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「体」という名の「鍋」の火加減は・・・

いよいよ寒さも厳しい季節である。この歳になると寒風が骨身にしみる。
歳をとると体が冷えやすくなるが、それは単に体温計で測った数値の高い低いではない。昔の車は冬の朝などは暖機運転が欠かせなかった。エンジンをかけてすぐに走り出すとエンストするので、十分エンジンが温まるまで、かけっぱなしでしばらく待つのである。あれと似たようなもので、体もこの季節はなかなかエンジンがかからない。1日の始まりには、まず体のエンジンをがっちり温める必要があるのだ!

なので、朝食は大事である。だが、ただ食べればいいというわけではない。「体の暖機運転」の時間だから、体を冷やすものはよろしくない。温まろうとするエンジンに水をぶっかけるようなものだ。ところが朝の食卓によく登る果物や生野菜は、大方体を冷やすものなのだ。

そこで近頃は蒸して温めて食べている。カブやニンジン、キャベツやブロッコリーなど、なんでもよい。一口大に適当に切って蒸すだけ。サラダ用のドレッシングでもポン酢でも、なんか適当にかけて食べる。

果物を蒸すのも美味しい。この時期なら柿やりんごなど、皮をむき、くし形に切って、5分くらい蒸し器で蒸すと、ほっこりさっくり。15分も蒸せばトロりんとなる。蒸し具合はお好みで調節してください。いずれも起き抜けの胃に優しい。蒸し器から上がる湯気は、見た目にも温かい。
朝から蒸し器を出すのは面倒という方は、レンジでチンしても大丈夫です。受け皿に水を入れて使うレンジ用の蒸し器も売っているので、ひとつ買っておくと便利。

「薬膳」というと、薬膳火鍋とか薬膳カレーとか、やはり体が温まるものが思い浮かぶ。実は、薬膳というのは「体に足りないものを補い、余分なものを取り去る食養生」なので、必ずしも「温めごはん」というわけではない。更年期などでホットフラッシュに悩まされていたり、精神的に興奮して顔がほてるという時などは、むしろ体を冷ますものを食べたほうが良い。
薬膳レストランなどの多くが「温め系」なのは、食べてすぐにポッポして効果を感じやすいからだろう。ヒーフー言いながらみんなで火鍋をつつくのは楽しいものだ。

だが、1年365日、日々3度の日常の食事となると、ちょっと注意が必要である。50過ぎの体を温めるには工夫がいる。

薬膳では「陰と陽のバランス」ということをよく言う。
陰とは簡単に言えば「冷やす力(潤う力)」。
陽とは「温める力」。
体を温める力と冷やす力がバランス良く存在していると、体は適度の体温を保ち、なめらかに動くというわけです。例えるなら陽はボイラーみたいなもん、陰は冷却水みたいなもん。陽の力は火の如く体を温め、陰の力は水の如く体を潤し冷やす。ざっくりそんなイメージ。

さて。まずは体という名の鍋に「陰」という名の水が入っており、その鍋が「陽」という名の火にかけられているところを想像してほしい。

若い体(鍋)には水が満々と湛えられており、火も盛んに燃えて水を程よく温めている。火力も水量もたっぷりあり、安定している。

だが、50過ぎの体(鍋)は・・・

鍋を覗き込んで見れば、水量はだいぶ減ってしまい、チャポチャポ。火力も弱まってきてチョロチョロ。若い頃に比べたら火力不足、水量不足の状態。火加減をあやまれば、水と火のバランスはあっという間に崩れてしまう、実はとてもデリケートな体になってしまっているのだ!

そこへ「さあ!体を温めるぞ!」とばかりに、口から火を吹くようなホットなものをどかっと食べるとどうなるか。いきなり火加減は強火となり、チャポチャポの水はあっという間に蒸発!水の減少は潤い力の減少である!いっときのポカポカと引き換えに、後から来るのはカッサカサのカラッカラ!お肌は乾き、腸も乾いてお通じも滞る事態に!(怖っ!)

そんなわけで。
火加減はとろ火でじっくりと。
同時に水をゆっくり補って。
火を少し強めては、水をちょっと補って。また少し火を強めて。
体という名の鍋の火加減は「だましだまし」が肝要なのだ。潤いを求めて果物や生野菜をとりすぎれば冷えすぎる。温めようとして唐辛子や胡椒など香辛料やスパイスたっぷりの料理が続くと、その分乾いてしまう。いわんや翌朝お尻から火を吹くような火鍋的なものおや。こちらは非日常のイベントとして楽しむべし。

この季節によく作るのは、麻木流スンドゥブチゲ(風♡)
まずはエビ(桜エビでも可)。体が陽の力を生み出すのを助ける食材と言われている。ニラ、ニンニクも体を温める。あとは少しのコチュジャンで程よく辛味を。辛味はもちろん、体を温める。決して入れすぎず、ほんわか胃の腑が温まるなーって感じる量で。あとは味噌で味をととのえる。
陰の力をあたえてくれる食材として豆腐、牡蠣、長芋。陰=潤い力でもあるので、どれもお肌に良く、お通じにもよい食材だ。

作り方は簡単。豆腐とニラは適当に切る。長芋は皮ごとすりおろす。ニンニクは薄切り。
鍋に好みの出汁をはり、味噌とコチュジャン、ニンニクをを入れて一煮立ちしたら長芋を溶かし入れる。ニラ、豆腐、牡蠣を加えて火が通るまで煮込んだら出来上がり。

汁に「長芋」を溶かし入れるのが麻木流。汁がトロ味を帯びて喉越しもなめらかで美味しい。

山芋には自然薯や大和芋、イチョウ芋、つくね芋などいろいろ種類があるが、今回は溶かし入れるので、粘りの少ない「長芋」を選んだ。
山芋類は山の薬と書いて「山薬(さんやく)」といい漢方薬にも入っているスーパーフードだ。陰の力と陽の力を同時に補うと言われている。凄っ!
我が家ではいろいろな種類の山芋を常備して、隙あらば何にでも入れちゃいます。

滋養が溶け込んだ汁はすべて飲みほしたいので、味付けは塩分控えめの、やや薄味にしよう。
食べ終わる頃には、五臓六腑がじんわりして、手足の先まで温まること請け合いです。

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