麻雀の本質⑤ 考えすぎは危険
麻雀の本質① 運と実力
麻雀の本質② 人を動かす
麻雀の本質③ 麻雀にスタイルはない
麻雀の本質④ 上達するために
麻雀をはじめて少し経つと、99.99%のプレイヤーが「ウマぶり」という謎の疫病に感染する。ウマぶりとは「私はよく考えたうえでこの打牌をしましたよ」というアピールが先行しすぎることによって、その場面の正解から逸脱し、期待値を下げてしまう恐ろしい疾患である。
それまでは個性だとかスタイルといった理由で雲隠れしていたのだが、2008年、WHOの緊急会見によってその存在が明らかになった。ちなみに当時の事務局長もテドロス・アダノムである。
ウマぶりとは具体的にどんな症状なのか?
巷で耳にしたウマぶりと呼ばれる疾患の中には、ウマぶりに似て非なる「ウマぶりモドキ」がしばしば存在する。
例えば平場無風のタンピン赤1をダマテンだとか、556p88sの【47p6枚 VS 5p8s4枚】の選択で8sが良さそうだから6p切りリーチだとか、こういうのはウマぶりではなくただ下手なだけである。
また、Mリーグでドラカン3m待ちのチーテン満貫を取らないという選択が見られたが、
プロの場合は面前打点スタイル・副露手数スタイルといったカラーで仕事をしており、「鳴かないで面前テンパイしたときに評価がプラスになる」という盤外要素が存在する。それに気づかず「プロがやっていたから」と一般人が真似をするのは自殺行為だ。
こういった1秒考えれば損だとわかることを正解だと信じ込んでしまう人は、悪い宗教や空っぽの情報商材に騙される危険があるため、まずは自分の頭で物事を考える訓練をすべきである。少なくとも麻雀をやっている場合ではない。
真のウマぶりとは、打牌理由を説明させたときに、
「下家と対面の河から察するに〇〇を各~枚ほど持たれている可能性があり、待ちが少ないと思ったのでダマテンにして変化を待った」
「対面(面前手)の河が濃くなってきてリーチを打たれると良形濃厚でめくりあいは分が悪いのでダマテンにとった」
といった一見それっぽいことを言っているのが特徴である。それっぽいどころか「リーチしたときのデメリット」としては十分成立しているところが厄介だ。問題は、そのデメリットが「リーチしないほうが良い」と結論付けられるほどのパワーを持っているかどうか、という点にある。
リーチ判断に限らず、打牌判断というものは正確に考える手順を持っていないといつまで経っても自力で正解を導き出すことはできない。
算数に置き換えると、各辺の長さだけ与えられた直方体が2つあり、どちらのほうが体積が大きいか?という問題があるとする。掛け算の概念がわからない小学生が、直方体の比較をできるだろうか?まず不可能である。ここで、計算方法もわからないのに「こっちのほうが高さがあるから大きそう」とか「横に長いから大きそう」と数字を使わずに答えるのはウマぶりと同じことである。
麻雀も同様で、正確に計算する方法を知っておかないと簡単にウマぶり病にかかってしまう。そもそも麻雀の選択は、面前なら1/14~1/7くらいの割合で正解がある。逆を言えば、考えすぎたことで正解から離れ、一気に期待値が下がってしまうこともある。
私が本来1時間50万円のところを特別セール99.7%OFFの1時間1500円で麻雀講座を開いていたころ、こういった選択肢の思考をタイミングゲームに例えたことがある。
時計回りにポイントが進み、タイミング良くボタンを押すことでGOODやPERFECTのスコアを得られるタイミングゲームがあるとする。選択肢の比較で「考えすぎてしまう」ということは、一度正解にたどり着いたのに、さらに考えて別の要素を重く見た結果、「ミス」に戻ってしまうことに言い換えられる。
チェスや将棋であれば、「考えすぎによってスコアが大きく下がる」ということはほとんど起こらない。しかし麻雀においてはそういった悲劇は巷の雀荘でも、プロのリーグ戦でも、天鳳の鳳凰卓でも、いまこの瞬間にも起こっている。
麻雀で強くなるためには考えすぎるだけではいけない。「正しい手段で」「正しいベクトルで」「十分な時間を」努力し、しっかりと基礎を学んだうえでそれぞれ答えを導き出していくことが大切だ。
このノートがあなたにとって有意義なものであったらとても幸いです。