも多いものです。

「イライラは疲れのサイン」ということを理解して、最近なんだからイライラしてるなと思ったら、とにかく休息をとるように心がけてください。それを心がけるだけで、原因不明のイライラがぐっと楽になる人は大勢います。ぜひ、実践してください。


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