不眠症の私は夜が嫌いで、夜が好き。

夜ってやだよね。
寝なきゃいけないし、寂しさを連れてくるし、大きな魚が部屋に現れる。

死にたいと生きたいの繰り返しの脳みそ。
そしてゆらゆら大きな魚。なにか食べ物を探してるかのようにゆらゆら、ゆっくり私の真上を泳いでいく。
怖いような寂しいような気持ちになって私は声を殺して布団を口までかぶる。
見つかったらどうなってしまうんだろうと、そっと目を閉じる。私いませんよ〜って顔をして。

視覚を遮断すると今度は聴覚。水の音が聞こえる。ゴポゴポという泡の音、そこに大きななにかが横切る音。まだ大きな魚は私を探してる。

魚は私の部屋の中でしか泳がない。窓から出ていくことも無い。四角い私の部屋を角にぶつかる度に曲がってを繰り返す。

そう思うと、その魚はなんだか私のような気がしてくる。
なににもなれず、ただ小さな部屋でこもり切った私のような。
なんだか虚しくなってきて私はぎゅっと目をつぶると、また死にたいと生きたいの繰り返し。ぐるぐるぐるぐる回る頭では当たり前のように眠ることは出来ず、少しずつ窓の外が明るくなっていく。

フラワーカンパニーズの深夜高速が頭の中で流れ出す。「生きててよかった、そんな夜を探してる。」

大きな魚は朝になるとどっかにいく。こうして日が登ってきた頃、ようやく私は眠りにつけるのだ。
けれど、目が覚めた時には水からあがったような感覚。安心とともにやってくる少しの切なさはどこから来ているの?

やっぱり私は夜が嫌い。


夜っていいよね。
眠ることで現実から逃げられて、キラキラした光がたくさんあって、小さな寂しさがある。
この小さな寂しさは、私の心をグッと小さくして常に酸素を求めてる。その息苦しさが安心へと繋がる。

なかなか寝付けない夜。小さな電気を付けて小さな声で歌を歌ってみる。
なんでもいい。ぱっと思いついたものでも、自分で即興で作った歌でも。

この前の作品は
「私の名前は幹夫〜好きな星座はさそり座〜でも私はうお座〜うぉ〜いぇ〜」

脳みそ回って無さすぎる。でも気持ちよくなってきて、なんか秘密を1人で握ってるみたいな気持ちになる。

楽しい夜が好きだ。

やっぱり私は夜が好き。

夜が嫌い。

夜が好き。


そんな想いを日々抱えながら。


そういえば最近、大きな魚を見なくなった。どこか違う家に引っ越したのかもしれない。

それはそれで寂しくなって、今度起きた時は魚の絵でも書いてあげようかななんて思ったりした。

そして、魚のことを考えながら体を起こし、日が昇る窓に映っていたのは、間抜けな顔をした自分だった。

なんだかんだで私は、20をも過ぎているのに、寂しさを求めていたのかもしれない。

夜と私、結婚してるのかも。

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