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◆38周年 からあげクンにまつわる思い出話

昼休み、ローソンに行ったら【38th からあげクン】の垂れ幕がかかっていて驚いた。
そうかあ、38周年かあ。

とはいえ、わたしは生まれも育ちも現住所も北海道のくそ田舎なので、誕生からこれまでの軌跡を「長年見守ってきたのよ!」とか言えるほど、あの鶏のことを知っているわけではない。何しろ学生の頃には、街にコンビニ自体がなかったからね。
しかし、青春時代の思い出の中には結構な割合で【からあげクン】がいた。
あの垂れ幕を見て何となく当時のことを思い出したので、今日はそのことについて記しておこうと思う。

あれはハタチくらいのことだったかな。
かれこれ何年前……まぁ、それはどうでもいい。
何しろわたしは当時、競走馬を育成する牧場の寮に入っていた。
部署は事務だったので、自ら馬に触る機会は皆無だったけれど、日夜競走馬と命の駆け引きを繰り広げている細マッチョの若者が何十人、対して女子はほんの数人。
そりゃもう逆ハーレ……いや、それもまぁ、どうでもいい。
ともかく【からあげクン】の思い出だ。

当時、わたしが住んでいた街にはセイコーマートとセブンイレブンしかなくて、ローソンが出来たのはだいぶ後になってからだった。
コンビニが増えるということは、田舎にとってはかなりセンセーショナルな話題である。
何よりローソンは当時、田舎の若者の間で大人気であった。
その理由が、こいつ。
そう【からあげクン】というわけ。

当時はコンビニの店内で調理なんて、おでんと肉まんくらいしか記憶がない。
だから、店内で揚げたてのジューシーな唐揚げが食べられるなんて、かなりポイントが高かった。
寮に入っていた若者たちは、こぞって出来たばかりのローソンに【からあげクン】を買いに走り、おやつのようにもしゃもしゃと食べていたのであった。

ハタチ当時に付き合っていたIくんも、そんな【からあげクン】の魅力に取り憑かれた男の一人。
彼のお気に入りは、初期からレギュラーの辛口『RED』だった。
酷いときには当時販売されていた箱パッケージの10個入りをふたつも買ってきて、一人でコーラ片手に幸せそうに食べる。
本当はわたしもご相伴に預かりたかったが、あまりに幸せそうな食べ姿に、いつも「1個ちょうだい」が言えなかった。

そんなIくんが、ある時期から大好きな【からあげクンRED】に別れを告げなければならなくなった。
競馬場の厩務員になるために、どうしても体重を落とさなければならなくなったからである。
あと8㎏は落とさなければならないという過酷な減量生活のさなか、彼はしばしば「他のものは我慢できるけど…からあげクンREDだけは我慢できない…」と呟いてはわたしにそれを買わせ、自分は1個だけ食べて残りはわたしに押し付けるという美味しい横暴を働いた。
その後、見事減量に成功した彼は「競馬学校を卒業したら迎えに来るよ」と言い残して、別れの空港の途中でまで【からあげクンRED】をパクつきながら旅立って行ったのだった。

まぁ、その彼が他に女が出来たらしくわたしを捨てたことはさておき。

次の思い出は、現在の夫とのお話だ。

夫とは6年前、互いに遅すぎる結婚をしたばかり。
その前は、20年以上に渡って友達付き合いをしていた。
そんな夫との【からあげクン】の思い出は、とあるライブに行く道すがら。
当時はまだ付き合うとか付き合わないとか、そういう話が出るような雰囲気は微塵もなく、互いにおそらく恋愛感情の欠片もなかった。

ライブは夕方18時30分から。
きっと大いにはしゃげば帰りにおなかもすいて何か食べるだろうからと、とりあえず行きはコンビニで軽めの何かをおなかに入れてライブに臨もう、という話になった。
その時の面子はわたしと、未来の夫と、わたしの親友。
何ならこの時わたしは、5つ年下の彼と、ひとつ年下の幼馴染で親友の彼女が付き合っちゃえばいいのに~くらいの気持ちでいた。
そんなこんなで、行きがけのローソン。
わたしと親友がそれぞれパンか何かを手にしたのを横目に、夫は【からあげクン】のレギュラーとバニラアイスを手にし、ニコニコしながら車に乗り込んできた。

運転はわたし。後部座席には親友と未来の夫。
この2人、少しいい雰囲気にでもならないかしら、などと後ろの気配を窺っていると、夫はおもむろに「これ、マジでうまいから食べてみなよ!」と親友に何かを差し出している。
親友が「えぇえ…いや…いいよぉ…」と少し戸惑いながら断っていたそのブツは、【からあげクン】にバニラアイスをディップした謎の食い物なのであった。

いやいや。
初対面の相手に薦めるには些か冒険しすぎな代物じゃないか?
しかし「自分が美味しいと思うものをみんなで楽しく共有したい」という彼の思惑を無にするのも切なくて、わたしは「ナニソレうまそー!」と心にもないことを叫んでみた。
未来の夫は嬉しそうに「でしょ!?」と応じ、わたしにその【からあげクンのバニラアイス添え】をぐいぐいと差し出してくる。
結果、親友もそれを恐る恐る食べたのだが、それは思ったほどヤバくはないにせよ、どこからどう見ても「多分別々に食べたほうがうまい」と思われる代物なのでありました。

あれから十数年。
先に結婚した妹の子どもたちも【からあげクン】が大好きで、小さい頃は【からあげクン】が上手く言えずに妹が「こっこ」という原材料名で呼びならわせていたのに戦慄したり、会社の後輩がマジで一日置きくらいに【からあげクン チーズ】を食べ続ける猛者であったり、今では施設に入った母が時々「何食べたい?」と聞くと「ローソンのからあげ」と答えたりと、わたしの日常の中には何かしらの形で、相変わらずほんの少しずつ【からあげクン】が関わっている。
わたし自身も職場から一番近いコンビニがローソンなので、今でも時々REDかレモンのお世話になる日々だ。

たまに食べるといつもウマイ

38周年を迎えたからあげクン。
これからもきっと、日本中の人々の生活にあつあつの美味しさを届けながら続いていくのに違いない。

余談だが、自分の中での過去最強フレーバーは「青じそ」と「ブラックペッパー」なので、ローソンさんにはぜひ復刻版の再販をお願いしたいと思います。

それでは、このたびはこの辺で!



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