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趣味でやっているデザインの話

広告制作会社でアートディレクターをしている。アートディレクターと言えば聞こえは良いが、私の場合、デザインもそこそこできる、レタッチもそこそこできる、文章もそこそこ書ける、イラストもそこそこ描ける、対人スキルもそこそこあるという、何かを極めたわけではないが65〜70点位で色々な事をそこそこやれるというそこそこな人間を体よく使うために安上がりな肩書きを付けられているというだけの事だ。仕事に対するこだわりのようなものは基本的になく、クライアントが納得することが最終目標で、お金を払う人の意見が一番正しいと思っている、所謂クリエイターとしては相当に意識の低い部類に入ると自覚している。その意識の低さ故に、私に報酬を払うわけでもないのに10年以上もキャリアが違う若者から求めてもいない感想を聞かされ、何だか軽んじられているな……と思う事がよくあるが、言うだけ無駄なので肋骨の隙間に鬱憤を溜め込んで肋間神経痛を日に日に悪化させている。軽く見ても全然構わないので、介入してこないでほしい。何年か前、某バンドの人に「自分が認めてる人からじゃない意見って、聞いても無意味じゃないですか?」という話をされたことがあるが、その時は「ファンからの褒め位、素直に受け取っとけよ……」と思ったものの、今思うと仰る通りだわ。自分かそれ以上にできる人の言葉じゃないと、素直に聞けないもんね。

私はこの仕事が特に好きではない。この仕事を初めたばかりの頃「私19時には帰って家事しないといけないのでこの仕事引き継いでくれる?」と先輩に丸投げされて連日一人で終電帰りだった事や、ベテラン社員の仕事だと思い込んで絶賛したくせに、私のだとわかると「よく見たらそうでもなかった」と言った当時の社長や、18時に原稿出て22時半に初稿持って行ったら「24時半に赤出すからまた取りに来て」と終電無視する自宅兼事務所の代理店とか、昔から基本クズな事ばっかりだったので、好きになる要素が皆無だった。なので誰にも嫌な気持ちにならないように「仕事を頼んだら頼まれた人よりも先に帰らない」「自分のペースで仕事を進められなくなるので誰かと一緒に仕事はしない」「アドバイスお願いしますと言われない限り関わらない」という3ない運動を社内で自分が一番年下じゃなくなってからずっと続けている。以前、内容的に私がよく知ってるから関わってほしいけど男性向けの商品なのでデザインは男性にやってほしいと言われて仕方なく人と組んだ時は、動けない程の胃痛や二日間40℃越えの熱や体中に湿疹が出たりしてその全てが原因不明と診断されたが、ストレスによる免疫力低下のせいだと思っている。

そんな私でも、たまに自発的に「こういうものを作ろう」と思う時があって、古い話だと、推しがワンマンのフライヤーを募集していたのでホクホクしながら作って即効送りつけた。イベントの物販でフライヤーを配布するとこまで考えたら紙面だけで情報が完結しないと意味ないと考えて真面目に作った後、両面印刷用にタイテやプロフィールなども入れた裏面を追加した。(そして印刷して納品した。やべぇファンだと思うが、安易に世間に募集するとこういう目に遭うので覚えておいてほしい)

ありがちな構図だけど、一人で8役こなしてMCバトルするという概要を上手いこと表現できたと思う。あとこんな格好良い素材を撮りためていた過去の自分にビガップ……この裏面みたいに、人物を裁ち落として、ラインに沿って斜めに文章配置したりするの格好良いと思うんだけど、こういうのを理解されるような仕事はそうそうないので、楽しかった。

そして、翌年の自分の企画のフライヤーを作った。誕生日パーティーがコンセプトのイベントだったので、生クリームの上にチョコペンで書いた文字をイメージした。文字に装飾付けてもフォントサイズ6pt白抜き細文字とかにしても誰にも何も言われないので楽しかった。

よく出演者プロフィールで、これ何年前の情報?というアップデートしていなくてやる気あるのかと思うやつがたまにあるが、最近の音源聴いても違和感覚えないくせにオファーはするのかとついイラっとしてしまうのと、思い入れの強さをフライヤーからも感じてほしいと思い、ポエミーな紹介文を考えるのに一番時間をかけた。

vol.1は具なしのケーキだったので、vol.2ではラズベリー的なソースをかけたイメージにした。若干しまむらっぽい。使用している写真は、vol.1でカメラマンさんに撮影していただいたもの。(改めて見ても格好良い……)こういう内容のフライヤーを作るには、同じ出演者で2回はやらないといけないのでそうそうないと思う。

そしてまた、推しがバンドセットでのワンマンのフライヤーを募集したので即効2種類作って2日後位に送りつけた。バンドだとわかるように背景にドラムセットがあるvol.2の時に撮った写真を使用し、Twitterに上げたりCubicに使った場合でもちょうど良い場所に文字が表示されるように調整した。色調整が沼っぽくて良い感じに暗くて格好良い。もう1つは高円寺のパンクバンドみたいな感じのやつだったからか世に出なかったが、個人的には出なかった方が気に入っていた。

また何か募集かかったら作りたいな〜とも思うけど、ライブに行けていないので素材もないし、またこいつかよと思われるのも良くないし、かといって誰も送って来ないとかになったら、また肋間神経痛が悪化するのは目に見えている。なのでやはり企画vol.3をやって思う存分文字を小さくしたり斜めに配置したりポエミーな紹介文を書く必要がある。早くみんな元気になってほしい。

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