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数学の証明に似た文章【毎日note】#80

以前に少しだけ、文章を書くバイトをしたことがある。クラウドソーシングのプラットフォームを活用して、どこかのサイトに載せる文章や、50字程度の紹介文を書く仕事を受けた。過去のフォルダに残された文章を見てみると、「遠距離恋愛で別れてしまったカップルが復縁する5つのコツ」なんて記事を書いていたようだ。よくありますよね、こういう記事。あれみんな、とは言わないけど、かなりの確率で、やすーい単価でどこの誰ともわからない一般人が書いてるんじゃないかな。プロのライターが書いていたら、それは最後に紹介があるはず。

「答え」があって、それを説明し納得させるための文章。たぶん私はそういうものが苦手で、退屈で、結局そのバイトは一カ月ほど試してやめてしまった。事例集めなども、自分の興味のないことだから、苦痛だった。復縁するコツなんて、こっちが教えてほしい笑

ロジカルシンキングが苦手だ。とっさにわかりやすく論理的に説明することができない。一応、時間をかけるとできるし、きれいに導き出せたときはすっきりするけど。数学の証明はけっこう好きだった。

Kindleで個人出版される本は、私みたいなエッセイ本や小説ではなく、英語や投資などの実用本や、自己啓発書が多い。もちろん目的のはっきりしているそういうジャンルの方が読まれるけど、そのぶん役に立ったか立たなかったかはっきりするので、読者からの評価も厳しくなるだろう。そんな中で彼らは、自分が見つけた答えを、様々な資料を用意しながらなるべくわかりやすく論理的に書いている。彼らにとって決まっている答えに向けて、コツコツと証明を積み上げるのだ。本当にすごいと思う。

私は結論ありきで書いていくのがつまらない、と感じてしまうたちだ。ある程度道筋は決まっていて、自由度が低い。もちろん、誰かに役に立つ専門的な知識がないということもあるのだけど。

答えのない、あるいは答えらしきものを用意できないことを書くのがおもしろい。一文一文書き進めながら、思わぬ景色が見えてくることがあるから。それに、こういう正解のないテーマこそ、人々が日々考え続けていることだとも思う。

文章は必ずどこかで終わらせなければならない。だから着地点がないまま書き始めると、締めくくるには苦労するけど、私は今日も、明日も、答えらしきものを探しながら、キーボードを叩く。




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