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◆怖い体験 備忘録╱第4話 K子ちゃんの話

又従姉妹の【K子ちゃん】が、とても強い霊感体質であるらしい、という話は子供の頃から何となく聞いていました。
噂話はよく聞くのですが、遠方に住んでいて歳もかなり離れていたため、実際には曾祖父の葬儀の時に一度しかお話しした記憶がありません。
実物の彼女は叔父や叔母たちと楽しそうによく笑いながら話をしており、その姿からはとても霊感体質など垣間見ることができませんでした。
自分も少なからずそういった体験をしていたので、本当はK子ちゃんに話を聞いてもらいたい気持ちもありましたが、まさかいきなりほとんど初対面の親戚に向かってそんな話を打ち明けるのもおかしな話です。
それに、年上の又従姉妹たちが盛り上がっている空気は、とても中学生だった自分が割って入れるようなものではありませんでした。

しかしともかく、このK子ちゃんにまつわる噂話は凄まじいものばかりだったと記憶しています。

例えばまだ3歳くらいの頃、見知らぬ街で突然母親の手を取って「あっちでおじさんが呼んでる」と、ぐいぐい引っ張るので、仕方なくついていくと、荒れ果てた誰かのお墓があったとか。
彼女の強すぎる霊感を頼りに、夜な夜な人ならざる何かがやってきては助けて欲しいと些か乱暴に懇願するため、時折首に絞められたような痕や、手足に引っ掻き傷などを作って起きてくるであるとか。
手首に神社の鳥居のような痣が浮かんできたりするとか。

実際のところ、そんな噂話の真偽はわたしには解りません。
ただ、大好きな祖母がその昔、彼女から言われたという印象深いエピソードについて、今宵はお話していきたいと思います。

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その電話がかかってきたのは、突然のことだったそうです。
当時はまだ現役だった黒電話の受話器を取った祖母に向かって、K子ちゃんは突然
「おばあちゃん仏壇にちゃんとご飯あげてる!?」
と問い詰めてきたそうです。

あまりの剣幕に驚いた祖母は、どうしたことかと彼女に聞き返しました。
すると彼女はこんなことを言い始めたそうです。

「この間死んだひいおばあちゃんがね、最近毎晩わたしのところに来るの。ばあちゃんが、ご飯をくれないんだよ、って言いに」

祖母は大変信心深い人だったので、ご先祖様の仏壇を疎かにすることなどありえません。
しかしK子ちゃんは、直もこう続けたそうです。

「みんなは美味しそうにご飯を食べてるのに、あたしだけもらえなくて、ただ、爪だけがどんどんどんどん伸びて行くんだよ…って、泣いてるよ」

わたしたち孫でさえ、祖母が毎朝早くに、必ず仏壇にご飯をお供えしていることは知っていました。
祖母が慌てて そんなはずはない、毎朝ちゃんとお供えしているよ、とK子ちゃんに伝えると、彼女はしばし考えたあと、こう答えたそうです。

「そっか…じゃあ、もしかして自分にもらえてるご飯だと思ってないのかもね。今度からは、仏壇にご飯をお供えする時、ひいおばあちゃんにも『食べてね』って伝えてみて」

翌日から祖母が仏壇にご飯を備える際、曾祖母にも「食べてね」と念じるようにしたところ、又従姉妹のところに曾祖母が現れることはなくなったそうです。

こんな話があったため、我が家では今でも甥・姪に至るまで仏壇にお供え物をする時は「食べてください」と念じるのが決まりごとになっています。

しかし冷静に考えると、祖母は毎日きちんとご飯をお供えしていたにも関わらず、死してもなお身内に「あたしだけご飯をもらえていない」と告げ口をするとは…
まぁ普通に嫁姑仲がこじれていたんでしょうね。
この話を夫にしたところ「うわぁ…そっちの方がホラーだわ」と言われました。

珍しくオチがつきましたね(笑)

それでは、このたびはこの辺で!

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