名前も知らない君と私。〜いのちの話〜
窓辺のランニングマシーンに立ち
前を向いて走り始めた。
目の前に映ったのは
一本の、ジムの明かりに照らされ
冬の訪れに赤くほてった一本の木。
目の前に立つ君の名を知らないが君はまるで私みたいだ。
そう思った。
名前も知らない君は、ただ赤い。
ジムで走り、体だけでなく傷ついた心に心に灯がともった
私みたいだ。
名前も知らない君は、ただ一人でいる。
観光地の仲間の中にいる紅葉ではなく
ただ一本、ジムのみんなの前にいて
一人がんばれと微笑んでいる。
やっぱりみんなと同じでありたくない、群れたくない、自分でいたい
だけど大事な誰かの心には、そっと寄り添いたいと
静かにここに立っている
私みたいだ。
名前も知らない君は、足元にたくさんの葉が残る。
自分の殻を破ったようで
けれど身を削ったようで
毎日楽しいのか楽しくないのか、でも頑張りつづける私みたいだ。
名前も知らない君は、私に「負けないで」と微笑んでいる。
君はもうすぐ木枯らしに吹かれ
土に眠ることを知っているのか。
けれど懸命に生きている。
命は永遠じゃない、だから今の自分を、恩送りに使いたいと願う
私みたいだ。
私が君にかけたいのは
君に出会えてよかった
という魔法のシャワー。
今日も自分の人生を愛せるように
懸命に生きたい。
そして名前も知らない君のように
寒さの中でもあったかくありたい。
わたしの前で、一つの葉も枯らさないでいてくれたやさしい君に
いのちという名をつけたい。
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