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さよならわたし

母からの暴力も最初は軽いものだった。
酔ってビンタされる、イライラをあたられる。
あのクッションの時に比べたらなんてことはなかった。叩いた後の母は、泣いて謝るのだ。
「もうしないから、ごめんね。本当にごめん」
そう言って私を抱きしめてくれるから、私は全然大丈夫だった。
でも少しずつ回数が多くなるんだ…
この前ももうしないって言ったのにというモヤモヤが残る。
徐々に内容も過激なものになっていった。

母に彼氏が出来た事で生活が一変する。
母が帰って来なくなる。
寝るまでいた母がいなくなるのだ。
起きて気付いた私はパニックになる。
「ママがいない!どうしよう!いらないって言ってたから捨てられたかもしれない…」
焦った私は祖母の家に電話を掛け、事情を説明した。起きていた叔父が来てくれた。
叔父が到着してから5分程度で母が帰ってきた。
「え?なに?大丈夫だから帰っていいわよ〜」
お酒に酔った母は陽気にそう言った。
そう言われた叔父はすぐに帰った。
家から離れたのがわかった瞬間、母は私の胸ぐらを掴んで床に叩きつけ舌打ちをした。
「お前なんでチクった?殺すから」
だっていなかったから…チクったんじゃない…さっきまで機嫌良かったじゃない…
そんな事言える状況じゃない。恐怖で震える。歯がガチガチ音がなる。涙が勝手に出る。
ただ発して良い言葉は「ごめんなさい」それだけ。
ただただ殴られる。
謝っても許してもらえない。
どれだけの時間が経ったのかすらわからない。
「ごめんなさい!許してください!お願いします!なんでもします!」
これが小学校に上がったばかりの子供のセリフだろうか。
「私の事は誰にも言うな、次は殺すから。あと泣かないでくんない?イラつく」
殴る蹴るして痛がってる合間にそういう母。
「絶対言いません!許してください…」
涙は止まらないけど、騒がず言えたんだ。
「あっそ…じゃあ笑って」
少し笑ったような顔で悪魔はそう言った。
涙と鼻水だらけの腫れ上がった顔で作った笑顔を、母は満足そうに見て布団に入った。

日に日に増す暴言と暴力で、私は私を辞めた。
生きてく上では"私"という存在が邪魔なのだ。
本当の"私"はとても弱いから…
もはや我慢というレベルではなく、
母から暴力を受けている"私"は死んでもらわないと、当時の生活は成り立たなかった。

でもこの時は想像してなかったんだ。
こんなのまだ軽かったってことを。

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