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人生をそのまま夏休みにしたい ~北海道からの沖縄移住記 2021年5月~

 ゴールデンウイークの本島北部は、天気も良くとても混んでいた。みんな、人混みを避けてバーベキューやキャンプをしようと、やんばる(山原)と呼ばれる、自然豊かな北部地域のビーチやキャンプ場に殺到していた。

 でも私と友達には、以前釣りをしにきたときに見つけた、秘密の場所があった。足先だけ海水に濡れながら岩場を越えていくと、大通りからは見えない位置に広い砂浜があるのだ。キャンプと釣りの道具、食料を運ぶには、三往復もしなければならなかったけれど、奇跡的に他のキャンパーは一人もやってこなかった。ゴールデンウイークにきれいな海辺を二人占めできたのは、日々の冒険と探索のたまものかもしれない。

 夕方、私が火をおこしてお肉を焼く横で、友達はサンマの切り身を刺した竿を浜から遠投した。今までルアー釣りばかりやっていたけれど、竿をスタンドに立てたまま、魚が食いついた合図である鈴の音をのんびり待つ打ち込み釣りは、キャンプにぴったりだった。

 釣りにはたくさんの種類があるけれど、私はウェーディング(立ち込み釣り)が大好きだ。全方位を水に囲まれていると、色々な音、感触が直接海から私の身体に響いてくる。ボラの群れが跳ねる音。カニが潜っている穴からコポコポ上ってくる泡の、かすかな振動。

 ある日、腰まで海につかって釣りをしていると、近くの岸では若い男性がカヤックで沖に向けて漕ぎ出し、別の場所では地元のおじいがミジュン(イワシに似た小魚)の群れを狙って投網を投げた。みんな海で色々な遊びをしている。おじいは、近所に配るんだと言って、私にもミジュンをたくさん分けてくれた。

 誤解を恐れずに言えば、人生をそのまま夏休みのようにしたい。寝ても覚めても、夏休みの一日一日に夢中でいたい。仕事さえも鮮やかな日々を楽しむための遊びの一つだ。夏休みだってやらなければならないことはたくさんあるけれど、大人なら宿題すらも自分で決められる。もっと先へ進むためにできる宿題をこなしながら、遊んで遊んで遊び倒して、最後にいい夏休みだったと胸を張りたい。

写真:釣り場に向かう道も探検。縞模様が美しいトカゲはニホントカゲ?


あさひかわ新聞2021/5/18号「沖縄移住記31 果報(カフー)を探して」掲載

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