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立川談春の「文七元結」は格別【落語部@寄席に行きませんか 3】

泣ける落語が好きです。
人情噺が大好きです。江戸落語の方が泣ける。

人情噺の多くは古典芸能から来てると思います。歌舞伎や講談。
こうみると私が落語になぜ興味関心があるのかが、わかってきます。
歌舞伎や講談と落語では演目は同じでも表現が違っているなぁと思うことがあるんです。
歌舞伎や講談はカッコいい、ヒーロー!がフューチャーされている様に思います。
一方、落語は情けない、小さい輩に焦点を当てている。私はソコがたまらなく好きなんですね。人間臭さ、弱さ、ズルさ、なんかが表現されてるのが。

前置きが過ぎました。
好きな演目は「文七元結」です。
仕事の腕は良いが働かず博打好きの父、その借金をなんとか支え続ける母。そのさまを想って、吉原へ自ら入った娘の話し。さてヒーローは?といえば女郎屋の女将、文七。あれ?ヒーローはどこに?登場人物それぞれの視点で見ると、みんなヒーローかもしれない。この演目、聞く人によって思い入れる人物がいると思う。女将がヒーローっていう人もいるだろう。

橋のたもと(吾妻橋)で50両無くして身投げしようとしていた文七に”よくわかんないけど”、と50両渡してしまう長兵衛さん。この身も知らない人(文七)に自分の状況(娘が吉原の座敷に出される)も精一杯ということなのに人としての【何か】を感じて、行動してしまう長兵衛さん。このくだりが好きだなぁ。

文七が店に戻ってから、恩義があるその名前も何も知らない長兵衛さんを探すために唯一憶えているかも知れない女郎屋の店名を探し出すシーン。
ここで私のヒーローが登場します。
堅物の番頭です!
普段から、吉原なんぞ!と言っていた真面目一辺倒の番頭から、次から次へと店名が流れ出てくる!ようやく出てきた「佐野槌」
番頭良くやった!!絶対通ってるぞ!!笑

文七元結は涙無しでは聴けません。今もこうして思い出しながらこれ書いてても、少し涙腺が緩んでいます。

この演目、噺家によって、感じ方もずいぶん違って景色が見えます。
私は立川談春の文七元結が一番です。

私はいつも吾妻橋での長兵衛さんのように”何だかよくわかんないけど”って言いながら、人の為に咄嗟に動ける人でありたいと想っています。

⚫️東川哲也 official web site
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