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私を説明できるもの。

新しくバイトを始めた。

同じ職場の人に「学生ですか?」と聞かれる。
私は学生ではない。
2年前に学生の枠から外れた。卒業したからだ。
だから素直に、
「いえ違うんです〜」
と答える。
すると、相手は
「じゃあなんなの?」
と聞かないけれど、聞かないのに、
「じゃあなんなの?」という間ができる。

社会人、もとい会社勤めでないことは明白だ。会社勤めではありえない勤務日数と勤務時間で私はシフトに存在する。
別に説明したくないわけじゃないけれど、私の今置かれている状況は、説明し始めるとなんだか長い。
「卒業して1年働いたんですけれど、辞めて失業保険もらいながらもう一度就職活動して、働く先が決まったんで、それまでの間働こうと思って短期のバイトやってるんですー。」
78文字。面接か。
端的に言えば、めっちゃ簡単。
ニート。もしくはフリーター?
三文字。もしくは四文字。

一度めんどくさくなって、その三文字で終わらせたことがある。
「ニートなんです〜。」
八文字じゃん。

聞いてはいけないことを聞いてしまったのかしら、みたいな沈黙の後に、まあここにはいろんな人がいるからね、と言われた。

バイト先でなくてもいろんな人がいるだろうに。
仕事終わりっぽい人たちでぎゅうぎゅうの電車のなか、そう思った。

みんな違ってみんないい、という詩があんなに素敵に思えるのは、みんなが本当はそう思ってないからなのかな。

私だって前の会社を辞めるときに、これでレールから外れるんだなあと思った。だから迷った。
私しか乗っていないはずのレールだから、外れようとどうだろうと永遠に「私」なのに。

23歳をかたどっているのは、本来なら学生か社会人かであるべきなのかもしれない。

きっと聞いてきた人も、私の生い立ちやら葛藤やら背景を知りたいわけじゃなくて、本当に何気なく聞いているだけなんだと思う。それ以上でもそれ以下でもない。
学生に見られていることを喜ぶ場なのかもしれない。

私をかたどっているものはたくさんある。
私を説明できるものもたくさんある。
読書がだいすきで、漫才がだいすきで、彼氏がだいすきで、家にいることがだいすきで、茶碗蒸しは超好きなのに中の銀杏は嫌い。
いつもぐずぐずと後ろ向きで、空が降ってこないか心配していた人よりも心配性で、昔の品行方正な優等生ぶりをひきずって、人に怒られたり注意されたりすることがとてもとても怖い。
そのわりに、向こう見ずな反発心がむくむくと大きくなることもある。
笑いのツボが浅くて、大きな声で笑って、よく泣いて、よく怒る。

なのに、どれもオフィシャルにはそぐわない。
友達とかでもなく、「バイト先」というつながりのみの初対面でいきなり、「どんな性格?」とか聞かれたら、それはそれで困るし。

「学生?」
と聞かれるのが嫌なわけじゃない。

でもなんだか、私の属性はなんなんだろう。
私を説明できるものはなんなんだろう。
いつかなんにも説明できなくなるんだろうか。
という、永遠の問いみたいなものを突きつけられているような気持ちになるんだよな。
単に答えるのがめんどうなのかな。




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