武蔵野美術大学公開講座2019 第3回「アート× ビジネスの関係を学ぶ!」レポート

モデレーター:稲葉裕美さん(OFFICE HALO代表取締役)
講師:遠山正道さん (株式会社スマイルズ代表取締役社長)

武蔵野美術大学による「デザインとアートの力」をテーマにした公開講座ですが、好評につき前回全3回→全5回へ延長されることが発表されました。

チケットを追加購入したので、全5回分引き続き参加していきたいと思います。

今日のテーマは「アート×ビジネスの関係を学ぶ」ということで、今回も可能な範囲でレポートしていきます。

遠山さんのアート・コレクションについて

30歳くらいのころに、はじめてアート作品を購入した。菅井汲さんが1963年に制作された版画。

このころはミッドセンチュリーというか、記号的なモダンな表現にアートがシフトしていっている。1964年には東京オリンピック。
1900年代前半までは、アートといえばルネッサンス時代からあるような西洋がメインだったが、50年代から一気に現代アートに移り変わっていった。1960年代は転換期。
好きな作家の作品を自分で所持しているというのは、幸せなこと。

ほか、購入した作品はMr.さん、Bernd Oppiさん、名和晃平さん

ジャクソン・ポロックさんや名和晃平さんのような著名なアーティストは、作風を変えることで評価が落ちてしまうようなリスクを抱えている。そんななかでもリスクをとってチャレンジするようなアーティストの作品ということで、名和晃平さんの新しい作風の作品を購入し、展示したりしている。

石川直樹さんはエベレストの写真を撮影するカメラマン。過酷な環境のなかで、ボツになってしまうような写真もたくさんある。その中で至高の写真が数枚だけ選び出される。そこまでのチャレンジを、自分たちはやっているか?自分たちに問いかけるきっかけになっている。

アートはビジネスではないが、ビジネスはアートに似ている

サラリーマンをするなかで、このままじゃちょっとな…と思い、絵の個展をやった。なぜやったのか、は合理的な説明はできない。が、やってよかったと思っている。

なにかをするときに、「説明できないけど、やりたい!」という方向に振っていくと、競合がいなくなってよい。

この絵の古典においては、自分にとって「はじめての行動を伴った意思表示」だった。

そしてそれは、「はじめての自己責任」。やったことすべてが自分の喜びへつながった。このときの経験によって、Soup Stockが生まれた。

普通、ビジネスをやるときはまずマーケティングの調査からするが、アーティストはなにか作るときに「何をつくったらいいですか?」というアンケートをとったりしない。自分で発意して自分で届ける。そこが面白く、大事にしたいところ。

アートの場合

まずは「自分だけが見えている像」を思い浮かべる。→それを自分で完成形に持っていく。

ビジネスの場合

色んな人と関わりつつ、まずは「どんなものを作るか?」イメージする→実現に持っていく

→アートとビジネス、似ている!!

→でも現実はあまりそうはなっていない…

なぜ違うものになっているのか

4コママンガは、ビジネス的。文脈や意味があって、オチがある。

絵画作品・アートは見ても、「意味」や「必然性」は特にない(パッと見でわからない)

画像1

必要なこと(具体的)と、大事なこと(感性的)は違う
→会議の場で話題にあがりやすいのは、必要なこと。数値などで表しやすい。
→本当は「大事なこと」を重視すべきなのに置き去りになることも多い

事業経営もアートも、子供の眼差し×大人の都合である。

見えないトリガー

身の回りにある、目に見えるものは10%程度。目に見えないものが90%を占める。見えていない90%のなかに価値がある。

村上春樹は、スプートニクの恋人を作り上げる際、まずは1文だけ書いてしばらくしまっていた。その後、その文がなんとなく気になって、あとから一文一文大事に追加していき、出来上がった。ストーリーも登場人物もあとからやってきた。

The Chain Museum

文化・価値はなにか?を探るにあたって、アートはヒントになると考えた。アートの価値はコストの積み上げではない。

チェーン店とアートは、相反するものだと考え、まず「The Chain Museum」という名前が先に出てきた。社長の道楽と言われないよう、自立できるよう仕組みを整え、運用している。

外側から作ったものなので、まだこのMuseumにどういう意味をもたせるか、まだ答えには至っていない。

ArtStickerという、アーティストを直接支援できるアプリも作っている。

トークセッション

デイヴィッド・ホックニーの版画は2万〜3万円から買えるのでおすすめ

遠山さんのアートとの最初の出会いは?

