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くるま旅のはじまり~鹿児島・宮崎・熊本 #くるま旅日記

 青森県出身のパートナー・りゅうちゃんと同時に沖縄を一度すっかり引き払って、いよいよ車中泊旅が始まった。二十四時間フェリーに揺られ、鹿児島港に降りたつ。五月六日、最初の車中泊地は、鹿児島県にある小さな温泉街の道の駅だった(足湯付き!)。分かってはいたけれど、車中泊仕様ではない車に二人分の衣食住すべての荷物を積んでの生活は簡単ではない。初日から雨がひどく、コインランドリーやパチンコの屋根付き駐車場を使わせてもらって、荷物の整理をした。公園の駐車場でご飯を炊こうとしたら、見回りの人に怒られたこともあった。

 日々飲んだり調理に使う水は、ペットボトルで買うと高いし嵩張るゴミになるので、各地の湧水地で汲ませてもらっている。見たいスポットを目指しながら、どこで水を汲み、どこでお風呂に入り、どこで寝るかを組み立てる日々。家のない生活は容易ではないけれど、車中泊の先輩たちがインターネット上に残してくれた実績に、たくさん助けられている。目的地への所要時間も、無料駐車場の車中泊への寛容度も事前にわかるので、昔よりはずっと効率的なはずだった。それでも、今日という一日を終え、ほっと一安心できるのは、車の中で横になった時ではなく、何事(警察の職務質問など)もなく朝を迎えられた時だった。

 連休が明けて爽やかな晴れの日が続くようになったころ、車中泊旅にも少し慣れてきた。鹿児島の霧島神宮や宮崎の鵜戸神宮、天の岩戸神社など、神社に特に多く行った。知覧特攻平和会館では、沖縄での特攻作戦のために、知覧に集められた十代の兵士たちのことを考え、指宿の砂むし温泉では、沖縄とは違う黒い砂の熱さと重みの心地よさを知った。山の中をゆったり流れる一級河川や、熊本の黒川温泉街にふいに現れたタヌキを見て、沖縄と九州本島はやはり違うのだと思うこともあれば、言葉の訛りや食文化にどこか近しさを感じることもあった。

 北海道と沖縄しか知らなかった私には、歴史ある街々を実際に目にし、名前だけは知っている各地域のことを少しでも自分自身の体験に変えていけることがおもしろい。沖縄を恋しく思うひまは、今のところなさそうだ。

写真:鹿児島で噴煙を出し続ける桜島を眺めながら食べた両棒餅(ぢゃんぼもち)


*あさひかわ新聞 くるま旅日記「果報をたずねて」① (2023/05/16掲載)


くるま旅の様子がKindle本になりました!
noteに書ききれなかった書下ろしモリモリの書籍となっているので、ぜひ見てみてくださいね♪



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