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私はわたしになりたい


8月。休学が終わりを迎えようとしている私は、せっかくの貴重な時間を有意義に過ごしたいと思い、フィリピンのセブ島へ1週間ボランティアに行きました。
セブ島といったら、美しいビーチが有名な観光地というイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし今回のボランティアを通して目の当たりにしたのは、観光旅行だけでは到底知ることができない、フィリピンのスラム街に住む人々の暮らしでした。そこでの出会いや学びを共有できたらと思います。


スラム街での子どもたちの暮らし



初日に墓地スラムを訪れたとき、これまで見たことのない光景に言葉を失いました。放し飼いされた鶏や、至るところで繁殖したのであろう野良犬。やせ細った野良猫。ゴミが散乱し悪臭とハエが発生する舗装されていない道。棺桶や墓石が剥き出しの状態で雑然と置かれている中で、子どもたちは暮らしていました。そこは暮らす場所とは到底思えないような場所でした。しかし、出迎えてくれた子どもたちは社交的で人懐っこく、車を開けた瞬間から私達に眩しい笑顔を向けて抱きついてきてくれました。

墓地スラム。柵の中には墓石や棺桶があるが、そこで暮らしている。


そして、一緒にアクティビティをする中で見えたのは、彼らの純粋な助け合い精神と家族愛でした。決して物質的に豊かとは言えない環境下で暮らしながらも、配給の際には順番を待ったり、兄弟やまだ貰えてない子どものために食べ物を貰ったり、道具が使えない幼い子どもを手伝ったりする子どもたちに、内面的な豊かさを感じました。ただ楽しく遊んでいる中で垣間見えた、子どもたちの純粋な優しさや明るさに心が洗われました。

年上の子が年下の子に作り方を教えている様子


墓地スラムの子どもたち


ゴミ山に住む少女との出会い


3日目にはゴミ山で暮らす子どもたちの元へ訪れました。そこは山を削った場所に集積されたゴミの山と、ガラス瓶で埋め尽くされた場所でした。ここでもまた、明るくて人懐っこい社交的な子たちがたくさんいました。

ゴミ山の様子

そこで私はとある15歳の少女と出会いました。私はここでの目的の一つに、ここに暮らす子どもたちが何を望んでいるのかを聴いてみたいという想いがありました。
会話の中で彼女に夢を尋ねられ、具体的な職業名で答えた私は、彼女の答えにハッとさせられました。

彼女はこう答えてくれたのです。

「私は私自身になりたい」

この答えについて彼女に深堀りすることはできませんでした。しかし、様々な解釈ができると思いボランティア生との話し合いの時間に共有しました。私自身は、何かになろうとするのではなくありのままの自分を受け入れたいという15歳の少女の葛藤があるのではないかと思いましたが、Kさんは「今はやりたいことや本当の姿を出すことができず取り繕っているから、何にも縛られることなく本来の自分を解放したいのではないか?」と答えてくれました。

真ん中のオレンジの服の少女の言葉

他の子どもたちや親にも将来の夢や今の生活で困難なことなどを尋ねると、そこには意外な回答がありました。
貧しい暮らしであることを実感しながらも、今の生活は概ね満足していると感じている様子だったからです。もちろん、中には物乞いをする子どもたちもいました。しかしながら、その背景には家族との暮らしがあり、それらを守り支えるために必死に生きているからであることを知りました。

そして話を聞く中で、彼女たちに共通して言える幸せは、今ある暮らしや家族を大切にし、夢を持って生きることであることのように感じました。

今回の活動を振り返って


今回の活動を通して、スラム街といっても様々な場所があることやそこに住む人々の暮らしを肌で感じることができました。スラム街で貧しいながらも幸せを感じながら暮らす子どもたちや、家族や年下の子たちの面倒を見る姿といった素敵な場面に何度も遭遇しました。一方で物乞いをする子どもや終始険しい表情を浮かべて暮らす子どもたちの姿もありました。それは、幼いながらも家計のために働いたり、そうした過酷な状況での生活をしているからなのではないかと思いました。

また、自分自身と向き合う機会にもなりました。

自分自身になるということ。

それは人によって様々な解釈ができると思います。そして勇気のいることでもあると思います。ありのままの自分を受け入れるとしても、本来の自分を解放するにしても、人はどこかの局面で必ず自分の「弱さや恐怖心」と向き合うことになるからです。しかし、それを乗り越えた先には、少しだけ生きやすくなっている自分に出会えるし、これまでとは違った世界や仲間にも出会えると思います。

まとめ

ボランティア活動を通して子どもたちと関わる中で、たくさんの気付きや学びがありました。それは、私達が与えられるもの以上に、人としての在り方や物事の見方、価値観までに影響を与えてくれました。今はまだ、この経験や学び、気付きを今後にどう活かしていくかは模索中ですが、少なからず私の人生に大きく影響を与えた出来事として一生心に残ると思いました。またいつか、彼女たちに会いにいけたらと思います。

最後に、
関わってくれた全員に感謝を込めて。



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