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デザフェス59の苦しみ

今回でデザフェス3回目のライブペイントとなった。

過去2回、それはそれは気持ちよく一心不乱に描きなぐって、汗だくになり、心地よい疲労感とともに終えた。

しかし、今回は違った。
詳しく言うと、初日は違った。

まず遡ると、私のスタイルや絵の変化の話になる。

今まではがむしゃらに描きなぐりながらも少しの静かな涙、苦しい感情を表現してきた。

それがここ最近、大きなキャンバスに描くようになり小さな心のざわめきを描き起こすようになっていった。
風の匂い、降り立った駅の緑、カタコトと鳴る路面電車の音。
そんな中で感じる世界の美しさと、その美しさから見出す自分のじっとりとした感情。

静かに絵の具を乗せ、自分の中身を残り少ない絵の具のチューブのように絞り出して生み出していくスタイルへと変化していった。

そうしてその結果。今まで快感を求めて動かし続けたライブペイントで、暴れ散らかすことが出来なくなった。

デザフェス初日。
3回目の白い壁を前に何を描こうかとワクワクしていた。直前に決めた大きいサイズの女の子。
ぺたぺたと絵の具を塗り重ね、どんだけ描き進めても、いつもの気持ちよさがやってこない。

どうしてだ?

自分の描きたい暴れたいライブペイントのスタイルが、今の静かな嘆きを描くスタイルについて来れないのだと思った。

今までの熱が、熱く疼く体がどうしても出てこない。
焦った。このままではなんとも中途半端なものが出来上がるんじゃないかと。

そんなモヤモヤを抱えながら私は初日を終えた。


次の日。私は早く家を出て描こうと思ったが、落ち着いてゆっくり寝て、ゆっくりと向かって冷静になろうとした。
大丈夫、大丈夫、と言い聞かせながらゆりかもめに揺られている時間は苦しかった。

二日目、自分のブースに着いた。
1日開けても、なんだかパッとしない絵が目の前にあった。

今日は大きな女の子を包む女の子達を描いていこう。

なにかのスイッチが入った。
描きなぐっていたような描き方でペンとクレヨンを使って大きく輪郭を描いた瞬間だった。

これだ。この感じだ。
そして、見つけた。これは、この黄色で全てをぶつけるしかない。と直感がそう言った。

それから先、私は気持ちよくなれた。

女の子たちの上を、筆や手を使って黄色を滑らせていく。
入ったスイッチが切れることなく、私は描ききった。

そして、大胆に黄色を乗せたあと、もっと暴れたい、もっと刺激的な絵にしたい、という欲がムクムクと湧き上がり、最後の完成パフォーマンスとして、蛍光色をチューブごと全体に塗りたくった。


こうして完成を迎え、私はやり切った。
気持ちいい汗とともにアドレナリンは止まらない。


過去2回と比べて、どうしたらいいかなんて初めてだったしとても焦った。でもこれは、私への試練と、私の進化の過程なのだと信じることにする。

これからもたくさんライブペイントがしたい。デザフェスもたくさん出たい。

きっと大丈夫。
焦っても大丈夫。
また朝日はのぼりだす。

私の熱は永遠に消えることは無いと言い切れるのだから。

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