家系的にアーティストが多かった。現代アート作品が家に飾られていたり、憧れが昔からあった。
とはいえ、ただ自分なりの理屈を後からつけているだけなので、そんな家庭で育たなかったからと諦める必要はなく、何ならなんでも紐付けはでき、原動力になる。

夢を実現していく過程について

子供の頃からの夢2つ実現している。1つはレゴで白いテーブルを作ること。個展で実現している。もう一つはコーンフレーク屋。スープ屋をやり始めた後、コーンフレーク屋になりたかったことを思い出した。スープ屋とコーンフレーク屋ってかなり似てるじゃん!ということで夢を叶えている。

人生において負でもありラッキーでもあったのは、父が早く亡くなってしまったが、そのぶん制約なく自由に過ごせた。ものは考えよう。

せっかく夢を見るなら、高い目標にする。苦労するのに中途半端だともったいない。

作品を選ぶときの観点は?

スマイルズで飾るときは、理屈がつくもの。メッセージ性を感じるもの。
自分で選ぶときには、詩の選び方と似ている。まずかたまりとして「好き・嫌い」を判断し、好きだったらもうすこし細かいところを深堀りして見ていく。

お金持ちはどうしても有名作家の作品を集めがち。それよりも自分のフィーリング、好きかどうかと結びついているほうが、コレクションとして価値がある。

センスがあるというのは、ジャッジがあるということである。センスが無いのは、ジャッジができないということ。そのため、ブランドや流行りに頼る。

作品を見て「わからない」という人についてはよく観察したいと思っている。その態度がもったいないし、逆に、そこに価値が宿っているようにも思える。みんなが感じているアートに対するハードルの高さは、なんなのか?自分だけがそのハードルを超えられるコツを探したい。

みんなが感じるそのハードルの高さもわかるので、今回のテーマは「アート×ビジネスの関係を学ぶ」だが、基本は「ビジネスの人」としての立ち位置をとっている。そのほうが、話している相手のハードルが下がる。

アートを神格化しているような風潮も感じる。
最近はインスタレーション作品も多いので、単なる絵だった時代とは変わってきている。一人で完結しないような場合も多いが、アーティストはビジネス感覚が欠けている場合もあったり困っていることも多い。そのためアーティストじゃない人から見て神格化されているのも違うというか、自分たち同じように悩みをたくさん抱えている人たち、と思えばいい。

夢を実現するため、遠くまでいくには?

なにかをはじめるときは、リスクは少なく、小さく始めるのがいい。
今は需要と供給のバランスが逆転していて、明らかに需要過多な状態。そのため基本は失敗すると思ったほうがいい。それでもやりたいと思ったら、歯を食いしばってやるだけ。すると、フォロワーが増えてくるはず。
リスクを取りすぎても、まぁ死ぬことはない。

発想はどこから来るのか

発想はアウトプットからくる。情報のインプットはあまりしていない。情報はやっかいで、今自分が一生懸命取り組んでいるプロジェクトが「●●で流行ってますよね!」とか言われるとやる気がなくなってしまったり…。
情報が悪いわけではないが、あまり情報に踊らされないほうがいい。
普段遮断しておけば、自分が興味あることだけ的確に拾える。

新しい価値を作るとはなにか

天の邪鬼なので、人がやっているとわかるとやる気が無くなってしまう。自分たちがプライドをもって作ったものをしっかり評価してほしい。フランチャイズとかは絶対やらないと思う。

未来の創造的リーダー像とは

リーダーは、リーダーという自覚がない人。「リーダーであろう」としたのではなく、自ら行動し、結果的に他の人がついていく。
リーダーは人の仕事を奪ってはいけない。上司はやりすぎてしまうことがあるように思う。言われてやることは作業。自分で見つけてやっていくのが仕事。

質疑応答

アートについて、コンテクストが重要である理由を教えて下さい。

ただ綺麗というだけでは、アートとして物足りない。文脈だけでも頭でっかちで面白くないが…。
ビジネスに於いても、自分の中で文脈・理由をもっておくのがいい。

アートを買って失敗したり、置き場に困ったりすることはないですか?

置き場には結構困っている。
「いらない・後悔したアート」というのは考えたことがない…理由が外にある(流行っている・勧められた等)場合は後悔するようなことがあるのかも。

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今回の話も非常に面白かったです。遠山さんのお話はわかりやすく面白く、とても魅力的な方だなぁと思いました。

アート作品を買うこともそうですが、「自分の好きなもの」を判断し手に入れる行動を取れる、という一連の行動はめちゃくちゃ憧れがありますね…。

ArtStickerアプリを入れたので、まずは色々作品を見てみたり、都内でたくさん開催されているアート系展示会にどんどん参加し、自分の中で「何が好きか?」という判断を蓄積していきたいなと思いました。

プロジェクトは小さくはじめていく、というところは、第二回のときも共通して出てきた話題だったなと思います。

またインプットに関する話は、普段絶え間なく流れる情報に踊らされている自覚があるので、アウトプットしていく割合をどんどん増やしていきたいなと…。

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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