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「ウィンドウズアップグレード問題」で思い出す「ウィンドウズ95」という時代の先端に立ったが故の悲哀と、二の足を踏むもうひとつの理由

 新刊が出る度に、広告を作り、POPを作り、チラシを作る。宣伝課のしがないスタッフである築地川のくらげが、独断と偏見で選んだ本の感想文をつらつら書き散らす。おすすめしたい本、そうでもない本と、ひどく自由に展開する予定だ。今回は、アサヒオリジナルムック『パソコンで困ったときに開く本2022』を嗜む。

パソコンで困ったときに開く本2022

 PC端末普及のきっかけといえば、ウィンドウズ95の発売だろう。空色のパッケージに窓マークが家電量販店の店頭を賑わせた景色は懐かしい。くらげはまさにそのタイミングで大学に入学、PCの授業がはじまった。これからはパソコンができないと就職はできませんなんていう勢いだった。しかし、ウィンドウズ95をOSとして搭載したPCは大学に100台なく、肝心の教授陣がウィンドウズ95を使いこなせなかった。

 世に出る準備に入った途端、出合い頭にウィンドウズ95というのはある意味不幸だ。先端にいるということは、意外に不便なのだ。先頭にいる晴れ晴れしさは同時にこの先、なにがあるかわからないという未知なるものへ恐怖でもある。

 案の定、教授陣、それもPC授業を受け持つ先生がウィンドウズ3.1でないと教えられないため、私は空色ではなく、真っ暗な画面の3.1の授業を受けた。統計ソフトもExcelではなく、教授が使っていた謎のソフトだった。そんなソフト、世に出て一度とて目にしたことがない。おかげさまで私はいまだにExcelが怖い。Excelすら使えないなど、口が裂けても採用面接では言えない。だからExcelは“それなりに”使いこなせることにし、Excelを使う仕事にビクビクしている。すべてはウィンドウズ95の先端にいたからであり、教授たちがその先端を使いこなそうという気概がなかったからだ。

 ここ2年、テレワークを巡り同じような問題が世間で静かに起こっている。慣れないオンライン会議で、音声が出ない、聞こえないと設定にドギマギしながらも、それをクリアし、変化した日常に対応しようとする姿は尊敬する。大事なことはアップグレードできることだ。授業にウィンドウズ95の導入を拒否した教授陣を恨むのではなく、頭の中をアップグレードし、前に進むことこそ、必要だろう。

 そうアップグレードである。問題はここなのだ。先月、ウィンドウズ11が公開された。来た、来たぞ、アップグレード問題。98には2000年代に入って触れ、2000を無視し、Vistaで混乱し、8に飛んで、しれっと10にアップグレード。これが私のアップグレード遍歴。さてどうする、ウィンドウズ11。私のPCの右下、アップデートを示すアイコンに黄色いマークではなく、青マークが点灯中。ムムム、見なかったことにしよう。

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 と、そこで今年10月29日に発売された一冊のムック『パソコンで困ったときに開く本2022』を手に取る。ところがこのムックも「ウィンドウズ10最終版」とあるじゃないか。えー、来年は10のこと、教えてくれないの? よく見ると広告に「新OSウインドウズ11も紹介!」ってアイコンがある。ウインドウズ11へのアップグレードにためらいを感じるみなさん、朗報です! 2022年版ではウインドウズ11の紹介と解説、さらにアップグレードすべきか問題についても触れられているのだ。さすが、PC難民を救うバイブル、ありがたや、ありがたや。

 ウインドウズ95の先端にいたために、悲しいことにExcel恐怖症という病を令和になっても引きずる私にとって、アップグレードは重大問題。アップグレードしないで意固地になって取り残されてもいけない。だけど、先端まで行ってしまうと、どこでつまずくか分からない暗闇の隧道をひたすら歩くハメになり、新たな恐怖症を発症しかねない。アップグレード問題は、だれかの後ろについて歩くぐらいがいい。私のPCの右端の青マークがウインドウズ11への直通電車。乗るべきか乗らざるべきか、それが問題だ。

 いくらなんでもそこに触れた途端、ウインドウズ11に変身するわけでもなかろうと思い、触ってみる。すると、「このPCはウインドウズ11に更新できます」と、未来を語る案内人のごとく表示される。むー、『パソコンで困ったときに開く本2022』を開くと、スタートメニューが中央に変わっていた。ま、これはクリアできる。さらに確認すると、どうもとんでもなく大きな変更はなさそうな様子。現在のところは無償でアップグレードできるようだし、せっかくアップグレードできますと我がPCが言うなら、するか、アップグレード。でも10のサポートは25年まで継続されるようだし、その頃には我がPCも寿命を迎えるやもしれない。

 なぜ、そこまでアップグレードに二の足を踏むのか。それがですね、実はですね、普段から使っているソフトがですね、ええ、競馬のソフトなのですが、非対応なんですね、ウインドウズ11に。だからこれ、アップグレードすると、使えなくなりますよね。ちょっとね、それも困るの。

 アップグレードすべきか否か、それが問題だ。

(文・築地川のくらげ)


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