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突然の電話

私は小学生になりました。
通っていた小学校は、児童の半分以上が中学受験をする子だったので、学校以外で遊ぶことが出来るのは受験をしない子だけでした。
残った受験をしない子の中には、スポーツの習い事をやってる子もいて、その子達も毎日スポーツ教室に通うので遊べません。
母からやりなさいと言われてたくさんの習い事をさせられましたが、私には時間はたくさんありました。
友達と外で遊んだり、リカちゃん人形やごっこ遊びもしました。

とある日曜日。
いつも祖母に預けられていたので、お店で漫画を読んでいました。
お店の電話が鳴り、祖母と誰かが話してました。
少しして私が呼ばれました。
「誰?」
聞いても言ってくれません。
無理矢理受話器を渡されました。
「もしもし、どちらさまですか?」
「パパだよ」
え?状況が把握できない…黙るしかできない。
「今から会いに行くから、まってて」
「ちょっと待って、ばぁちゃんに聞いてから」 
祖母に聞いたら行っておいでと言われました。
「行ってもいいよって言われたから行ける」
「じゃあ迎えに行くから準備しておいて」
 
電話を切って嬉しい気持ちなのに、嬉しさを前に出していいのかわからない。そもそも母に言わなくて良いのだろうか…
祖母は笑って言った。
「楽しんできなさい」

しばらくして父が店に入ってきた。
変わらない父だ。
父と祖母で少し話してから、店を出た。
信号を渡ってタクシーをつかまえると言うので、私は小走りでついていこうとした。
父は私の手を引いて「走らなくて良い、危ないから」と言った。
少し恥ずかしかった。

浅草の玩具屋にいっておもちゃを買ってもらい、喫茶店に入った。
「バナナジュースだろ?」
「うん。(パパはアイスティーだ)」
昔と変わらない。
少し話してから、父の家に行こうと言われた。
またタクシーをつかまえるところまで歩く。
手を繋いだまま。
手を繋ぐ事に慣れていないせいか、私の手が小さいせいか、何度も離れてしまい煩わしいんじゃないかと思い指を掴むと、しっかりまた繋ぎ直してくれる。
そんな父が大好きだった。

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